霧の男
力が欲しい
奴を倒す
力が欲しい
誰よりも
力が欲しい
何よりも
力が欲しい
――――――――
俺が目を覚ますと、見知らぬ天井が見えた。首を動かそうとしても激痛によってミリ単位動かしても、物凄く痛む。
「―――っ」
とりあえず、周りの気配を探ってみるが、誰も居やしない。・・・てか、ここどこだよ?何で俺の体はこんなになってるんだ?俺はとりあえず自分が覚えてる中で、もっとも新しい記憶を呼び起こそうとする。
「・・・・・」
やばい、思いだそうで思い出せない。一種の記憶障害か?
俺が自分の記憶障害を危惧し始めたところで扉が開いた。
「あ、起きたんですね」
アリサは水の入った桶とタオルを持っていた。普通ならここで、現実世界なら洗面器とかになるだろうが、そこら辺はやっぱり古さを感じる。
「あぁ、何かもっとも新しい記憶すら蘇らないし、それに首が凄く痛い」
「・・・思い出さない方がいいこともありますよ」
?ということはアリサは何で俺がこんな事になっているのか知っているのか。
「ふぅん。ま、ゆっくり思い出すさ。じゃあさ、なんで俺の首は激痛が走ってて、それにここはどこ?」
その質問に対してもあまりいい顔をしないアリサ。
「・・・とりあえず、今は体を休めてください。まだ万全じゃないはずですから」
「あ、おいっ!」
そういうと、アリサは俺が呼び止めたのを無視して、水の入った桶を置いて部屋の外に出てってしまった。
「う〜む」
アリサが出て行った扉を見つめて行き詰る。明らかに何か隠したい態度だったけど・・・。
俺の首の激痛と何か関係あるのか?いや、関係ないわけないか。
「でも今は考えらんねぇ〜」
なんにしろ体を起こして首を少し動かすだけで激痛なのだ。そりゃあ集中力も続かん。
「はっ!」
少し回りが霞んで見える。ちょっとぼんやりしていた間に寝てしまったのか?
「やぁ」
いきなりベットの脇で少し高い声が聞こえたのでそちらの方に首を向ける。首の痛みは大分取れたので首を動かすことができた。
「・・・誰だ?」
いきなり知らない奴が隣に立っているんだ。そりゃあ警戒ぐらいするだろう。
「ん〜ん?僕の名前はシン。よろしくね」
そういうと男は爽やかな表情をする。髪の色は水色で美青年といった感じだ。
「・・・・・どうして見ず知らずの奴が俺の隣に居るんだ?」
普通ならエリサやアリサ。そして、フレイヤさんが居るはずだろう。なのに俺の横には初めて見る男が一人。まだまだ警戒は解けない。
「ん〜ん?あぁ、他の女性3名には少し眠ってもらってるよ。僕の能力でね」
「!お前、皆に何をした!」
俺がベットから飛び起きてシンと名乗る男の胸倉を掴む。
「ん〜ん。言ったはずだよ。少し寝てもらってるだけだって」
俺に胸倉を掴まれてる状態でもシンは表情を崩さない。
「・・・・・」
胸倉を離してあたりを見回す。花瓶の置いてある台には鞘に入った日本刀らしき刀がある。少し長めだ。・・・しかし、それより気になるのは周りが少しぼやけている・・・というか景色が薄く感じるのは気のせいだろうか?
「どうやら気が付いたみたいだね」
俺が目をパチパチさせているのに気が付いたらしい。
「・・・なるほど。景色が薄く見えるのはお前のせいか」
「その通りだよ。僕の能力は『霧を作る事』なんだ」
つまり、俺が景色が薄く見えると思っていたのはこいつの作り出す霧のせいだったわけか。
「そんな霧を作るだけで、何故3人を眠らせることができた?」
「ん〜ん。本当は教えたくないけど、君は・・・いいかな」
シンは少し微笑んだ。
「僕は確かに『霧を作る事』ができる能力者。でも、能力者は皆オーラを身に纏う事である程度の身体能力上昇ができるんだ。ま、君の能力は『身体能力を格段に上昇する事ができる』能力らしいね。もちろん、それに比べれば微々たる上昇率だけどね」
・・・ちょっと待てよ。こいつ、いつの間に俺の能力を把握していたんだ?・・・俺の情報が漏れているのか?どこから?
「・・・じゃあお前は3人を肉弾戦で倒したのか?」
アリサに戦闘能力は無いが、エリサとフレイヤさんは違う。フレイヤさんに至っては能力者だ。どのような能力を持っていたのかは知らないが。
「ん〜ん?違うよ。僕は霧で眠らせたんだよ。つまり、僕は『人を眠らせる事ができる霧』を作り出したんだよ」
「―――っ!」
だとするとまずい。既に俺の周りには霧が充満している。
俺はとっさにオーラを身に纏い息を止める。なんとなくだが、有毒ガスみたいな感じですわなければどうにかなると思った。次に、俺は台上に置いてある刀を手に取る。この刀はおそらくフレイヤさんが注文していた刀だろう。持ったときにしっくりくる感覚。普通の刀より長く、リーチがあるが、俺の腕力でも重くない。いい刀だ。
「ん〜ん?安心してよ。別に君を取って食おうとは思ってないよ。ただ・・・」
「ただ?」
「僕達の同士になって欲しいんだ」
後ろで突然声がしたので振り返ろうとするが、首に衝撃が掛かった瞬間。何度目かわからない、意識が飛ぶ感覚を味わった。
かなりの間更新が遅れて申し訳ないです;数少ない楽しみに続きを待っていた方、申し訳ないです;
話がどんどん以外(?)な方向へ進んでいきます。これから、どんどん続きを書いていくのでよろしくお願いします。