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異世界ドクロは自由がお好き‼  作者: 寿限夢
始まりの森
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ヒャッハーーー!!!美少女だーーー!!!

 繁みから現れたモノを見て、思わず固まった。

 どうせまた、苔狼か緑の熊だろうと思っていたからだ。


 だが、その予想は外れた。


 現れたのは、二人組の少女だった。

 二人とも年齢はまだ十歳くらいだろう、まだ子供だ。

 どちらも同じような麻の白いシャツとは膝くらいまでの丈のズボンを着ている。


  一人は黒髪の少女だった。

 墨を流したように真っ直ぐで艶のある黒髪を肩口で切り揃えて、おかっぱにしている。

 肌は白く、鼻筋はスッとしており、やや吊り上がった大きな目と、キリッとした眉が意思の強さを感じさせる。

 一見、クールなイメージを彷彿とさせるが、愛らしい小さな唇と、うっすら桜色に染まる頬が、少女の幼さを感じさせた。


 何故だか、赤い椿を彷彿させる美少女だった。



 もう一人は何と白い髪の少女だった。


 ふわっと柔らかくウェーブした髪は、白というより白銀に近い。

 腰まで伸ばした髪に縁取られた顔も、抜けるように白い。

 愛くるしい小鼻、小さな桜色の唇。

 パッチリとした大きな目は、宝石の翡翠のような色だった。

 白い、ふわっふわっな子猫のようなイメージを感じさせる。

 こちらも黒髪の少女に負けず劣らずの美少女である。

 二人とも、とんでもない美少女だった。

 アイドルどころか、二次元美少女でさえ 裸足で逃げ出しそうだ。


 そんな二人を見た自分はと言うと……




 キターーー!!!

 ただでさえ、ひさびさの人。さらには超美少女。しかも二人という三段コンボにテンションはうなぎ登りだ。


 もう、なにも怖くない!!!


 ……っと危ない危ない、危うくフラグが立つところだった。

 落ち着け、冷静なれ、自分……!大丈夫!自分、やれば出来る子!!……多分。


 ……ふぅ、落ち着いた。さて、じゃあ早速話を……?


 話しかけようとして異変に気付いた。なんだか二人の様子がおかしい。

 そして、良く見れば、二人の容姿にもおかしな点がある事に、今さら気付いた。



 ……角と、猫耳?



 良く見れば黒髪の子の額には、髪をかき分けて小さな白い角が二本、左右対称に生えている。

 そして白髪の子には頭の上、頭頂部に髪とおなじ色の、白い猫耳が生えていた。


 ……コスプレ?のわりに何かリアルだし……っていうか自分、なんかめっちゃ警戒されてない?


 黒髪の子は白髪の子を自分の背後に隠し、険しい表情でこちらを睨んでいる。

 黒髪の子の後ろに隠れた白髪の子も、パッチリとした目に怯えが見てとれる。

 ……どうみても、メチャメチャ警戒されてる。


 …あっれぇー?なんで?なんでそんな警戒してんの?自分、超無害だよ?怪しくない……



 あっ。



 ここで思い出したのが、今の自分の姿。

 骸骨なのはもとより、ここにくるまでま三日間、闘いまくっていた。全身に返り血を浴びてたりするのだが、途中に水辺がなかったので落とせていない。斧もおなじで、血や脂が付いたままだ。


 つまり、今の自分を客観的に見ると……



 [全身血塗れの斧持った骸骨]である。



 ……しまった。そりゃ警戒するよね……自分だってそんなもん目の前に出てきたら警戒するもん……って言うか怖いもん……

 自分のアホさ加減に愕然とするが、嘆いてばかりもいられない。


 とりあえず、誤解を解こう !!


