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神々の瞳  作者: 白苑
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過去の現実世界(1)

 俺は意を決して眼帯を外した。・・・そういえば現実世界で眼帯を外した時、いや、外されたとき、高校でひどい目にあったな・・・。


――――過去――――現実世界――――


「おい、その左目はどうしたんだ?」

 俺は入学式を終えて初めて、高校の教室に入った。そこで担任に声をいきなり掛けられてしまった。それも、一番触れてほしくない事にだ。現在俺の左目には眼帯がしてある。・・・目が赤いのを隠すためだ。

「あ、いえ、これは・・・」

 言葉に詰まる。此処で「目が赤いんです」なんて言って眼帯を外したら小中の二の舞だ。それだけは避けたい。なんとしても避けたい。

「怪我か病気か?」

「あ、はい・・・」

 あまりつきたくはない嘘だが仕方があるまい。病気と言うのは嘘ではないかもしれない。俺の両親は二人とも純粋な日本人だ。それなにも関わらず俺の左目だけ赤い。生まれた時からだ。病院でも原因不明。色素が元から赤い、と言われた。

 

 だが、俺はそれだけではないと思う。これは両親にも言ってない事だが、俺の左目は物が透けて見えるようになる。透かしと見ようとすれば、透けて見える。だが、これはありえない。

 しかし、実際にありえている。眼帯をしている今でもはっきり見える。右目は普通に物が透けて見えないのに、左目だけ透けて見えるのはありえない。人を透かして見ることもできる。女子の制服を透かして見るなんて事もできる。・・・そんな事はやらないぞ。いや、マジで。基本的に俺は真面目だからな。うん


 入学式が終わって、少しだけのHRも終わり俺は帰宅の路へついた。入学式の日なんてもんはそんなものだろう。

 

ちなみに、俺はこの学校に同じ中学だった奴は一人しか居ない。そんな学校を選んだのは、左目の事をいろいろ言われたくないからだ。唯一、同じ学校の奴も女子で、おとなしくて人と関わりを持とうとしなかった奴なので心配要らない。・・・もしかしたら、いつか言ってしまうかもしれないけど・・・。


「杵島君・・・」

 後ろから突然声をかけられビクッとしながら振り返った。

「えっと・・・・・どちらさま?」

 どっかで見たことある気がする女の子。髪はセミロングで少し茶色っぽい。染めた色じゃない事は確かだな。つまり地毛。それでもって顔は結構俺好みで、可愛い子だ。

「あ、私、藤代 彩です」

「そうですか。えっとそれで、なんで俺の名前を?」

「私杵島君の席、近いんですよ。それに、今日最寄の駅で杵島君を見かけたので、折角だから一緒に帰らないかなぁ〜と・・・」

 えっとつまり、彼女、藤代さんは俺と一緒に帰りたいらしい。今まで生きてきて「一緒に帰ろう」なんて女子に言われたのは初めてだ。

「え?えっと、え〜」

 言葉に詰まる、こんな経験ないから何て答えて良いのか分からない。別に一緒に帰りたいわけじゃない。が、頭がパニックになってしまっていた。

 

いやいや、彼女はたまたま同じ席で、たまたま帰る駅が同じで、たまたま名前を知った俺を、たまたま誘ってみただけなんだ。そうだ。そうに違いない!・・・自分で考えておいて悲しくなって来ちゃった・・・・・・。


「あの・・・やっぱり迷惑かな?」「全然!」

 即答しちゃいましたよ。少し俯いて上目使いで頼まれたら断れません・・・。ま、もとより断る気なんてなかったんだけどね。

 俺がOKを出した事で二人並んで一緒に歩く。歩く。歩く。歩く・・・



ま、そんなこんなで今俺はピンチです。誰か・・・誰か・・・


俺に話題をくれ。


 そ、ま、話題がないんだよね。二人並んで帰るだけ。重たい空気と言うか、なんか沈黙が苦しいと言うか・・・。藤代は俯いた感じで歩いてて話しかけてくれる雰囲気も、話しかけられる雰囲気でもないし、それ以前に話題がない。

「あ、あのさ」

「は、はい」

 とりあえず沈黙を破ろうと声を発したが、先ほど言った通り話題がない。

「え〜と、なんだ、その〜」

「・・・・・・」

「ご、ご趣味は・・・?」

 なんだその質問。お見合いか?・・・うぁ、自分で言ってて顔が熱くなって来やがった。

「しゅ、趣味ですか?・・・そうですね・・・・・料理を作る事、かな」

「そうなんだ・・・」


―――会話終了―――


藤代が折角答えてくれたのにそれから話題を広げる事ができなかった。

 俺に対する質問もなく、お互いの家の分岐点に着いてしまった。

「あ、あの、私こっちだから・・・」

「そっか。じゃあ、またね」

「うん、また、明日・・・」

 俺の帰路の逆の方向に歩いていく藤代を見送りながら、俺も家に向けて歩き出した。


「ふぅ〜」

 家に着いてそうそうため息を吐く。

「多分、明日は一緒に帰ってくれないだろうなぁ」

 折角高校に入って心機一転したのになぁ・・・。そんな事を考えながらも今日の晩飯の献立を考えてしまう俺だった。


―――翌日―――


「終わった・・・」

 教室内で独り言。二日目からいきなり授業。さすが高校。高校になって、同じ中学の人が居ない人は、友達のクラスに行ってしまったりするので、高校生二日目はとても静かなものだった。

 でも、今日の朝、藤代が挨拶して来たことはうれしかった。俺の高校生活の滑り出しは順調だ。やっぱり、左目は隠してた方が全然いいな。俺は高校生活を有意義に過ごすための誓いを、心の中でそっと呟いた。

感想、お待ちしておりますm(__)m

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