授業の時間♪
ようやく復活!
皆様お待たせしました!!
「それでは早速! 実験……もとい! 魔法習得の授業を始めようと思う!!」
開口一番、マリアがそう言い放った。
紙だらけの研究室に、声が木霊する。
「昨日は色々あって、結局爆睡してしまったが、今日は違う!! 睡眠もばっちり取ったし、久々にちゃんと朝ごはんも食べた!! 恐れるものは、何も無い!!」
そう言って、フンスッフンスッと鼻息荒く意気込む。
目を爛々と光らせ、マリアを中心に輪になって座る自分達、もとい自分の方をじっと見つめている。
その姿が、まるで新発売のゲームが待ちどうしくてたまらない子供みたいで、思わず頬が弛むのを感じた。
頬肉ないけど。
「やる気充分だね♪ マリちゃん♪ 元気そうで何よりだよ♪」
「当たり前だよサヨサヨ! 昨日から楽しみ過ぎて、いてもたってもいられなかったんだから!!★」
ニコニコと笑いながらマリアが答えた。
あの後、夕食が終わったところで、自分達が宿屋を確保するのを忘れている事に気付き、急遽、マリアの研究室に泊まらせてもらう事にしたのだが……。
「お泊まりだって!? と言う事は夜通し実験しほうだいじゃないかヤッフーッ!!★」
と、イった具合でマリアがテンションアゲアゲな状態になり、夜更かしする気満々になってしまった。
とりあえずめんどくさいので、チエちゃんが何故か持っていた睡眠薬を使って、無理矢理寝かしつけた。
少し可哀想な気もしないでも無いが、流石に今日一日で色々有りすぎて、肉体的に疲れない自分としても精神的に結構お疲れなのだ。
スズちゃん達も疲れているみたいなので、とりあえず今日は、ゆっくり休ませてもらう事にする。
そして時は流れ現在、時刻は大体朝七時半くらい。
眠る必要の無い自分を始め、二ヶ月の旅ですっかり早起きになったスズちゃん達と昨日出来なかった分、軽い鍛練をした。
その後、ゆっくり起きて来たマリアも一緒に、皆で朝ごはんを食べ終えたところだ。
ちなみに、なんで七時くらい、と曖昧な言い方なのかと言うと、実はこの世界、時計が無いのである。
一応、有るには有るのだが、殆ど流通していないらしい。
持っているのも、海洋都市レオ・ネツェアの大商人か、西にある騎士大国セルゲニアの貴族くらいなのだそうな。
なら、どうやって時間を知るのかと言うと、基本日時計でまかなっている。
そんなんで大丈夫なのか? と思わなくもないが、実際特に困る事も今のところ無いので、まぁいいかと、納得してたりする。
と、話が逸れた。
まぁ、そんな感じに強制的に爆睡し、しっかりとした朝ごはんを食べ終え、エネルギー満タンになったマリアは、昨日出来なかった分、やる気MAXになっていたりするのだ。
「それじゃあまず最初に基本のお復習だ! 現在、判明している魔法には大きく分けて全部で七つの属性がある! その七つの属性を~……はいっチエちゃん!」
「えっ……! えと…… " 火 " "水 "……" 風 "……" 土 "…… それから"雷 "……あと、" 光 " ……と " 闇 " ……です」
「ん~! 正解! 完璧だね★ スゴいよ! チエちゃん★」
「えへへっ……」
いきなり話を振られたにも関わらず、見事正解したチエちゃん。
褒められたのと全部答えられたのが嬉しかったのか、頬をほんのり赤くし、小さく微笑んでいる。
……すみません、抱き締めてもいいですか?
