1話 俺と彼女の偽装恋愛
5月の始まり。もうすぐゴールデンウィークがやってくるという季節の昼休みに、俺は片思い中の幼馴染に屋上へと呼び出されていた。
高校に入学してもうすぐ1か月と言ったところだろうか。少しずつ新しい場所での生活に慣れてきた時にやってくる連休。その名を、ゴールデンウィークと言う。それがもうすぐやってきそうな5月1日。明日学校に行けば3連休だ。今年は短めだが、それでも十分ありがたい休みだ。
「連休何しようかな」と考えながら昼食をとっていると、「おーい更科。連休のどこかで遊びに行こうぜ!」と田沼に誘われる。田沼は、高校に進学してから知り合って仲良くなった友人だ。
「いいね。いつ行く?」「俺は土曜日以外ならいつでも空いてるぜ」「じゃあ日曜で」「りょーかい」
「場所は?」と尋ねる。「まあいつもの場所でいいか」「おっけー」
と遊びの約束をし、そのまま2人で昼食をとる流れになった。一緒に食べていると、突然教室の前の扉が力強く開けられた。それに驚き、クラス内の人たちは一斉に扉の方を向く。そこには、見慣れた人物が立っていた。そのまま開けたと思えば、普通に教室に入ってきた。その後教卓に貼ってあった座席表を見たと思えば、一直線に俺の席へと向かってきた。
「ちょっと来て」そう言い、腕を掴んで連れ出そうとしてくる。
「なんだよ香織」と尋ねる。彼女は佐々木香織。俺の幼馴染であり、俺の初恋相手でもある人だ。それを聞いた香織は、少し面倒くさそうな表情で
「着いたら話すから」と言い俺を連れて行った。
ちなみに香織は学校内でも『美人だ』とか『可愛い』などと有名になっている。顔にはしっかりとメイクが施されていて、長く伸びた黒髪もしっかり手入れされているみたいだ。
そのせいか、俺もたびたび田沼から噂を聞く。大体は「告白された」みたいなものだ。
ちなみに、俺と香織が幼馴染であることは田沼はまだ知らない。
そのまま連れていかれた場所は、屋上だった。ドアを開け、屋上へと入る。俺は入るのは初めてだったのだが、香織は慣れているようだった。やはり、告白とかもここでされているのだろうか。
なんて事を考えていると、香織が辺りを見回し、誰もいないことを確認すると、
「1つ、お願いがあるの」と言った。「どんなお願いなんだ?」と聞くと、全く予想していなかった言葉が香織の小さな口から放たれた。
「お願い。私の偽彼氏になって」
頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなる。どういう意図で言った言葉なのかがわからない。
正直に「どういう事?」と聞いてみる。すると、
「言葉そのままの意味よ。告白とかされるの、面倒だし。彼氏が出来たって言えば誰も告白なんてしてこないでしょうから。」と言った。続けて、
「まあ無理にとは言わないけど」と言った。あえてそんな風に言っているが、多分、断ってはいけないのだろう。
「分かった。まあ昔から色々お世話になったからな」「ほんとに?」「もちろん」
「やった。じゃあ今日の放課後暇?」と聞かれる。「まあ暇だけど」「なら、早速デートしましょ。だって、折角付き合ったのだから」「…」
なんだか、世界が少し変わったような気がした。
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