花が散る
ミリアムは百合の花を集めていた。自分への慰めに。
昨日、ラビたちに呼ばれた。自分の相手が決まったのだ。
そして今日。その相手が自分の部屋に来る。
周りの女性は祝福してくれた。しかし、妊娠、出産が喜ばしいものだと誰が決めたのか。
人類という仲間が増えるから?
他のメス、もしくはオスとの闘いに勝ったから?
子供を育てることで自分も成長するから?
そんな綺麗事で子供が産まれるのならば、何故虐待する親がいるのだろう。自分勝手だ。しかし、自分勝手でなければ、人として生きていくことはできない。
だから、妊娠出産は親のエゴによって成り立つのだろう。ミリアムの場合は、次世代にラビの血筋を引き継ぐというエゴのために。
エゴから産まれた子供は幸せに暮らせるのだろうか。
夜。ラビが部屋を訪れた。名前をガブリエルというらしい。
「私は産まれたときに予言を受けてね。私の子供はメシアになるらしい。光栄に思いなさい」
そう言って、ガブリエルは寝室へと入っていった。
ミリアムは今日、摘んだ百合の花を花瓶に飾った。
そして、そっと溜め息をついてミリアムも寝室へと入った。
朝になり、ミリアムは寝室を出た。花瓶に飾っていた百合の花はどこからか入ってきた野良猫に踏みにじられていた。




