2話 偽装後、初デート
『お願い。私の偽彼氏になって』と言われた日の放課後。俺は香織と門の前で待ち合わせていた。
俺が先に門に着き待っていると、直ぐに香織がやってきて
「遅れてごめんなさい」と1言言った。「気にしなくていいのに。じゃ行くか」
と2人は目的地に向かって歩き始めた。が、俺は行き先を何も伝えられていない。そのため、香織について行くしかなかった。香織が1歩前に出て、そのすぐ後ろで俺が歩く。どこに向かうのだろうか。と考えていると、気づいたら駅に着いていた。流石に気になったので「どこに行くんだ?」と聞いてみる。
すると香織が「ここには用は無いよ。たまたま通っただけ」と言った。てか聞いたこと答えてくれてないし。「まあ、いっか」と小声で呟きながら後を追う。
そうして、駅から歩いて5分ほど。俺たち2人は巨大なショッピングモールの前に立っていた。
ここは休日には家族連れも多く、お出かけやデートスポットとして定番の場所だ。
「着いたわ」と目的地を確定する声が聞こえる。「何するんだ?」「それ聞く?」「だって分からないし…」「はぁ…」とため息をつかれてしまった。「ここでデートするなら大体ここでしょ」と言いエレベーターに乗り、向かったのは映画観だった。そこに着いてみると、そういう事だったのかと分からされる。
チケットを購入し、シアターへと向かう。見る映画は、香織の希望で最近流行っているらしい恋愛物の映画だった。少し時間があったからか、シアター内の大きなスクリーンには、映画の予告が流れていた。それをぼーっと眺める。ふと横を見ると、香織も同じく、スクリーンを何か考えているような表情で見つめていた。
『やっぱり、横顔綺麗だよな』なんてそんな台詞が言える訳も無く。ただ、その横顔をバレない程度に見つめていた。何も感じていないような雰囲気で香織と接しているが、実は心臓はバクバクだ。向こうは気づいていないかもしれないが、俺は香織の事が好きなのだ。その人と今、直ぐ近くにいる。映画よりも緊張を抑える方に意識を使ってしまいそうだ。だが、感想などを映画後に話すかもしれないので、しっかり見ておかないといけない。
『やべぇ…どうしよ』と心の中で呟く。そうしている内に、予告が終わり、映画が始まった。
映画が終わった。
今回、俺が選んだ選択肢は、絶対、何があっても、横を見ないことだった。シアターが徐々に明るくなりシアターから出る。その時、案の定、香織から
「映画、どうだった?」と聞かれた。
『やっぱり来たか。ちゃんと見といて良かったぁ」と安堵する。
「面白かったよ。特に最後のキスシーンは良かった」「私も同感よ。じゃあ、試してみる?」「えっ!?」
意識が一瞬飛んで行きそうになった。顔に段々熱を帯びていくのを感じる。
だが。勿論そんなことは無かった。
「冗談に決まってるじゃない」と笑いながら言った。「やっぱそうだよな…」「まあ、本当に付き合ったらさせてあげる」若干引きかけていた顔の熱が戻る。それは香織にも気づかれていて、
「ふふっ。顔、真っ赤」と笑われてしまった。俺も微笑する。
「そろそろ帰りましょうか」と香織が言う。時計を見てみると、そろそろいい時間になっていた。
「そうだな」と言い、帰路につく。
2人で帰る。なんだか、とても久しぶりの事のように感じた。
帰り道で突然香織が、
「今日はありがとう。急な頼みだったのに」と言った。「別にいいよ。俺も暇だったし」
「でも…」「気にしなくていいから。さ、帰ろうぜ」「うん…」
再び2人で歩き始める。ここから家までは歩いて15分ぐらいだ。
しばらく沈黙の時間が流れる。それは、家に着くまで続いた。
家であるマンション前に着く。俺たちは同じマンションに住んでいるのだ。
「じゃあ、また明日な」「うん。また明日」とエレベーターで別れる。俺が3階、香織が6階だ。
エレベーターから降りる。思いもよらない形で付き合う事になったが、俺は多分、2人が別れるまで、これがいつか本当になればいいなと願い続けていると思った。
「あら、おかえり。香織。今日遅かったわね」「ただいま、お母さん」「何してたの?」
「なんでもないよ。後、彼氏の件、ちゃんと作ったから」
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