「さて、今チエちゃんが言ってくれたみたいに、魔法には大きく分けて七つの属性がある! これらの他にも色々と細かい選り分けがあるが、基本的にはこの七つだ!」
話ながら次々に後ろのクリアボードに書き込んでいくマリア。
自分やスズちゃん達も、聞き逃さないようにしながら、昨日買った紙に羽ペンでノートをとる。
別にとらなくてもいいと言われたけど、せっかく買ったのだ。少しくらいちゃんと使いたい。
要するに気分だ、気分。
……と言っても、よくよく思い返してみると、学生時代の自分、授業はおろか学校にすらまともに行かず、アッチへふらふら、コッチへフラフラふらついていて、ろくにノートなんてとった事すら無いのだが。
「そして魔法も、この七つの属性のからなる魔力をもって成り立つんだけど 、これらの属性には、魔法を使うその人事の適正によって、得意・不得意があるんだ★」
「人によっては、使えない魔法があるって事かな?」
「その通りだよサヨサヨ★ 例えば火の魔法は得意でも、水や土の魔法は苦手だったりとかね★ 一応、訓練すれば使えない事もないけれど、適正がある人のそれと比べると、どうしても効果が弱かったり、威力が半減していたりして、正直、あまり使い物にならないんだ★」
他にも、雷と風は得意でも、土だけがまったく使えなかったりなど、人によって全然違うらしい。
より極端な例を挙げると、水魔法だけは使えるが、それ以外の属性の魔法には一切の適正が無いなんて言うのも珍しくないのだそうな。
「けど、こう言った極端な魔力適正を持つ人の場合、一つしか適正が無い代わりに、その適正の魔法が他の属性を持つ人のソレに比べて、強くなりやすい傾向にあるんだ★ それと沢山の適正があるにも関わらず、ある一定のレベルに達した途端、成長が止まってしまったりとかね★ ……まぁ、中にはそれに当てはまらない、変わり種もいたりするんだけどね★」
そう言って一瞬、フッと遠い目をするマリア。
だが、すぐに元の笑顔に戻り、今言った説明をクリアボードに書き込んでいく。
どうやら、その" 変わり種 "とやらに、思うところがあるみたいだ。
「それで、これらの属性による適正は、扱う人自身による種族・資質・性格なんかによって左右される訳なんだけど、皆にはこれからその適正を調べるため、軽い検査を受けて貰おうと思うんだ★ ……コイツを使ってね★」
おもむろにマリアが机の上に取り出したのは、二十センチほどの大きさの丸い石盤のような物であった。
色は黒曜石のような艶のある黒で、部屋の明かりを反射してうっすらと輝いている。
そしてその表面には、複雑な魔法陣のようなものが彫り込まれており、その魔法陣を中心に、赤や青といった色とりどりの小さな宝石のような石が七つ、魔法陣を囲むように埋め込まれていた。
「これは " ヴィシャス盤 " と言う鑑定系魔導具の一種で、魔法陣に触れた者の持つ魔力を感知して、属性を鑑定する事が出来るんだ★ ……と言う訳で、まずは……サヨサヨ! 行ってみよぉー!★」
「ほいさー♪」
促されるままマリアの前まで行き、机に置かれた魔導具ーーヴィジャス盤の表面に、そっと手のひらを置く。
すると、表面に彫り込まれた魔法陣がうっすらと青く発光し始めた。
それと同時に、手のひらからスッと何かが引き抜かれる感覚を感じる。
「えっなにコレ!? なんかゾクッと来た!?」
「あ~それね★ 魔力が抜かれてる証拠★ 大丈夫、魔法使うようになれば、すぐ慣れるから★」
ヴィジャス盤を見ながら、手を振ってマリアが答えた。
慣れるんだコレ……正直、指先から一気に採血されてるみたいで、あんまり慣れそうにもないんだけど……。
「それよりほら、結果が出てきたよ……★」
そう言われ、いまだに光るヴィジャス盤を見る。
すると、先程まで光っていた魔法陣部分はゆっくりと輝きを無くし、変わりに外側に配置された宝石の内二つが、紫と緑にそれぞれ輝きだした。
「おっ、なんか綺麗♪」
「フム…… " 紫崩石"と"翠鳳石"……特に"紫崩石"に強い反応有り……かぁ。……あっ、もう離しても大丈夫だよ★ 」
ヴィジャス盤から手を離す。すると、光っていた宝石の輝きが小さくなっていき、やがて治まった。
「サヨサヨの属性はズバリ! " 闇 " と " 風 " の二つだね★ 特に 闇属性に対しては物凄く適正があるから、上達は早いと思うよ★」
「具体的に、どんな事が出来るん?」
「闇属性の場合は主に幻覚や認識阻害、後は精神攻撃とかが特徴的かな★ 相手に幻をみせたり、相手の精神を直接攻撃したりとかして錯乱させたりするんだ★」
「何それ怖い」
それどう考えても悪役、それも最期絶対ろくな死に方しないキャラとかが使う奴だよね、それ?
