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追放された無能貴族、実は全属性魔法と鑑定EX持ちでした 〜婚約破棄された翌日、王国が崩壊しましたが俺は関係ありません〜(連載版)  作者: 白昼夢


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第23話 伝説は、目を覚ます

第23話 伝説は、目を覚ます



 浮遊都市の中枢区画。


 最上位隔離結界の内側で、獣魔はレオンの腕の中にいた。


 外見は――

 白くて、ふわふわした、ただのウサギのような小動物。


 耳をぴくりと動かし、不安そうに鼻を鳴らしている姿は、とても“封印解除の鍵”には見えない。


 だが。


 その小さな体の奥で、膨大な魔力が脈打っていた。


「……落ち着け」


 レオンが静かに声をかけると、

 獣魔はぴたりと動きを止め、ぎゅっと彼の服を掴むように身を寄せた。


 ――怖い。

 ――でも、あの人が呼んでる。


 そんな感情が、はっきりと伝わってくる。




 その瞬間。


 遠く離れた封印遺跡で、

 二重結界の内側にいた少女が、はっきりと目を見開いた。


「……っ」


 心臓が、強く脈打つ。


 忘れもしない感覚。

 百年以上、押し殺してきた“唯一の繋がり”。


「……来てる」


 見た目は、十歳前後の少女。

 小柄で、細くて、どこにでもいそうな子供。


 だが――

 その魔力は、歴代最高。

 世界そのものを歪めかねないほどの奔流。


「……やっと、来たんだ」


 少女は、結界の内側で小さく笑った。




 彼女の名は、すでに文献の中にしか残っていない。


 “王国最強の大魔術師”。

 “歩く天災”。

 “封印されし少女”。


 だが、彼女自身は――

 そんな呼び名を、一度も好いたことがなかった。




 力が覚醒したのは、幼い頃。


 突然だった。


 魔力が溢れ、森が揺れ、空が歪み、

 村は恐怖に包まれた。


 気がつけば、王国の人間が来ていた。


 そして――

 親は、彼女を差し出した。


 金と引き換えに。


「……ま、仕方ないよね」


 少女は、乾いた笑みを浮かべる。


 生きるため。

 村を守るため。


 そう言い聞かせていた。


 だが後に知る。

 ――故郷の村は、もう存在しない。


 自分が守ったと思っていたものは、最初からなかったのだと。


「……だから、人間は嫌い」


 信じない。

 期待しない。


 そう決めた。


 唯一の例外を除いて。




「……大丈夫、大丈夫」


 浮遊都市。


 獣魔が、急に光を放ち始めた。


 白い毛並みが淡く輝き、

 一瞬だけ――

 背後に、巨大な影が重なる。


 角を持ち、翼を備えた、

 聖獣クラスの本来の姿。


「……っ!」


 リリアが息を呑む。


「これが……元は低ランクだった獣魔……?」


 アーヴェルも言葉を失う。


「……信じられん。

 魔力付与だけで、ここまで……」


 だが次の瞬間、

 光はすっと消え、

 獣魔は再び“ただのウサギ”に戻った。


 そして――

 震える声で鳴いた。


「……きゅ」


 ――怖い。

 ――会いたい。


 ――独りは、嫌だ。




「……分かった」


 レオンは、静かに獣魔を抱き直す。


「迎えに行こう」


 その言葉が、決定打だった。




 封印遺跡。


 二重結界が、軋みを上げる。


「……ふん」


 少女は腕を組み、少しだけ不機嫌そうに言った。


「勝手に壊れるとか、ナシだから」


 ――自分で、出る。


 それが彼女の流儀だった。


「……ねえ」


 誰にともなく、呟く。


「もし外に出たら……

 今度こそ、裏切られないよね?」


 答えは、聞こえない。


 だが――

 獣魔との繋がりの向こう側から、

 確かな“意思”が返ってきた。



 ――ドン。


 低い音と共に、

 二重結界の一層目が、完全に崩壊した。


 封印解除率、急上昇。


【共鳴率:78%】


 浮遊都市の空が、震える。


「……っ」


 少女は、初めて――

 本当に、笑った。


「……やっと、会える」


 百年。


 人を信じなかった時間。

 裏切られ続けた記憶。


 それでも――

 ずっと、守り続けた“友達”。


 伝説は、今。

 世界に帰還しようとしていた。


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