表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々の瞳  作者: 白苑
19/25

 カラスの鳴く時間も終わり、月が綺麗に見える時間になって来た。

こんな時間に外のベンチに座って目を瞑ると、心が静かになって来るな。

 グウゥゥゥゥゥ〜

「・・・腹減ったな・・・」

「ふぅん。腹減ってんのか」

「そうなんだ・・・腹減ってんだ・・・」

 って!

「君誰?!いつからそこに??」

 三人ぐらい座れるベンチに座っている俺の隣に座っている少年。気配すら感じさせなかった・・・。やるな、少年。

「んー少し前くらいから・・・かな?ま、そんなこといいじゃん。それよりさ、腹減ってんだろ?なら、飯奢ってやるよ」

 少年はニカッと笑い、立ち上がった。

「ほら、行くぞ。俺達若者にはのんびりしている時間などないのだ」

 なんてわけのわからない事を言いながら、一人先に歩いていってしまった。

俺はというと・・・

「ま、待ってくれ!また迷うから!」

 笑いながら歩く少年と、半べそで腹を鳴らしながら歩く青年という、奇妙な絵が出来上がってしまった。


――――――――

「・・・ここが君の家?」

 閑静な住宅街・・・ではなく、子供が地べたで寝ているスラム街。それが少年の家らしい。

「ん?ま、驚くよね。スラム街に住む奴が飯奢ってやるって言ってるんだから」

 少年はケラケラと笑うと、レンガで積み上げた家らしき物の中に入っていった。

「そんな事はないけど・・・」

 少しばかり賑やかで、働く場所もあると思っていた町の端にこんな所があるなんて、少しばかりショックを隠せない。

「さ、早く中に入った入った。今日はパンなんだ」

 俺は少年に進められるまま、少年の家の中に入った。

中は以外に広く、人が2人くらい寝られるスペースは十分有る。

「なかなか快適な所だな。レンガの扉で、入るときは退けて、閉める時はレンガを元の場所に置いて、外気の進入を防ぐ所なんてイイアイディアだと思うぞ」

「そうだろそうだろ」

 少年は満足気に頷きながら、端に置いておいたパンを取り出した。

「ま、一個食えよ」

「でも、これは君のなんだろ?」

「そんなの気にすんなよ。世の中助け合いだろ?」

 少年はニカッと笑うと俺にパンを差し出してきた。

「んじゃ、ありがたくいただくよ」

 何だかこんな空気の中で食べるパンは、不思議とおいしかった。


「そういえばさ、名前なんていうの?」

 パンを食べ終わり、2人で寝っころがって居るときにふと思った。

まだ自己紹介すらしていないじゃん。

「俺の名前はシンラ。カッコイイだろ」

「ハハハ。そうだな。ちなみに俺はトキ」

「へぇトキか。いい名前じゃん」

 シンラはそういうとケラケラ笑った。シンラの笑い方は、なんだか自然で、自分も一緒に笑いたくなるような感じだ。

「ん?」

 笑い合っていた途中に悲鳴みたいなものが聞こえる。

「ん?どうしたんだ?」

 俺の疑問の声に反応するシンラ。今・・・

「悲鳴らしき声が聞こえたんだけど・・・」

「悲鳴?」

 そうなのだ。なんだか分からないけど、遠くもなく近くもない距離から悲鳴が聞こえた気がする。そのうえ、先ほどの悲鳴らしきものを聞いてから、心臓の心拍数が上がって来た。

「・・・行こう。距離は分からないけど、方角ならわかるから」

 俺は立ち上がってドアとなっているレンガを退けた。

「え?ま、いっか」

 シンラも立ち上がり一緒にレンガを退ける。

 心臓が高鳴り、一秒でも早くその場所に行きたいと思う。

  早く―――早く―――


 俺はそこで、この世界で、『本当の自分を知ることになる』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