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異世界ドクロは自由がお好き‼  作者: 寿限夢
アルバス大図書館編
52/60

えっ、本当に頭よかったの!?

 うぅ、銃なんてに苦手だ。 肉弾戦がいい。

 突如として現れた魔獣に、マリアは苦戦していた。

 頭から突っ込んで来る三つ角の魔獣の突進を避けて、本棚の間へと駆け抜ける。


 「ったく! 私は戦闘はあまり得意ではないんだがな!」


 毒づきながら、右手に持った拳銃から空の薬莢を捨て、白衣の裏に手を突っ込む。

 そこに仕込んだ魔法袋マジックパックから、赤や青に色分けされた新しい魔弾だんがんを取り出し、走りながら装填した。

 その時、


 轟っ!


 爆発にも似た轟音をあげ、背後の本棚が吹き飛んだ。

 辺りに本棚の欠片が飛び、本が散乱していく。

 それらを踏みつぶしながら、三つ角の魔獣が走るマリアを目掛け、頭から突っ込んで来た。


 「はっ!」


 装填が終わるのと同時に、マリアは横に飛び、本棚の上へと駆け上がった。

 そのまま本棚の上から魔獣の背中に向けて、両手の拳銃から、火弾や雷弾といった魔法を撃ち出す。

 放たれた魔法、系六発が、魔獣の背中へと殺到した。

 だがーー、


 「くそっ! これもダメか!」


 本棚の上で、マリアが舌打ちした。

 視線は、今しがた銃撃した魔獣へと注がれている。

 その視線の先で、銃撃されたはずの魔獣が、無傷・・のまま方向転換していた。


 「~~っ! 本っ当に硬いな! いくら“準・災害指定種”だからって、ここまで硬いのは反則じゃないか!?」


 本棚の上を走り回りながら、マリアが呆れたような声を出す。

 マリアのいう“準・災害指定種”。

 それは、冒険者組合から指定された八つのランクとは別の、ある特別指定のランクの事である。 

 このランクに位置づけられる魔獣は、単体で町一つ破壊・壊滅出来る“災害指定種”の一歩手前の危険性を持ち、その存在の確認、または痕跡を発見され次第、至急討伐隊が編成される程。

 そして、マリアが対峙している三つ角の魔獣“ルークホーン”は、鉛色の小山のような巨体に、鉄をも貫く巨大な三つの角、そして、魔法・・・・・すら・・・・・さない皮膚の頑丈さゆえ、“準・災害指定種”に指定された、極めて危険な魔獣であった。


 「他の魔獣も”コウエン“や“モングラッブ”! チエちゃんが相手してるのなんか、絶滅危惧種の“フェニ・バレッタ”とかだし! まったくなんなんだろなこの図書館は!! そのうち“災厄種”の“龍属”とかも出てくるんじゃないのか!?」

 

 もしそうなったら、と、マリアは自身の頭を振り、いやな想像を思考から追い出す。

 単体でも対策に討伐隊が編成される“準・災害指定種”が四匹いるのに加え、国が国家間で連合が組んで対応しなくてはならない“龍属”なんて出よう物なら間違いなく死ぬ。

 と、言うか、アルバスが消滅する。確実に。


 「いや、でもちょっとだけ興味あるな……”龍属”なんて生で見たことないし、今相手してるルークホーンだってっーー!?」


 つい脱線して考え込んでいたところ、突然足元から衝撃が走り、マリアは正気にもどされた。

 いつの間にか方向転換を終えたルークホーンが、マリアのいる本棚に突進していたのである。

 足場を崩されたマリアが、宙に投げ出された。


 「くっ! こなくそっ!!」


 サヨリがいたら『可愛くない!』と叫びそうな声あげ、マリアは空中で体勢を立て直した。

 そのまま、地面を転がるように着地して、しゃがんだ姿勢のまま、ルークホーンへ向けて狙撃した。


 ドッ! ドンッ! ドンっ!


 鋼弾や水弾、不可視の空気弾が、ルークホーンの体に命中した。

 しかし、それら全てがルークホーンの分厚い皮膚にはじかれ、音だけを残して消滅していく。

 ルークホーンが、またマリアへ向けて突進してきた。  


 「くっ!」


 突進してきたルークホーンを、マリアはギリギリ横へ飛んで避けた。

 すぐ目の前を鉛色の巨体が通り過ぎ、巻き起こった風で、白衣の裾が翻える。

 通り過ぎたルークホーンが、また本棚を吹き飛ばし、破壊していく。


 「~っ! また本棚を壊して! ここにある本の貴重性が分からないのか!?」


 今にも呪い殺さんばかりの形相で、マリアはルークホーンをにらみつけた。

 にらみつけた先で、ルークホーンは踵を返し、またこちらに突っ込んで来る。

 その突進を先ほどと同じよう横に飛んで避け、今しがた通り過ぎたルークホーンとは、逆方向へと走り出した。


 (さて、本当にどうしたものかな……火や水、雷なんかの魔弾は効果は無かったし、鋼弾や空気弾なんかも、効果は無かった)



