一人
「私、新しいネックレスが欲しいのよ」
「なんだ。荷物持ちって言うから重たいものを予想していたよ。
服とか、靴とか、そんなものを沢山買って持たされるのかと心配していたが、どうやらそうではないらしい。
「どれが私に似合うか見て欲しいのよ」
「ん?そんなの俺でいいの?アリサは?」
「アリサは宿で寝てるわ」
二人が別行動していた時、どうやら今日の宿を探していたらしい。
「ま、俺でいいならいいけどね。でも、俺、そんなに見る眼ないよ?」
「なんとなくでいいのよ。私に似合ってるなーって思ったのを言ってくれればいいから」
「ま、そんなんでいいならいいけどさ」
荷物持ちって感じじゃないだけOKだ。
――――――――
「ん〜どう?」
ネックレスを付けて俺に見せてくるエリサ。・・・くっ、なかなか可愛いじゃないか。
思えば、エリサもなかなかいい顔立ちなのだ。普段、悪魔みたいに俺をいじめるので気にしてはいなかったが、こうやって二人で居ると改めて実感する。・・・周りの男の目線も痛い。
「ま、いいんじゃない?でも、俺はこっちのほうがいい気がするけどな」
「お、なかなかいいじゃない。ちょっと付けて」
そういうとエリサは、先ほどまで付けていたネックレスを外して、俺に新しいネックレスを付けるように頼んでくる。俺は初めて女性にネックレスを付けてあげる事にドキドキしながらエリサに付けてあげた。
「お、やっぱ似合うじゃん」
俺がそういうとエリサは、鏡を見ながら笑った。
「うん。いいわね。・・・おし、じゃこれにしよ」
そういうとエリサは会計を済ませに行った。
「う〜ん。二人がそんな関係だったなんてねぇ」
いきなり後ろで声がしたのでビックリして後ろに振り返ると、そこにはフレイヤさんが立っていた。
「いきなり後ろから声かけないで下さいよ。ビックリするじゃないですか」
「デレデレしてるからだよ」
「大体なんでこんなところに居るんですか。それに、『そんな関係』ってなんですか」
「そのままの意味なんだが・・・ま、邪魔者は消えるよ」
そういうと、フレイヤさんはエリサの後ろをスゥッとすり抜けて、店の外に出て行ってしまった。
「なんだったんだ・・・。それも酒持ってたし」
あの人の行動はなぞだな。
「トキ!何してんのよ。早く行くわよ」
「あ、あぁ」
――――――――
「そういえばさ、エリサの用事ってなんだったんだよ」
アリサはエリサの用事に付き合うって言っただけで、どこで何をしてくるとは聞いていなかったので、少し興味を持った。
「宿を探してたのとは別なんだろ?」
「ん〜それは内緒ね。別に言ってもいいんだけど、何だか言いたくないし」
「なんだよ。買い物に付き合ってやったんだからさ、いいじゃんか。それくらい」
そうなのだ。俺の貴重な時間をエリサのために使ってやったんだから、言ってもいいなら教えてもらいたいものだ。
「え〜なんかやだ。なので言いません」
エリサは俺の方に向き、舌をだして走って行ってしまった。
「おい!待てよ!」
追いかけてみるも、全然追いつかない。いくら俺が強くなったと言っても、エリサの足の速さに追いつくほどではない。エリサの足の速さは、フレイヤさんも一目置いているほどだ。
「ったく。・・・ってここどこだ?」
エリサを無我夢中で追いかけていたので、現在地がどこだか分からなくなってしまった。地図もないし(地図があっても見方を知らない)。
この道を通った事はあるのだが、ここから行き先を全然覚えていない。俺は歩いている場所を気にしていないで歩いているタイプだ。
あたりを見回して、もう一度どうやって来たのか、どうやれば皆に合えるのか考えてみる。
「・・・・・って、俺、宿の場所わかんねぇよ・・・」
初めて来た町で、俺は、一人の夜を明かすことになりそうだ。