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追放された無能貴族、実は全属性魔法と鑑定EX持ちでした 〜婚約破棄された翌日、王国が崩壊しましたが俺は関係ありません〜(連載版)  作者: 白昼夢


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第24話 世界が、静まり返る

第24話 世界が、静まり返る



 ――音が、消えた。


 浮遊都市全体を覆っていた結界が、一瞬だけ“呼吸を止めた”ように静まり返る。


 次の瞬間。


 空が、歪んだ。


「……来るぞ」


 レオンが低く告げる。


 都市の中枢、最上位隔離結界の中心。

 そこに展開されていた転移陣が、ゆっくりと、しかし圧倒的な魔力を伴って回転を始めた。


 ――量が、違う。


 魔力という概念そのものが、そこから溢れ出している。


「は……?」


 管制を担当していた魔術師が、乾いた声を漏らす。


「結界強度、測定不能……

 いえ、測定器が――壊れました……」


 誰も、動けなかった。




 転移陣の光が収束し、

 そこに――一人の少女が、現れた。


 年の頃は、十歳から十ニ歳ほど。

 小柄で、華奢で、

 どこにでもいそうな、普通の女の子。


 服装も簡素で、

 王国最強だの伝説だのとは、どう見ても結びつかない。


 ただ一つ。


 その足元で、

 白くてふわふわしたウサギが、ぴょこんと跳ねた。


「……きゅ」


 その瞬間。


 都市全域の警戒魔法が、同時に“沈黙”した。




「……あー」


 少女は、きょろきょろと周囲を見回し、

 心底どうでもよさそうに口を開いた。


「で、ここ……どこ?」


 ――沈黙。


 数秒。

 いや、数十秒かもしれない。


 誰も、言葉を発せなかった。


 先に我に返ったのは、レオンだった。


「ようこそ。浮遊都市アルヴァレスへ」


 そう言って、軽く手を振る。


「迎えに来た」


 少女は、じっとレオンを見る。

 値踏みするように。

 警戒するように。


 そして――


「……ふーん」


 興味なさそうに、鼻を鳴らした。


「ま、ウソついてたら――殺すけど」


 あまりにも自然な口調だった。




 その直後。


 都市外縁部。


 王女セシリア派が隣国と共に送り込んだ干渉部隊の魔術陣が、起動した。


「今だ!

 結界が揺らいだこの瞬間を――」


 だが。


 言葉は、最後まで続かなかった。


 少女が、ちらりとそちらを見ただけで。


「……うるさい」


 それだけ。


 たった一言。


 ――世界が、叩き潰された。


 空間が反転し、

 魔力が逆流し、

 干渉部隊の魔術陣は“存在しなかったこと”になった。


 悲鳴すら、ない。


 跡形もなく。


「……え?」


 リリアが、呆然と呟く。


「今の……魔法……?」


 少女は肩をすくめた。


「違うけど?」


 あっさりと言う。


「魔法っていうか……

 “そうなるようにした”だけ」


 レオンは、内心で息を呑んだ。


(……世界干渉に、近いな)




 少女は、足元のウサギを抱き上げる。


 その瞬間、

 張り詰めていた彼女の雰囲気が、ふっと緩んだ。


「……無事でよかった」


 ぎゅっと、抱きしめる。


 ウサギは嬉しそうに、彼女の頬を舐めた。


「きゅー!」


「……もう、離れないから」


 その声は、

 歴代最強の魔術師のものではなく、

 ただの、少女のものだった。




「……自己紹介、いる?」


 そう言って、少女はちらりと宰相アーヴェルを見る。


「どうせ、文献でしか知らないでしょ」


 アーヴェルは、深く頭を下げた。


「……お会いできて光栄です」


「やめて」


 即答。


「そういうの嫌い」


 そして、レオンを見る。


「……あんた」


「ん?」


「裏切ったら、殺す」


 真顔だった。


 だが、次の瞬間。


「でも――

 この子を守ってくれたのは、評価する」


 ぽん、とウサギを撫でる。


「だから今のところは……

 仲間、ってことでいい」


 上から目線もいいところだ。


 だが――

 誰も、文句を言えなかった。


遠く。


 隣国の魔術塔で、

 観測者たちが、同時に青ざめる。


「……観測不能……」

「いや……“拒絶”された……?」


 そして、王女セシリアは、歯を噛み締めた。


「……っ、あの魔術師が……完全に……」


 憎悪と恐怖が、ないまぜになる。




 浮遊都市。


 少女は、ふっと笑った。


「……ねえ」


 レオンに、言う。


「この世界、まだ……

 壊す価値、ある?」


 それは、試すような問いだった。


 レオンは、即答する。


「ある」


「……理由は?」


「俺たちが、ここにいる」


 少女は、少しだけ目を見開き――


「……バカ」


 そう言って、

 でも、どこか楽しそうに笑った。


 こうして。


 百年封印された伝説は、

 浮遊都市の一員となった。


 そして世界は――

 完全に、詰み始めた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回は大魔術師の覚醒回でしたが、

補足として――獣魔について少しだけ説明を入れさせてください。


この獣魔は、もともとは

森で怪我をしていた、ただの低ランク獣魔でした。

外見も今と同じ、モフモフしたウサギのような姿です。


それを、まだ幼かった大魔術師が助け、

無自覚のうちに膨大な魔力を与えてしまったことで、

結果的に 聖獣クラスへと進化 しています。


ただし――

普段は力を完全に隠しており、

見た目も挙動も「ただのウサギ」です。


理由は単純で、

大魔術師がそう望んだから。


世界に利用され、縛られ続けた彼女にとって、

この獣魔は

「唯一、何も求めてこなかった存在」であり、

「初めてできた友達」でした。


だからこそ獣魔も、

彼女のそばにいる時だけは強く、

離れている時は、ただの臆病なウサギのままでいようとします。

今後も

・普段は可愛い

・いざという時は世界最上位

・大魔術師が絡むと情緒が不安定


という立ち位置で活躍していく予定です。


次回からは

この “人を信じない大魔術師” が、どう仲間になっていくのか、

そして 王女セシリア側がどれほど絶望していくのか を描いていきます。


引き続き、お付き合いいただけると嬉しいです。



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