でっ、出たぁーー!!
一言で言うなれば、やばい。
ポコ君の検査が終わり、自分の番が来た時、そう思った。
どうして、こんな事になってしまったのか。目の前に差し出した、自分の右手を見て考える。
こんな事なら、気付かなければよかった。
気付かず、普通にして、普通に終われば良かった。そうすれば自分も、何も傷付かず、穏便に事はすんだのだ。
だが、もう遅い。
自分は気付いた。いや、気付いてしまったのだ……!
それは自分が……今、自分が……!
「サヨリ様がんばって!」
「サヨリ様……がんばれ……!」
「サヨリさん! がんばっす!」
「さぁ、サヨサヨ! 最後に一発、ド派手にキメちゃってくれ!!★」
めっちゃくちゃ期待されている事に……!!
「ふふふふっ……さてさて、サヨサヨからは一体、どんな驚きが飛び出してくるのかなぁ……★ 性質は " 柔 " かな? " 硬 " かな? 出来るのはチエちゃんみたく、完璧な魔力球?
それとも、スズちゃんみたく特化型の激しい奴?
またまた、ポコ君みたいなレア系?
あぁ! 何が出てくるにしろ、きっと面白いんだろうなぁ! 楽しみだ!!★」
溢れでる好奇心を隠そうともせず、期待の眼差しでこちらを見るマリア。
何て言うかもう、プレゼント貰う前の、純真無垢な子供みたいな目をしている。
マリアがこうなった理由は無論、先に検査した三人の結果が原因だ。
チエちゃんやスズちゃんに続いて、ポコ君までも珍しい結果が出て来たせいで、ならば最後にやる自分も、きっと珍しい結果が出るに違い無い! という、半ば無茶ぶりにも等しい、異常な期待感が成せる業なのである。
……こんな無茶ぶり、どうやって捌けと?
「実際、どんなのが出るっすかね?」
「わからない……けど、きっと……すごいのだと……思う……」
「きっとサヨリ様の事だから、スズ達の想像を遥かに超える、物凄い物が出て来るに違いない!!」
「それもそっすね……何てったって、あのサヨリさんっすからね!」
「そうだとも! サヨリ様だからな!」
スズちゃん達も御覧の有り様。なまじ自分達が凄いのだったから、余計に自分にかかる期待値が大きい。
スズちゃん……嬉しいけどやめちくり……。でないとおじちゃん、胃に穴が空いちゃうぞ?
心の中で必死に訴えかけるが、当然届く訳もなく、空っぽの頭蓋骨の中、声にならない声がむなしく響き渡る。
それと同時に、何とも言えない、深いため息が口から漏れ出ていた。
なんだってこんな事になっちゃってるのか……? 何回目になるかわからない、自問自答が頭をよぎる。
別にやってみて、ちゃんと出来るならそれに越した事は無い。無いですよ?
やってみて何も起きなくて恥ずかしかったり、ましてや失敗して、大爆発なんて起こさなければ、それで充分ですよ?
でももし、あまりにも普通過ぎて、場が白ける様な事にでもなったら……?
自分にとって、あまりにも恐ろしい光景が脳裏によぎった。
あかん! あかん! あかん! あかん! これはあきまへんで!! こないな事になったらウチ、死に絶えてしまいます! 今度こそ本気で、逝ってしまいますさかいに!!
内心焦りまくって、おかしな方言が脳内を駆け巡っていく。
何か手はないかと、必死に考えを巡らせる。
だが、現実は非情かな。時間はそうそう、待ってはくれない。
「ん? どうしたんだ、サヨサヨ? 速くやってみて見せてくれ!」
構えたまま微動だにしない自分に待ちきれなくなったのか、マリアから催促が来た。そしてそれは、マリアだけじゃなかった。
「サヨリ様……?」
「どうしたんっすかね? 構えたまんまずっと、動かないっすけど……?」
「いやきっと、物凄く集中していて、時間の感覚が無くなっていらっしゃるに違い無い……!」
マリアに続き、チエちゃん達もざわめき始めた。
ーーこうなっては仕方がない。ここは潔く、腹を括るか……。
「それじゃあ……いくよ?」
「あぁ! どんとこい★」
差し出した右手に、改めて意識を集中する。
そして、ヴィジャス盤に触った時感じた感覚を元に、魔力を放出し……。
ん? 待てよ?
もし圧縮したらコレ、どうなるんだ?
