アースガルド
ずいぶん待たせて申し訳ありません。
いろいろありまして、続きを書く事ができませんでした。
続きをお待ちしていた方、申し訳御座いませんでした。
あぁ〜あ。報告です。なぜか、俺の部屋になる予定だった部屋が、突如血まみれ状態になってる事が発覚。というか、まず問題なのが、
「俺はいつからあんたらの仲間になったんだ?」
「今」
ふぅ、あ〜、この人達は俺には扱えない。
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ん〜相手はどうやら日本語を解せ無いらしい・・・。あ、ここは異世界だから、俺が話している言葉が日本語かどうかは分からないのか。
「んで?他に質問は?無いな?」
「はい、何故俺の部屋は血だらけなんだ?怪しいだろ、明らかに」
「あぁ、ちょっとした事件だよ。大丈夫、うちには優秀な奴がいるからな。そいつが解決するさ。あ、もちろんこの部屋もちゃんと綺麗にするから心配しないでくれ」
そのあと、この部屋に何人かの男が入ってなにやら話し合っていた・・・。
いつのまにかに丸め込まれて、俺はどうやらこいつらの組織の一員になったらしい。
いや、もちろん俺にはそんな自覚ありはしない。
などと考えながら綺麗にされた部屋を見てこれからの生活について考えた。
このへんな組織、だいたい何のための組織で、何に対して敵対しているのかも不明だ。
俺は綺麗にしてあるベットにどっと倒れこんだ。そして今までの疲れが出てきたのか、そのまま眠ってしまった。
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「あ〜!手がかりなんて何にもないじゃない!」
エリサが少しヒステリック気味に叫ぶ気持ちもわからないでもない。部屋の中にはまるで手がかりなどありはしない。私は探偵ではないので連れ去り事件を解決できるだけの頭脳を持っているわけでもない。
「とりあえず外にでよう。外になら手がかりがあるかもしれないからな」
私がそういうとエリサとアリサは頷いて部屋を出た。
「なんもない・・・」
エリサは宿の外にでて発した言葉がそれだ。甘いな。エリサはもう少し冷静に周りを見回して欲しい。それが出来ればこの子はもっと強くなるだろう。
「良く見るんだよエリサ。何も手がかりがないというわけじゃない」
私はそういうと地面を指差した。
「馬車の跡ですか?」
そう、下には明らかに馬車が通ったあとが有る。これは私にとって充分すぎるほどの手がかりだ。
「でもフレイヤさん。馬車なんてこの町にはいくつもあるだろうし、第一トキを攫った奴が馬車を用意していたとは限らないじゃないですか」
「いいかい?私達を眠らせたのは一人だが、共犯が居なかったと考えるのは早すぎる。つまりは、私達を眠らせたあと、なんらかの合図で仲間に宿の下に馬車を用意させればいい。そうすれば私達に気づかれる事無く馬車を下に持ってこれる。宿の支配人などの人たちも全員寝ていたしな」
「でも、馬車をあとから持ってくる必要はあるんですか?別に最初から乗ってきても良いと思うんですけど」
「確かに、普通なら馬車に乗ってきてその後から私達を眠らせてトキを攫った所でなんの問題もないだろう。でもね、私なら馬車に乗った能力者がここでおりた事に気づく事ができるかもしれない。相手としては、危ない橋を渡る必要は無いだろ?それに、馬車のあの五月蝿い音がこの下で止まれば、誰だって警戒をさらに強める。だから相手は徒歩できた。おそらく私を警戒してだろうな」
だが疑問は残る。なぜ私の存在に気づいていたのだろう?『奴』の仲間なら私を警戒していて当たり前だろう。しかし、『奴』に仲間が居る事はないだろう。そう考えると、私達の情報が漏れている?
「なんでフレイヤさんが居る事を知っていたんでしょうね・・・。もしかして、フレイヤさん、有名人ですか?」
ちょっとニヤリとからかうような目をする。案外、勘がいいのかも知れないな。
「さぁ?知っている奴は知ってるんじゃないか?」
少し目に力を入れてエリサを見る。その目をみてエリサはこれ以上何も言ってこなかった。
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「さて、資料によるとお前はまだ能力を扱いきれてないらしいな」
俺の指導係らしい人はなにやら紙を見ながらペンを回している。見た目は30後半くらいだろうか。背はそんなに高くはないが、結構筋肉はついてるみたいだ。ムキムキではないが、少し離れた場所からでもわかる。
「ていうか、なんで訓練することになってるんだよ・・・」
「それはお前が『神々の瞳』を持ちながら強くないからだろう。お前には我々のためにも強くなって貰わなければならない」
「俺はまだあんた達の仲間になるとか決めていないし。いきなり誘拐されて俺は迷惑してるんだぞ?」
眉間にしわを寄せて不快だということをアピールする。だが俺の目の前に居る人はそんなことお構いなしのようだ。
「今ごろそんな事を言ったって仕方のないことだろ?誘拐はお前を助ける意味合いもあったのだ。我々の組織の一員となり、ここで生活し、ここで訓練する。拒めばお前には死が待っている」
指導係の人は一歩一歩俺との間合いを詰めてくる。表情がなくて、威圧感を感じる。
「なんだ?ずいぶんと意味深の言葉だな・・・」
そう言いながら俺は後ろに下がる。
「それはそうだろう。もうお前には我々のアジトがばれている。ただで帰すと思うのか?奴や、奴らが『神々の瞳』を持つ物が我々の組織の者に攫われたのを知っていたら?おそらく普通に今まで通りに暮らしていたら殺されるだろう」
そういいながら体からオーラを発し、さらに俺との間合いを詰める。
「どっちにしろ、殺されるというわけか。じゃあ質問だ。お前らの組織はなんのための組織なんだ?なんの利益のための組織なんだ?」
どう考えてもなにやら危険な事をしているのだろう。「アジトを知られたから、もう抜ける事はできない」ってな感じの発言だ。
「うむ、我の威圧感を感じ取り、我の発言の意味を理解したのだな。賢明な判断だ。よかろう。我々の組織の名は『アースガルド』。『ヨトゥンヘイム』と敵対する組織だ」
「ヨトゥンヘイム?」
「そうだ。奴らはリーダーの目的を実現させるために作られた組織だ」
「その『ヨトゥンヘイム』のリーダーの目的ってなんだ?」
「さあな?我々はその目的を知らない。が、奴らは人の村や町を襲っている。快楽殺人者が多い組織だ」
なるほど。少しこの世界がどういう事になっているのか理解できてきたぞ。
「奴らに家族や恋人。大切なモノを奪われた者達が元となって作られたのが我々の組織だ。今はそれだけでは構成されていないがな」
ある程度の説明を受け、今、俺の居るこの世界がどういう状態なのか分ってきた。
けど、どうしよう。フレイヤさん達心配してるかな?それに、なんかここでも訓練するみたいだし。多分人間の組織と敵対しているのだろう。ということは人を殺さなければならない時が来るのかもしれない。
俺は不安を胸に秘めながらこれからの生活を考えていた。
さて、血まみれになった部屋。その謎は別の短編小説で形にしたいと思いますので、「期待させる終わり方で終ってたくせに、それだけかよっ!」とお怒りの方は、もうしばらくお待ちください。