アジト
「えぇ!」
私はその報告を聞いて驚いた。まさか私が寝ている間に・・・
「トキさんが連れ去られるなんて・・・」
どうしよう・・・どうしよう・・・。
「あったまくるぅ〜!」
本当にどうしよう・・・。となりでエリサが叫んでるし・・・。なんか殺気?みたいなものを感じるし・・・。
「こうなったら追うのよ!あんな変な男に眠らされて、何もしないまま終われるもんですか!」
「そ、そうだよね!このままやられっぱなしは駄目だよね。トキさんも助けなきゃいけないしね」
「駄目だ」
私達が二人でトキさんの後を追うことを決めたのですが、椅子に座っているフレイヤさんが私達の計画を却下します。
「どうしてですか!フレイヤさんはトキさんの事を見捨てるつもりですか!?」
「行くのは私一人だ。あんた達は村に戻ってな」
私が大声で言ってもフレイヤさんは表情一つ変えません。
「・・・あの男に礼をしないと、気が晴れないんですよ。フレイヤさんが同行を拒否してもいいですよ。私達は後ろから引っ付いてますから」
エリサは立ち上がってフレイヤさんを見下ろします。フレイヤさんはそんなエリサの目をじっと見て、何かを考えてるようです。
「・・・はぁ、仕方が無いねぇ。二人をほっぽっとく訳にも行かないしね」
「じゃあ、フレイヤさんに付いて行っていいんですね!?」
「どうせ後ろから付いてくるなら、変わらないからね」
こうして、私達はトキさんを連れ戻す旅に出ることになりました。なんだか不謹慎かもしれませんが、村を出る機会が少ない私はドキドキしてます。ちゃんとトキさんを見つけて、また、元の生活をします!
――――――――
ガタガタと馬車が走りながら音を立てている。俺はというと、暴れないという条件付きで縄をはずしてもらった。なんだか体がギシギシするが・・・。てか、首がやばい痛い。こいつらに連れ去られる前から痛かったが、ユキに首に手刀を食らって、更に痛みがましたのだ。
「・・・いつになったらお前らの言う、アジトに着くんだ?」
起きてから時間が経つほど首の痛みが増すので、上を向いた状態で首を固定している。
「ん〜そろそろ着くんじゃないかな?」
「ほぅ、なんだか答え方が曖昧だな」
普通、自分のアジトの場所とか完璧に覚えているものではないのだろうか?俺だったらそうするが・・・。
「ん〜ん?僕達のアジトは地下に建設されているから、場所自体は変わらないんだ。でも、もし敵に感ずかれても困るから周りの岩の位置などを変えてるんだ。だから自分達でも正確な位置は分からないんだ」
「それって思いっきり本末転倒だな・・・」
敵に感ずかれなくても、自分達でアジトの位置が分からないんじゃ、まるで意味無いじゃないか・・・。
「ところが、そうでもないんだよね〜」
「どういう事だ?」
「ま、着けば分かるよ」
ユキとシンは笑いながらはぐらかす。むぅ、なんだか気になってしまった。
「おし、到着だよ」
馬車が到着した場所。そこは、微妙に木が生えてて、少し大きい石が在ったりする。
「この下にアジトがあるのか?」
ん〜、どうも入り口らしきものが見当たらないんだよね〜。
「場所間違えたとか?よくわからないんでしょ?」
「確かによく分からないけどね、この岩があるでしょ?この岩の近く入り口があるんだ」
おいおい、なんか頼りないぞ?大丈夫なのか?
「さてさて、周りにだれも居ないし、そろそろ『案内』してもらおうかね」
ユキがそういうと地面に手をつけて、オーラを出している。
・・・だが、なにも起きない。
「・・・・・場所、本当に合ってるのか?」
「ん〜ん?大丈夫。そろそろ来るよ」
シンが言い終わった瞬間、俺達の足元に黒いシミみたいなものが広がっていく。そして、そのシミは俺達を飲み込んでいった・・・。
「ね?着いたでしょ?」
「え?え?」
いきなり声が聞こえて反射的に閉じていた両目を開く。
「おぉ!」
「ようこそ、僕達のアジトへ」
ユキ達のアジト・・・そこは、一つの町が丸々地下に移動したような風景が目の前に広がっている。
「か、感動した・・・・・てか、どういう原理だ???」
小さめだが、一つの町を丸々地下に移動させたなんて・・・・・。はっ!まさか!
「そ、俺の能力だ」
前方に茶色いコートの男が一人。なんだか怪しさ満点な雰囲気をかもちだしてる男だ。年は俺より上。20後半ぐらいといったところか。なんかヒゲ伸ばしてるし。
「やぁ、『神々の子』。俺はバルドーだ。バドでいいぜ」
「あ、俺は・・・」
「トキだろ?話は聞いてるぜ。てか、今じゃこのアジト内ではお前の名前はそこら中で聞けるぜ」
どうやら、俺はここでは時の人らしい。じゃあ、ちょっとしたスター?