 口では激昂しつつも、頭の中でマリアは、冷静に対処法を考えていた。

 幸い、ルークホーンの動きは単調で、至極読みやすい。

 一度走りだすと方向転換も出来ないらしく、落ち着いて対処すれば、攻撃をいなし続けるも容易だ。


 (問題はどうやって倒すか。攻撃に不向きな光と闇以外すべて試したが効果は無い。あとは中級クラスの魔法陣を刻んだ魔弾があるが……効果があるかは、微妙なところだな)


 戦闘開始からおよそ十分、マリアは突進を避けては銃撃し、また避けては撃つという行動を系六回繰り返しているが、いまだルークホーンには傷一つついてない。

 下級とはいえ、合わせて七十二発の魔弾を受けてなお無傷の相手に、今さら一発や二発、中級クラスの魔弾を命中させたところで、倒せるとは到底思えない。


 (サヨサヨやスズちゃんみたく“ヨロイドオシ”とか出来ればいいんだけど、あいにく私には、その技量はない……だとすれば……)


 後ろから迫り来るルークホーンの気配を感じながら、マリアは自身が持つ三つのレアスキル【高速思考】と【並列思考】、ならびに【高速演算】を発動させる。

 これまでの情報と自身が持つ手札、その他もろもろの不確定要素なども盛り込み、この場において最も最適な勝ち筋を構成していく。

 やがて、その思考から生まれた、三千八百七十二京とんで六百九十四通りの作戦のなかから、最もリスクの低い物を選び、早速それらを実行すべく、白衣の裏から魔弾を取り出した。


 「必要なのはコレとコレとコレ……っと! よし、準備出来た!」


 作戦に必要な魔弾を装填し、マリアは笑みを浮かべた。

 その顔に先ほどまでの焦りや憤りはなく、あるのは自身の作戦の成功への期待、それだけである。

 

 「それじゃあ始めるか! まず一発目!」


 そう言ってマリアは中級土魔法の鉄塊弾と下級の水弾、それぞれ二発づつを背後・・・・・・目掛けて、等間隔で放った。

 大人一抱え分ある鉄塊弾が床に穴を開け、その穴に水弾があたり、小さな水たまりが出来ている。

 その先から、巨大な地響きを立てて、ルークホーンが迫って来る。


 「十、九、八、七……」


 だが、マリアは慌てず、むしろ余裕を持ってその場に立ち止まり、小さく秒読みを開始する。

 その余裕の態度が気に入らなかったのか、その華奢な体を貫かんと、ルークホーンがさらに加速する。


「五、四……」




 鉛色の巨体が、凄まじい速さで迫って来る。

 その足がーー、



 「三、二……」



 

 すぐ手前の水たまりに、ぴったりと収まった。



 「はいっ二発目ぇっ!」


 それと同時にマリアは、手に持った拳銃から、一発の魔弾を発射した。

 放たれた魔弾が地面に着弾すると、一瞬にして水たまりが凍りつき、水たまりにはまったルークホーンの足を、地面へ縫いつけるように固定した。


 「おぉっ! 思ってた以上にぴったりとはまったな! やっぱり鉄塊弾とルークホーンの足のサイズは同じ位か!」


 見事に策にはまったのを見て、マリアはケラケラと笑った。

 その間にも、ルークホーンは拘束から逃れようと、必死に身をよじらせている。


 「無駄だよ。その氷は溶けやしない。普段の君ならともかく、今の君の力は、その半分も出せないんだから」


 聞き分けのない子どもに言い聞かせるように、マリアが言った。


 「本来、ルークホーンが生息するのは、アレクサンドリアからさらに南に行った先にある広大な砂漠地帯なんだ。そのため暑さには極端に強いが、寒さには非常に弱い性質がある。そしてそれは、召喚カードで再現された君も例外ではない」


 言いながらマリアは、さらにもう一発、ルークホーンの足元の氷に魔弾を放った。

 すると氷はその範囲を増やしていき、ルークホーンの足元から胴体までを、完全に覆い尽くしてしまった。


 「だが、乾燥した砂漠地帯では、水魔法の中級に位置する氷魔法は弱体化する。明確な弱点があるにも関わらず、対処が非常に困難、そのうえ魔法がまったく効かないときている。故にルークホーンは【“準”・災害指定種】に指定され、今日に到るという訳だ」


 言いながらマリアは、今や首から下が完全に凍りついたルークホーンへ向かい、ゆっくりと歩み寄っていく。

 そして、鼻先の巨大な角を避けて、真横からルークホーンの眼を見て、にっこりと微笑みかけた。


 「さて、ではここである一つの実験をしてみようと思う。本来、重厚な皮膚で魔法も剣も効かないルークホーンだが、果たして本当に魔法がまったく効かないのか? どこかしらに、弱点があるのではないか? それを今から検証しようと思う。実験対象はもちろん君。実験のタイトルはーー」


 にっこりと微笑んだまま、マリアはルークホーンの眼球に向けて、ゆっくりと拳銃を構えた。

 撃鉄を引き起こし、少しづつ引き金を引いていく。


 突きつけられた銃口に、天使のような微笑み。

 

 作り物のはずのルークホーンの眼に、恐怖と絶望の色が滲んだ。


 「『ルークホーンの眼は、皮膚よりも脆いか否か』」


 図書館地下に、乾いた銃声が響き渡った。


 

 

 

 

 

  

 ~その頃のサヨリ~


 サヨリ「ハァっ!? 何で図書館に火山があるんよ!?」

 

 溶岩「チョリーッスwww」

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