「まぁ、相手の精神力が強かったりすると大抵防がれちゃうんだけどね★ でも、魔族でも適正がある人は殆どいないらしいから、かなりレアだよ★ だから今度実験させてね★ 適当な人見繕ってくるから★」
「……気が向いたらね」
やらないよ!? とは言わない。言ったら言ったでややこしくなるのは確実なので、とりあえず保留って事にしとく。
「次に適正があった風属性だけど、空気中の大気を操って、風を起こせるのが特徴的だね★ 風を操って移動速度を上げたり、圧縮した空気をそのまんま相手にぶつけて攻撃したりとか、色んな使い方があるよ★」
「おっ! 結構良いなぁソレ♪」
「でもその分、慣れるまでが大変みたいだけどね★ 火や水とかみたいに、目に見える物じゃないからね★」
練習次第って事ですか……わかります。
まっ、気長にやっていこう。
「とりあえずこんな具合でどんどん調べてっちゃお~★ それじゃ~次、スズちゃんいってみよ~★」
「はいっ!」
そんな感じでその後も検査を続け、各々の属性適正を調べていった。
その結果、スズちゃんは " 火 " 、ポコ君は " 土 " と、それぞれ一つずつに適正がある事が判明。
何故自分と違い、二人には適正が一つずつしか無いのかというと、マリア曰く、スズちゃんの場合は種族的な理由、ポコ君の場合はそれに加えて、本人の性格的な理由が関係しているからだそうだ。
「鬼族は昔から火山地帯なんかに生息していたみたいで、基本的に火や熱といった物に対して、強い耐性があるみたいなんだ★」
そして、鬼族はスキルや魔法が封じられる以前から、魔法という物に対して関心が無く、もっぱら武器や素手による近接戦を好む傾向にあったらしく、魔法その物に対しての適正自体、低いのだそうな。
「でも、それを補って余りある戦闘力があるみたいなんだよね~★ 事実、スキルが封印された後の戦争においても、殆どの戦争に鬼族が傭兵や戦闘員として出てきて、最後まで連合軍に対し徹底抗戦してたみたいだしね~★」
どうやら、ただ力が強いだけの脳筋などではなく、魔法すら必要としない能力に裏打ちされた戦闘民族みたいのようだ。
……なんだかちょっと、サ○ヤ人みたい。
聞いたところによると、火属性の魔法には火を操って火球を飛ばしたり、爆発を起こしたり出来るらしいから、そのうちカ○ハメ波っぽい事してもらえるよう、後で頼んでおこう。
やっべぇ、オラわくわくすっぞ!!
「ポコ君の場合も同じだね★ 犬頭族も基本的には近接戦を好む傾向にあって、魔法への適正は低いみたいだし……後はポコ君みたいな真面目~な感じの子は、基本的に土属性に適正する傾向にあるみたいだし★」
どうやら、真面目で常識的な人や職人気質的な人ほど、土属性に傾る傾向にあるらしい。
そしてそういう人ほど、やたら冴えたツッコミが出来るのだそうだ。
なるほど、納得。
ちなみにポコ君が適正のあった土属性はというと、まんま地面にある土や砂や泥、鉱物なんかを操り、自在に扱えるとの事。
即興で砦や拠点、または武器なんかを作れるなど、地味ながら凡庸性に富み、比較的便利な属性だ。
レベルが上がればより厳選した鉱物なんかも精製出来るようになるらしいので、出来るようになったら銀を出して貰えないだろうか。
久々にシルバーアクセサリー、作りたいんだよね♪
「さて、いよいよ最後★ トドメにチエちゃん決めちゃって★」
「ひゃっ、ひゃい!」
緊張してガチガチになるチエちゃん。 思わず舌を噛んでしまった。
恥ずかしさの余り真っ赤になって「あぅぅっ……」とか言ってる。
ヤバい、超かわいい。
「チエ、大丈夫だよ! スズもサヨリ様も、それにマリアさんもついてるから!」
「……うん」
スズちゃんに励まされるチエちゃん。
美しき友情……素晴らしいね♪
後ろで「あれ、オイラは?」ってポコ君が呟いてるけど、気にならないくらいだよ♪
「では……いきます……!」
スズちゃんに励まされ、意を決したチエちゃん。
目の前のヴィジャス盤にそっと手を乗せた。
その瞬間、ヴィジャス盤が青く光り始める。
そして、魔法陣の輝きが薄くなりと同時に、埋め込まれた宝石が輝き出した。
「……まさかっ!? これは!?」
突然、ヴィトジャス盤を見ていたマリアが声を上げた。
その表情は驚きに満ちていた。
「どうしたマリちゃん!?」
「何かあったんですか!?」
自分とスズちゃんが声をかける。
「まさかこんな……信じられない……」
しかし、マリアは自分達の問い掛けに答えず、一人うわ言のように呟いてる。
ただ、その視線は目の前のヴィジャス盤のみに囚われている。
「一体何が……」
マリアが見つめる一点、その視線の先にあるヴィジャス盤を自分も覗きみる。
そこには、魔法陣を囲む全ての宝石を七色に輝かせたヴィジャス盤の姿があった。
「えっ! オイラの出番、これだけ!?」




