第4話 婚約破棄された翌日、王国は崩壊した
王都を離れて二日目。
街道沿いに立つと、遠くに王都の廃墟が見えた。
瓦礫と煙。
炎に包まれた屋根。
そして、かすかに聞こえる人々の悲鳴。
――ああ、昨日までの王国は、もうない。
俺はただ、肩をすくめる。
「……関係ないな」
これが、追放された無能貴族の特権だ。
リリアが小さく震えながら、俺の横に立っていた。
「……レオン様、本当に……何もしないの?」
彼女の瞳には、少しの戸惑いと、ほんのわずかな期待が混ざっている。
「個人の命は助ける。国家単位は――放置する」
俺は淡々と言った。
瓦礫の王都は、もう俺の責任ではない。
過去の俺なら、心が痛んだだろう。
しかし今は、力を手に入れた。
そして、自由だ。
「でも……王族や騎士たちは……」
「勝手に詰んでる」
リリアは口をつぐむ。
まあ、そうだろう。
俺が手を出す前に、彼らは自ら崩れたのだから。
その日の午後、街道を歩くと、数名の難民が駆け寄ってきた。
「レオン様! どうか助けてください!」
声を上げたのは、かつて王都で中級官僚をしていた男だった。
「街道に魔物が出て、避難民が……」
なるほど。
個人単位での依頼か。
俺は笑った。
「いいだろう。だが、条件がある」
男は目を輝かせた。
「えっ、条件ですか?」
「鑑定済みだ。悪意なし。協力する意思がある者のみだ」
魔法陣を展開し、周囲をスキャンする。
光が走る。
男の周囲に、数名の避難民が白く表示された。
――全員、協力的。
「よし。なら救済は可能だ」
俺の言葉に、男は涙をこぼす。
「ありがとうございます! 助かります!」
俺は肩をすくめて歩き出す。
「……俺TUEEEより、俺優先だ」
その夜、森の中でキャンプを張った。
焚き火の明かりに照らされるリリアの表情は、まだ少し不安げだった。
「……でも、どうして王国はこんなことに?」
「自業自得だ」
簡単に言えばそういうことだ。
王女も英雄候補も、すべてが見せかけだった。
この世界は、俺を無能扱いして、自分たちの秩序を保とうとした。
しかし、もう通用しない。
魔法陣の光は、世界の真実を暴いた。
それだけで、秩序は崩れる。
「……でも、レオン様はすごい……」
リリアの声は小さく、でも確かに誇らしさを帯びていた。
「当たり前だ」
俺は肩をすくめる。
力を持つ者は、自分の意志で世界を選ぶ――それだけだ。
翌朝、遠くの空に浮かぶ王都の廃墟を眺めながら、俺は決めた。
「次は……冒険者登録だな」
街道沿いには、まだ多くの魔物が徘徊している。
力を試すには、最適の場所だ。
「リリア、準備はいいか?」
少女は小さく頷き、微笑む。
「はい!」
こうして、俺とリリアは王都の外に、新しい物語を見つけに歩き出した。
夕日に照らされた道は長く、そして――自由だった。
――追放された無能貴族の物語は、ここから本格的に始まる。




