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追放された無能貴族、実は全属性魔法と鑑定EX持ちでした 〜婚約破棄された翌日、王国が崩壊しましたが俺は関係ありません〜(連載版)  作者: 白昼夢


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第14.5話(番外編) エリナ・グランディスの決意

第14.5話(番外編) エリナ・グランディスの決意


私は、守れなかった

 朝の光は、まだ柔らかく、庭園を淡く染めていた。


 エリナ・グランディスは、石畳の上でそっと歩を止めた。

 手に握るのは、父が昔くれた小さなブレスレット。


 「お父様……今日も、見ていてくれるのかな」


 小さな声で、独り言を呟く。

 庭園には鳥の声だけが返る。


 母親ももういない。

 父は忙しく、王国のために尽くしていた。

 だから――


 私は、いつも孤独だった。


 けれど、私は知っていた。

 父は、私を愛してくれていることを。

 そして、私も父を愛していたことを。


 けれど……


 胸の奥に、ずっと影があった。

 王女セシリア――


 彼女は、私と同い年。

 いつも華やかで、人々から好かれ、誰もが振り向く存在だった。


 でも、父は――

 私にだけ見せる微笑みをくれた。

 だから、私は彼女に嫉妬したり、憎んだりはしなかった。

 ただ、少し怖かった。


 王女が笑うたびに、私は自分の存在が小さくなるように感じた。


 その日も、庭園で静かに本を読んでいた。

 父の顔を思い浮かべながら、いつも通りの穏やかな時間。


 ――それが、最後になるとは思わなかった。


 廊下の遠くで、足音がした。

 最初は誰かの警護だと思った。


 けれど、違った。


 足音は、私に向かって近づく。

 誰かが、静かに、しかし確実に、私を追い詰めていた。


 振り返る間もなく、床が崩れ、体が宙に舞った。


 ――痛みより先に、恐怖が全身を駆け抜けた。


 頭の中で、父の声が聞こえた。

 「エリナ――」


 でも、届かない。

 助けは、来ない。


 目の前の景色が、歪む。

 石畳が迫る。


 「お父様……ごめんなさい……」


 思わず手を握ったブレスレットが、最後の言葉を受け止めた。


 そして――暗闇。


 


 夢の中で、私は庭園に立っていた。

 朝の光は柔らかく、鳥の声が響く。


 父の姿。

 優しい笑み。


 「エリナ……大丈夫だ」


 私は、泣いた。

 何度も何度も、涙が頬を伝う。


 「……でも、私は父が無実だと証明できなかった」


 胸が締め付けられる。


 父がどんなに国のために誠実であるかなんて分かりきったことだったのに。


 周囲の急激な変化に、悪意に立ち向かうことから逃げてしまった自分を責める。


 


 庭園の向こう、遠くに光る城壁。

 王女セシリアの顔が、かすかに浮かぶ。


 私は、誰かに恨みを抱くこともできず、

 ただ、小さく、ひとりで立ち尽くしていた。


 


 「……でも、いつか」


 小さく、呟く。

 地面に手をつき、ブレスレットを握り締める。


 「いつか、父のために、そして私のために、

 必ず……」


 その時、遠くで風が吹いた。

 木々の葉がざわめき、微かな声のように聞こえた。


 ――「まだ、あきらめるな」


 涙を拭う。

 小さな決意が、胸の奥で芽生えた。


 私は、もう一度――

 自分の未来を、そして父の未来を信じようと、心に誓った。




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