「よろしくな、『神々の子』」
「・・・なんだよ、その呼び方は。ま、いいや。ところで、この町、どうしたんだ?」
呼ばれ方なんてどうでもいい。とりあえず、今俺が興味のある事といえば、こいつらの組織?のアジトである町の事だ。
「この町はつい2年くらい前までは、この真上にあったんだよ」
「それがどうしてこんな地下にあるんだ?」
バドは「その言葉を待ってました!」といいながらコートを脱ぎ捨てた。
「それは!俺の能力だ!」
「いや、それさっき聞いたし・・・・・」
「何っ!?」
バドは「しまった・・・」と呟きながらテンションが最低値まで堕ちてしまった。てか、独り言多いな・・・おぃ。
「ま、まあいいや。ここに来る時に『黒いシミ』に覆われただろ?あれが俺の能力さ!」
『黒いシミ』・・・あ!なるほど。
「つまり、バドの作り出す『黒いシミ』に飲み込まれるとここに移動しちまうのか」
「ん〜。少し違うな。ほら、床を見てみろよ」
バドの言うとおり下を向くと、そこには奇妙な文様みたいなものが描かれていた。今、俺達の居る場所は、へんな遺跡の上だ。その遺跡の床にバドの黒いシミと思われるもので描かれている。
「正確に言うと、ここに移動するわけじゃなくて、この文様が書いてある場所に移動するんだ。この文様の効果は半径100m」
なるほど、だから岩が目印だったわけだ。この文様から100m以内の場所なら岩をどこに置いても、すぐにここに移動させられる事ができるのか。
「ん?でも、俺達が上に来たってどうして分かったんだ?」
「それはね、僕が地下にオーラを放っていたからだよ」
「そして、この地下の天井にも俺の文様が描かれている。相手のオーラが触れればどこに居るなんて、俺ならわかるのよ。な?俺ってば凄いだろ?」
おぉ!なんだかバドが輝いて見えるぞ!
「ん?でも、あんた達の組織って能力者だけじゃないんだろ?なら、能力者じゃない奴はどうするんだ?」
「ん〜ん?僕達は決して一人で外に出ることはない。出るとしても、それは能力者だけ。非能力者達は地上に出るときは、グループを作って、その中に能力者を一名入れておくことが決まりなんだ。そうすればちゃんと帰ってこれるでしょ?」
なるほど、以外に考えているんだな、と感心してしまった。てか、便利な能力だな。
「ほぉ〜・・・ん?待てよ、『黒いシミ』で飲み込んだ物を、この文様の場所に移動させる事ができるんだよね?」
「おう?そうだぞ」
「じゃあさ、どうやって地下に文様を描いたの?最初からここが空洞なわけじゃないでしょ?」
最初からこんな所に空洞があるわけが無い。もし、あったならこの上はとっくに崩れ落ちてくるはずだ。というか、今、この状況で崩れ落ちてこないのもおかしい。
「あぁ、それはな、穴を作る事ができる能力者が居てな、そいつに作ってもらったんだ」
「へぇ〜なんか世の中能力者だけでどうにかなりそうだな」
「その考えが行き過ぎちまった奴らがいるんだがな」
バドは少し表情を暗くする。というか、周り皆がなんだか暗い顔になる。
「どんな奴らなんだ?」
「そいつらはな・・・非能力者の存在を認めない奴らさ。奴らは非能力者が能力を持たない事をいい事に、虐殺をしまくってやがる。ま、その逆も居るけどな」
な、なんかヘヴィな話だな・・・胸糞悪い。自分達が力を持ってるってだけで、罪のない人を殺しやがるのか・・・。なんだかクラスのいじめっ子みたいなガキな奴だな。
「なんか嫌な話だな・・・。その逆って事は、能力者を忌み嫌ってる奴も居るって事だな?」
「そういう事だ」
なんだかこの世界の状況が少し分かってきた気がする。今までモンスターとかの情報しか聞いていなかったが、この世界の状況も複雑なんだな。
「うし、話が一段落したところで宿に案内するぜ」
まだ仲間になるって決めたわけじゃないんだけどな・・・。と思ったが口にはださない。フレイヤさん達との旅で身に付けたスキル。『余計な事は言わない』を発動させる。今、ここで外に放り出されても困る。なんたって俺は地理に詳しくない。首も痛いから、魔物に襲われて無事な保障もないし。せめて、明日になってからにしよう。
俺はバドが先に歩き出してしまったので、後を追って走った。
なんだか本当に更新遅れて申し訳ないです;
さて、いきなり話を勝手に変えて・・・。最近自分の小説を読んでて、数ヶ月前のものなどを読んでいると恥ずかしくなります。そんなところも踏まえて(?)評価してくださると、うれしいです。
by物書きとしての才能が微塵も感じられない男