放出し始めた矢先、ある思い付きが頭の中に芽生えた。
今やっているのは魔力の放出。放出した魔力が魔力性質によって球体になったり、体に纏わり付くように変化する。
ではもし、この魔力を意図的に圧縮し、高密度に練り上げたらどうなるのだろうか?
多分だけど、物凄く小さな魔力球、もしくは物凄く狭小的かつ、高密度の魔力を纏うに至るのではないのだろうか?
それなら一応、普通じゃない高密度魔力として場が白ける事も無く、穏便に事が済むのではないだろうか?
よくよく考えてみなくとも穴だらけ、ふ菓子並みにスカスカな理論かも知れないが、せっかく思い付いたのだ。やってみてもいいんじゃないか? そして何より、その方が多分、面白くなりそうだしね!
そう思い立ち、早速試してみる事にする。
まず、手から放出した魔力を意識し、凝縮するイメージをもって圧縮してみる。
すると、目に見えない、血液の様な物体が凝縮されていくのを感じた。
……これ、案外いけるんじゃない?
予想よりも確かな手応えに、内心ほくそ笑む。
そしてそのまま凝縮した魔力の上にさらに魔力を放出し、上から重ねる様して、魔力を圧縮していく。
もっともっと! 圧縮! 圧縮! 圧縮!
某白髪モヤシよろしく、放出した魔力をどんどん圧縮していく。やがて圧縮した魔力から、不思議な力の様な物が感じられ始めた。
まだまだ! もっと! もっとだ!
それでも止めない。せっかく興がノってきたのだ。こんなところで止められるか!
「ちょっ! ちょっ! ちょっ! サヨサヨ!?」
なんだかマリアが慌てた声を上げてるけど、でもそんなの関係ねぇ!! 今はそれよりも魔力の圧縮だ!! まだだ!! まだいけるだろ!!
「サヨサヨ!! サヨサヨ!!」
まだだ!! まだ諦めんなよ!! もっと頑張れよ!! もっと熱くなれよ!!
「サヨサヨ!! サヨサヨってば!!」
諦めたらそこで試合終了だぞ!! まだいけんだろ!! もっとだ!! もっと熱くなれんだろ自分!! 負けんなよ自分!! 勝つまでやるんだよ自分!! もっと熱くなれよ自分!! イッツアバーニィーング!!
「サーヨサーヨ!! サーヨサーヨってばぁ!!」
「んもぅ! さっきから何マリっちゃん!? 自分、今すんごい忙しいんだけど!?」
魔力を放出しつつ、目線だけマリアの方を向く。すると、唖然とした様子でこちらを見るマリアと目があった。
「サヨサヨ……ソレは一体何?」
「はぁ? 何って、魔力放出してるんだけど……」
「いやそうじゃなくって! その手のひらの上にいる物体は、一体何!?」
物凄い狼狽した様子でマリアがこちらを指差した。その異様なまでの慌てっぷりに、思わず首をかしげる。
……一体、何をそんなに狼狽えてるんだ? 手のひらの上ってそんなもん、圧縮した魔力があるに決まって……!?
言われて手のひらに集中して、ようやく気付いた。
魔力を放出した手の上に感じる、確かな重量感。それでいて手袋越しに感じる、柔らかくフサフサとした毛の感触。
最初の重量感の時点でそうだが、毛の感触あるのといい、ほどよく温かいのといい、どう考えてもスズちゃんやチエちゃん達みたいな、魔力の塊ではない。別の何かだ。
一体何が……?
おそるおそる手のひらの上を見てみる。するとそこには、真っ黒い獣毛に覆われ、牡牛の様な角を生やしたライオン? みたいな生き物が、ジッとこちらを見ていた。
「………………」
『………………』
「………………」
『ギャウッ!』
「…………なんか出たぁーー!!!?」
~NGシーン~
「はぁぁっっ……!!」
「サヨサヨ!! サヨサヨ!!」
「何だい!? マリちゃん!? 今自分……!!」
「それ! ソレは一体何!?」
「へっ?」
言われて初めて気付いた……自分の手のひらの上に乗る、その姿は……、
『やぁ、こんにちは。僕ドラ……』
「どっせぇぇぇいっ!!」
ぼぐしゃあっ!
『……えも、ぶっぎぃゃああーー!!!?』
「あっぶな!? 今チョー危なっかったぁぁぁ!!」




