7話 GW4日目(最終日)
4日もあったGWも、ついに最終日だ。時刻は朝8時前。普段の休みの日ならまだ寝ている時間だ。なのに今日は、駅前に立っていた。
「ごめん、待たせた?」と香織が息を切らしながら言った。集合時間にはまだ多少の余裕がある。
顔を見てみると、汗がにじんでいるのが見えた。どうやら、結構な距離を走っていたみたいだ。
「全然待ってないよ。息整えたら行く?」と聞いてみる。「ええ。そうしましょ」と香織は言った。
が、まだしんどそうだった。
「座ったら?」と駅の階段を指さして言う。「別に大丈夫。さぁ、行きましょ」「もう大丈夫のか?」
「うん。どうせ電車乗るし」
それもそっか。電車で座ることを考えていなかった。心の中で反省する。
切符を買い、ホームへと向かう。切符を買うとき、2人とも切符だったので待たせずに済んだのは良かった。
直ぐに電車はやって来た。電車に乗り、席を2人分確保する。幸い、時間が早いからか、休みの日にしては席に座りやすかった。
席に座った香織は、ハンカチで顔の汗を拭っていた。その仕草が妙に美しく見えた。形だけとは言っても、付き合っているのだから、できるだけドキドキしないようにしていたのに、この仕草は耐えられなかった。
じっと見つめてしまう。空調が熱いわけでもないのに体温が高くなってしまいそうだ。
やがて拭き終わった香織が俺からの視線に気づく。
「どうかした?」「いや…何も」「そう」
そう言い切った。気にされているのか気にされていないのか分からない微妙な返事だ。
そこから電車に揺られること1時間半ぐらい。目的地の最寄り駅に着いた。
「長かったわね」「確かにな」香織は電車に乗っているだけで少し疲れてしまっているようだった。
切符を改札に通し、駅から出る。そこから少し歩き、着いたのは遊園地だった。
受付に行き、チケットを2枚購入し、園内に入る。
まだ開園直後のはずなのに、もう結構人がいた。
「まず何乗る?」と聞いてみる。だが、「まずマップが見たい」と言われて、慌てて渡す。
ばっと勢いよく開く音が聞こえた。全体に目通した後、
「これ乗らない?」と地図を指さして言った。差された先を見てみると、ジェットコースターだった。
その乗り場に移動しながら、香織って絶叫系乗れたんだなと思った。あまりそういうのに乗ってそうなイメージが無い。真面目な性格だからだろうか。遊園地に行っても、謎解きのアトラクションとかばっかしてそうな印象だ。
乗り場に着いた。見ると、列が出来ていたが、案外すぐ乗れそうな雰囲気だ。
「並ぶか」「そうね」と並ぶ。
そこで俺は聞いてみた。
「香織って絶叫系乗れるの?」「失礼ね。友達と乗ってる内に得意になったのよ」
「そうなんだ」「そういう優真は乗れるの?」「多分ね」「本当?」「うん」
と話している内に番が回ってきた。正直不安だがいけると信じて乗り場に向かう。
乗り場に着くと、係員が待機していて、ベルトが閉めらているかとかをチェックしてくれた。そして、
「発車しまーす!」と言う係員の掛け声で出発した。
まずは、段々上昇していく。そのため視界が一面に広がる青空だけになる。その後頂上に着き、加速が始まった。バーを掴む力が一層強くなる。そこからは重力に乗ってどんどん加速していく。加速が終わった後も、その力で速度が維持されたように速度が速いまま最後まで走り切った。
もう一度始めの場所に戻って、バーを手から離す。「ふぅーーー」と息が漏れた。
コースターから降りて地上に戻る。
「どうだった?」と香織が聞いてきた。
「結構風が気持ちよくて楽しかった」と正直な感想を言う。
「良かったわね。乗れることが分かって」と笑顔で香織が言った。
「次何乗りたい?」と今度は香織が聞いてきた。
「ゴーカートでも乗らない?」「いいわよ。いきましょ」
と次はゴーカートに乗ることになった。
乗り場に向かう。向かっている最中、
「テストの対策大丈夫?」と香織が突然聞いてきた。
「うーん…まあまあかな」「なら良いけど。まだテストまで何週間かあるし」