 「あの……」

 「ッ!来るなっ!!」


 誤解を解こうと話しかけた矢先、黒髪の子に遮られた。

 アカン、完全に誤解されてる。

 勘違いさせているのはこちらだが、女の子にここまで警戒されると地味に傷付く。


 「よりにもよってこんな時に……!」


 黒髪の子が形の良い眉を歪め、悔しそうに呟く。

……なんか様子がおかしい。何かありそうだ。


 「あの……」

 「ッッ!!来るな!!」


 また遮られた。


 「こうなったら……」

 「いやっあの」

 「はあぁぁぁっ!!!」

 「ちょっ!」


 黒髪の子が、近くに落ちていた木の棒を拾い上げて、殴りかかってきた。

 とりあえず避ける。


 「ちょっと待っ…」

 「やあぁぁっ!!!」


 今度はめちゃくちゃに振ってきた。だが、死ぬ気の集中力を持つ自分にとってはどれも遅い。

 正直、まだ猿のほうが早い。

 だが、反撃する訳にもいかないのでとりあえず全部避ける。


 「この…っ!」


 黒髪の子が小さく悪態づく。

 全力の攻撃を全て避けられたのが悔しいようだ。

 そして、まためちゃくちゃに攻撃してきた。


 これも全て避けるが、このままだといつまで経っても話が出来そうも無い。

 ……仕方がない、止めるか。


 「やあぁぁぁ!!」


 黒髪の子が大きく振りかぶってきた。

 それに合わせて、少女の正面に踏み込む。

 踏み込んで、少女の手を抑える。

 抑えながら、少し上に持ち上げる。

 振り抜こうとした手が止められ、吊り上げられるようになった。


 「ッ!くそっ……」


 黒髪の子が身を捩らせ、逃げようとするが、半ば持ち上げられたているので思うように動けない。

 その間に、大きく息を吸う。


 「落ち着け!!!」

 「!?」


 出来るだけ大きな声を出す。

 黒髪の子の動きが止まった。


 「大丈夫、何もしない。安心して」

 「しゃっ、喋った…!!」


 黒髪の子が唖然としている。

 棒を持っていた手から力が抜けるのを感じた。

 もう大丈夫だと思ったので、抑えていた手を離してあげる。

 するとその場にペタンッと座るこんでしまった。

 白髪の子も相当驚いている様で大きな目をパチクリさせてこちらを見ている。


 ……骸骨が喋ってるんだ、無理もないか。

 だが、これでやっとまともに話が出来そうだ。


 「驚かせてゴメンね。でもいくつか聞きたい事が……」

 「助けてください!!!」


 黒髪の子がいきなり叫んだ。

 えっ?と思い、見てみると黒髪の子がその場に土下座していた。


 「さぞ名のあるお方とお見受けします! 不躾を承知でお願いします!!どうか、どうか私達を助けてください!!お願いします!!」

 「えっ、ちょっ、ええ?」


 土下座しながら、まくし立てるように続けた。

 いきなり過ぎて思わずどもった。

 何いっちゃってるんだ?この子?混乱する。全く話が見えない。

 とりあえず話を聞いてみよう。


 「えっと、とりあえずどうゆう事か、説明してくれないかな?話がよくわからないんだ。」

 「追われているんです…!!奴等…人さらいに……!!」

 「人さらい?」

 「なんとか逃げ出しましたが……急がないと追っ手が…!!」


  あまりにも唐突な話に頭が混乱する。

 人さらい?

 まじで?

 ほんとに?

 嘘じゃあないだろうか? じっと黒髪の子を見てみた。

 黒髪の子は土下座のまま頭を地面につけたまま動かない。

 小さな肩が震えていた。


 ……普通だったら信用出来ないけど、嘘をついてるようには思えない。

 そもそも、そんな嘘を自分についたところで、なんのメリットも無いのだ。

 どちらにせよ、こんなところで悩んでもしょうがないか。


 「……わかった。とりあえずここから離れよう。」 

 「ッ!ありがとうございます!!」


 黒髪の子が嬉しそうに顔を上げた。大きな黒い瞳には若干涙が滲んでいる。

 もし、人さらいが本当ならいつまでもこんなところにいるのは危ない。

 仮に嘘だったらその時はその時だ。

 まぁ、なるようなるだろう。


 「二人とも走れる?」

 「はい、スズは大丈夫ですがでもチエが……」

 「……ごめんなさい……」


 黒髪の子ースズちゃんが白髪の子ーチエちゃんを心配そうに見る。

 チエちゃんは申し訳なさそうに項垂れていた。

 どうやらここに来るまでに、足を痛めたようだ。  細く小さな足首に小さく布が巻かれている。

 確かにこれでは走れそうに無い。


 「私の事はいいからスズちゃんだけでも……」

 「何言ってるの!!そんなの駄目だよ!!」

 「でも……」

 「一緒行くの!!絶対!!」

 「だけど……」


 ネガティブになるチエちゃんに対し、スズちゃんが怒る。

 このままでは言い争いになる。

 近くにある木の蔦を腰に巻き付ける。

 そして、腰の木の蔦に斧を固定した。


 項垂れるチエちゃんに語りかける。


 「チエちゃん、チエちゃん」

 「はい?」


 チエちゃんが視線をこちらに向ける。

 綺麗な翡翠色の瞳で見上げていた。

 チエちゃんの前まで行き、後ろを向いてしゃがみこんだ。

 それを見てチエちゃんとスズちゃん二人とも小さく小首をかしげる。

 その仕草が、何だか可愛らしい。


 「あの…何を…?」

 「何って…おんぶ」

 「えっでも……」

 「いいから、ほら、はやく」


 生憎と時間は無いので、構わず促す。最初、何故か「はうぅ」と桜色の頬を赤くしていたが、観念したのか、ゆっくりと背中に乗ってきた。

 柔らかく、小さな重みを背中に感じる。


 「ちょっと揺れるからしっかり掴まってて。掴まるところは沢山あるから」

 「…はい」


 軽くジョークを交える。

 すると小さな手を、ぎゅっと首に回してきた。

 ゆっくりと立ち上がる。

 想像以上に軽い。


 「じゃあスズちゃん行くよ?」

 「あっ!はい!!」


 何故だか呆けていたスズちゃんに声をかけ、走り出した。



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