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神々の瞳  作者: 白苑
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俺の仕事

「能力者か・・・」

 言葉にしてみても全然現実味がない。というか、やっぱり嘘かな?

そもそも能力ってなんだ?実際、目の前を歩いてる子に言わせると、オーラを操れるようになる事らしいが・・・実際あやしいもんだ。俺自身はオーラが見えるようになったわけでも扱えるようになったわけでもないぞ?俺は「フン!」って歩きながら力んでみる・・・・・やっぱり力を入れて細い腕の血管がほんの少し浮き上がる程度で、別にほかに変わったことはない。

「はぁぁ・・・」

 やっぱりため息出ちゃうよなぁ。そんな、なんだか落胆している俺の前を歩くオカルト好き(?)の美少女が俺の方向に振り返る。

「どうかしたんですか?先ほどから力んでいたり、ため息つかれたりで・・・」

「んぁ、聞こえてた?」「バッチシ聞こえてました」

 即答されるほどバッチリ聞こえていたらしい。そりゃあそうだよ。なんだかわかんない所に来たと思ったら、いきなり能力者扱いだもんな。普通に人間ならため息の一つや二つするよな。って言うか、この(仮)オカルト少女も少し関係してるんだよ・・・。言いたいことは多々あるがあんまりはっきりした事を言うのも可哀相なので話題転換をしよう。

「いや、ちょっとね・・・えっとそれでまだ町には着かないの?」

「そうですね、後数分で着きますよ」

「そうですか」「そうです」

―――会話終了―――

 ま、別に気まずい雰囲気でもなかったし、ため息の件も忘れたようだし話題転換は成功かな?しかし、後数分無言で歩くのもなぁ・・・。あ、そうだ。

「そういえば君って、名前なんていうの?」

 まだ自己紹介も済ませていなかった。

「あ、そういえば紹介が遅れました。私、アリサ・リセンリです」

「俺は杵島朱鷺。よろしくね」

 俺たちは握手を交わした。

「それにしても、変わった名前ですね?」

「え、そ、そう?」

 俺は君のほうが変わってるっていいそうになってしまった。だが、此処が日本でない確率は高い。ていうか、地球ですらない可能性もある。日本でない場合誘拐って事になるが、全然誘拐された時の記憶なんてないし、外傷もない。とりあえず質問をぶつけてみよう。

「ねぇ、此処って地球の何処?というかなんて名前の国なの?」

 確信を付く質問。これの質問の返答によっては俺はピンチだ。

「ちきゅうってなんですか?それにこの世界は王都【トレスト】によって治められています。そんな事も忘れてしまったんですか?」

 アリサは「信じられません」みたいな目で見てくる。うぅ・・・この質問は失敗だった。どうにかして誤魔化さないと。・・・ん――――あ!王道だがこの世界では通じるかもしれない誤魔化し方があるぞ!

「ご、ごめん。俺記憶が吹っ飛んでるようなんだ・・・」

 こんな綺麗な子を騙すのは良心が痛むが致し方が無い。

「え?でもさっき自分の名前を・・・」

 おいおい・・・やっべ、この子以外に鋭いぞ。天然っぽそうだが案外鋭い。だが俺だってこんな所で「実は異世界から来たんです」なんて言えない。言ったら(仮)オカルト好きのアリサの餌食になってしまう可能性が・・・うっ、考えただけでも悪寒が・・・。とりあえず・・・どうにかしよう。

「えっと・・・ぽ、ポッケトに自分の名前が書いてある紙があったんだ」

「あ、なるほど。そういう事だったんですか」

 アリサはそう言うと納得したのか、また村に向けて歩き始めた。はぁぁ、前途多難。とりあえず今度は黙っておこう。町に着くその時まで・・・

「はい、到着です」

「え?」

 俺は顔を上げ、周囲を見渡す。そこには木造の家、家、家、店、家・・・って

「なんも無いな・・・」

 小声で、アリサに聞こえない程度に呟く。いや、だって何もないよ・・・店って言ったって、本当にいつの時代の八百屋さん?とかいつの時代の呉服屋?なんて店だけだ。

「とりあえず村長さん・・・の挨拶は良いとして」

「いいの!?」

 俺は右手の甲で突っ込みを入れてしまう。これは仲の良かった大阪の転校生の突っ込みがうつってしまったのだろう。

「はい、問題ないです。村長さん、今、ご病気で人との面会を拒否しているので」

「あ、なるほど、そういう事ね」

 俺は手をポンッと叩いた。

「それでですね、貴方は能力者。でも記憶がない。それにオーラの使い方を全然知らない用なので、しばらく家に泊まりませんか?」

「え!?いやいや、それは悪いよ。ご両親も男なんて連れてこられても困るでしょ?」

 両手をブンブン振って拒否する。アリサと一つ屋根の下なんて無理ですって。

「良心は亡くなっているので・・・」

「え?あ、そ、そうなんだ。ごめんね、変な事言っちゃって・・・」

 俺は冷や汗を掻きながらあやまる。

「いえ、ずいぶん前の話ですし、全然気にしてないですよ」

 何故か無理をしてニッコリ笑うアリサ。この子は一人でいろいろと苦労してきたのだろう。女一人でできることなんて限られてるはずだ。・・・何故だろう?アリサの力になってあげたいって思い始めてきたぞ・・・。

「ん、じゃあアリサの家にお世話になろうかな・・・あ、でも居候するからには仕事は手伝うよ。役に立てるかわからないけど・・・」

「あ、いえ、そんな悪いですよ。それに私、この村の医者のお手伝いをさせてもらってるだけですし・・・」

 そう言ってアリサは俯いてしまった。

「そっか、それじゃあ忙しい時にはどんどん扱き使って構わないから」

 俺はニコッと笑ってアリサの力になる事を伝えた。口下手で女の子に対して免疫の無い俺にしては十分だ。

「はい、でも貴方には多分貴方の仕事ができますよ?」

「え?仕事?俺に?」

 アリサはうなずいて一拍置く。

「トキさんのお仕事は・・・能力者としてのこの村を襲う魔獣の撃退です」

 ―――――――は?

「はい!!!?」

 本日何度目の衝撃だろうか・・・俺は目の前が歪んでゆく感覚の中呆然と立ち尽くしていた。

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