準備
さてさて、明日、ここの山の家を離れて町に向かうらしい。
少し遠い距離らしいが、徒歩で行くらしい。これも訓練だ。
「んじゃ、さっさと山を降りて村に寄ってから、メトンに向かうよ」
「へぇ、町の名前はメトンって言うんですか」
さすが異世界。名前も個性豊かである。
無事に山を降りて直ぐに村に着く。村とフレイヤさんが頂上に住む山は近いのだ。
「ほら、早くしな。たらたらやってるとこの村を出るのが夕方になっちまうよ」
「そ、そんな事言ったって・・・フレイヤさん、山下りるの早すぎですよ・・・。」
そうなのだ、下り坂をかなりのスピードで駆け下りているうえに、休憩は一切なしなのにも関わらず、息一つ切らさないでいるのだ。もはや超人。
「あんた、今変な事考えただろ?」
・・・俺は時たま思う。フレイヤさんの能力はテレパシーだと。
村に着いた俺達は行きの食料やテントなどを買った。数日間、野宿になるらしい。
更に、俺のスピードに合わせて行く事になってしまうと、一週間ぐらいかかるらしい。
「あ、お二人とも、どちらに行かれるんですか?」
後ろから声を掛けられたので振り返る。そこにはアリサの姿。
「アリサか。実はメトンって町に行くんだ」
アリサは俺がフレイヤさん宅でお世話になっている間、よく差し入れなどを持ってきてくれる。
雑なフレイヤさんの飯ばかり食ってると、舌が麻痺しそうになるので、アリサの差し入れはかなりうれしい。・・・ちなみに俺の料理は壊滅的だ。
で、俺とフレイヤさん二人で行くと思っていたのだが・・・
「さて、出発よ。出発」
「楽しみですね。メトン」
てな感じで二人ほど増えてしまった。まず一人はアリサ。
アリサにメトンに行く話しをしたら興味を持って「一緒に行きたい」と言い出したので連れて行くことに。野宿時の飯の問題を解消してくれるだろう。
もう一人はエリサ。こいつの場合は簡単だ。「アリサが行くなら私も」・・・らしい。
「女性を三人も連れて旅とは・・・。俺も罪な男になったもんだ・・・・・・」
ふっ、俺って隠れたモテモテ君だったわけだ。
「死ね。それとも私が頭破壊してあげようか?」「ごめんなさい。冗談です」
ちなみにエリサは、俺の苦手な人BEST3にランクIN中だ。
「でも、出発は明日だ。ついて来るならかまわないが、ちゃんと体を休めておきなよ」
フレイヤさんは大人だな〜なんて思っていると、
「それじゃ、私は一杯やってくるから。朱鷺。ちゃんと荷物を家に運んで置くんだぞ」
と、言い残しさっさと飲みに行ってしまった。・・・俺の苦労は増えるわけだ。
「まったく、いまだによくフレイヤさんの性格つかめないよ・・・」
最近そのせいで抜け毛が増えてる気がするよ・・・。
「それじゃあ私の家来ませんか?後でフレイヤさんには伝えておくので」
「ん?本当?助かるよ。ありがとうアリサ」
「なんでこんな男を家に呼ぶのよ・・・」
後ろでエリサの嫌そうな声が聞こえるが無視だ。いちいち気にしていたはらちが明かない。
その夜俺達三人は明日の準備をしてさっさと寝た。明日がなんだか楽しみだ。