明日への不安
今、リセンリ家の食卓を三人で囲んでいる。俺、エリサ、アリサ。もちろん、料理はアリサの手作りだ。俺的には、有名レストラン並においしいと思われる。・・・有名レストランなんて行った事あるっけ?
まあ、そんな事はいいとして。俺は今、微妙にピンチである。なんせ今日、能力らしきものが発動してしまったのだ。発動された相手はエリサ。エリサがちょろっと能力が発動した・・・なんていえばアリサが興奮するだろう。・・・おそらく、いや、絶対。そうなると非常によろしくない。今の訓練に更に能力者としての訓練が追加されたら・・・。そう考えると悪寒が走る。
で、エリサが発動された事をアリサに言うのは良くないって事。なんで、エリサがこの家に居る間、俺は常にビクビクしている。いや、常にエリサの前では腰の位置が低い。・・・だって怖いよ・・・。
「・・・・・・あんた、なんで今日はそんなに縮こまってるのよ」
あぁ、神様。あなたは僕に試練を与えるのですか・・・。俺はエリサの発言で、体がビクッとした。だが、ここで負けていられない!できるだけ平常心を保たねば!
「ん?別に普通だよ?」
少しだけ背筋を伸ばしてエリサを見る。エリサはと言うと「あそ」と、興味がなくなったのか、食事に集中しはじめた。内心、凄くほっとしている。
「あ、そうそう、今日ね、こいつ能力発動したのよ」
・・・・・・俺は持っていた食器を落としてしまう。だが、そんな事に気づかない程に心臓の音がバクバクしていた。
「・・・え?」
アリサの目が、カッ!と見開いて俺を見る。
「な、ナンノハナシデスカ?」
「・・・・・・しらばっくれようとしても無駄よ。私、吹っ飛ばされたんだから」
こ、こいつ・・・。俺が能力発動したのを知られたくないのを知っているな!
「・・・トキさん。本当ですか?」
「え〜っと、ん〜」
「本当よね?」
エリサは食事中にも関わらず小剣を抜いて、俺を睨みつける。瞬間、俺の皮膚から汗が噴出するのがわかった。
「嘘言うと・・・斬るわよ?」「はい、発動しました」
・・・俺、弱すぎる・・・。
「まぁ!発動したんですか!これで能力の特訓も開始できますね!予定より早かったので驚きです!」
アリサは自分の事のように喜んでくれた。・・・自分としてはあまり嬉しくないな・・・。どうやってか逃げられないか・・・あっ!
「アリサ、そういえば、この村に能力者って居るの?」
俺は実際、この村に来て能力者を見たことがない。
「あ、はい。居ますよ。訓練は離れたところでやってるんです」
「あ、そうなんだ・・・」
がっくりと肩を落とす。あぁ、俺はこれからどんどん体を虐められるのか・・・。俺に能力のいろはを教えてくれる人、できれば優しい人だったらいいなぁ、なんて願うほど、俺の今の状況は切実だ。
実際、今、エリサと筋肉モリモリの人に訓練されているが、きついきつい。俺の体の調子なんてお構いなしの訓練だ。・・・いや、あれは一種の拷問だな、うん。
「そうだ、明日!さっそく【フレイヤ】さんの所に行きましょう」
「あ、明日?!」「はい」
うあ、即答されたよ。それになんだよ・・・明日って。
「で、でもさ、明日は普通の訓練もあるよ?」
「それは今日でおしまいです。明日からは全てフレイヤさんの所での訓練になると思います。がんばってくださいね」
満面の笑みで俺を励ますアリサ。・・・そんな顔されたら断れないじゃないかっ。
「うん・・・がんばってくるよ」
俺は落とした食器を片して「ごちそうさま」と言って自室に戻った。
そういえば、【フレイヤ】って北欧神話に出てくる人だよな・・・。ま、偶然かな?
俺は自室に戻って布団に倒れこむと、そんな疑問が浮かんだ。
「ま、考えてても仕方が無いか」
そんな事を呟きながら睡魔に襲われた。今日はいろいろ有ったしな・・・。今日も睡魔に逆らわないで寝よう・・・。明日の事は明日考えるか。
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