そういえばテストは5月末だった気がするので、まだまだ時間はある。まだのんびりできそうだ。
乗り場に着き、中に入る。ここは並ばなくても入れた。
入るとすぐカラフルなカートが何台か見えた。そのうちの1つを俺たちの前に置いた。
あれ?2人で1なのか。それに気づいた後、急にドキドキしてきた。ジェットコースターの時は周りに人がいたからまだ大丈夫だったが、完全に2人で密着するとなると、やばい。
係員の人に言われてカートに乗り込みシートベルトを着ける。アクセルは香織の方にあった。操縦は香織がやることになるのだろう。
エンジンのかかる音が聞こえて、燃料のにおいが辺りに漂い始める。その後、香織が勢いよくアクセルを踏んでカートが走り出した。ジェットコースターの時とは違った風の気持ちよさを感じる。
カートは決められたコースに沿って走る方式だった。香織の運転はうまかった。ここだけで判断するものではないが、きっと本物の車の運転も上手な気がする。
スピードを結構出していたので、1週は案外早かった。カートから降りる。
今度は俺から「どうだった?」と感想を聞いた。
「結構楽しかった」といった感想が帰ってくる。「なら良かった」と思った。
その後も色々乗り、昼ご飯を食べることになった。
「実は…」と香織が鞄を漁る。取り出したのは四角い箱だった。
「今日、折角遊びに行くんだったら、なんて思って。お弁当作ってきちゃった」
なんと、弁当を作ってくれたらしい。
「わざわざありがとう」「別にいいのよ。早速たべましょうか」
と飲食スペースに移り、弁当箱を開けた。中にはおにぎりや唐揚げ、卵焼きなどのおかずがぎっしりと詰まっていた。
『いただきます』と2人声を揃えて言う。
まずおにぎりに手を伸ばす。中には梅干しが入っていた。
「うまい」と言う。「なら良かった。」と言った香織の表情は少し安心しているように思えた。
次は唐揚げだ。シンプルな味付けだが、それがおいしい。他のおかずも、全部安定したおいしさがあった。将来香織と結婚した人はこれが毎日食べられるのだろうと思うと少しうらやましくなる。
『ごちそうさまでした』と言った時には、お弁当の中には何も残っていなかった。
「じゃあ行きましょうか」「そうだな。次何乗る?」「もう一回、ジェットコースターでもいい?」
「全然いいけど。好きなんだな、ジェットコースター」「うん。あの落ちる感じとか、風とかが好き」
と言った香織の顔は、本当にきれいだった。
もう1度の千葉に向かい、並んで乗り込む。2回目でも、乗り終わった後の香織の表情は、本当に楽しそうだった。
その後も色々のって、そろそろ夕方になったので、遊園地から出る。
空を見上げると、綺麗な夕焼けだった。
駅に向かい、電車に乗り込む。この時間に帰る人は多いのか、俺たちと同じ時間に出る人が多く、電車の乗り場には多くの人がいた。
電車がやってくる。席は空いていなかったので、つり革を掴んで立つ。
数駅電車が走ると、段々人が少なくなってきたので座ることが出来た。
「今日は1番何が良かった?」と聞く。それに対して、香織はこれしかないといったような表情で
「ジェットコースター」と言い切った。それが少し面白くて笑ってしまう。それを見た香織も、
「ふふっ」と笑っていた。
電車が最寄り駅に着く。電車から降りて久しぶりに地元の大地を踏む。
駅の入り口で、
「今日は急な誘いだったのに1日ありがとう」と感謝された。
「俺からも弁当とかありがとう」と言う。
「じゃあ、帰りましょうか」と言いながら香織は手を差し出してきた。
「うん。帰ろう」と言いながらその手を取った。
今日1日、GWの最後を飾るのに相応しい1日を過ぎすことが出来た。主に香織のおかげで。
明日からまた学校だが、また頑張れそうだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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