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ミリアム  作者: 花散里
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終末の始まり

ユダヤでは、ラビの血筋は尊ばれた。

ラビの子供たちは年頃になると、神殿に行く。男子は、ラビになるために学ぶ。女子はラビの子供を産む。そして、その産まれた子供が年頃になり、神殿へと向かう。

こうして、ラビの血筋は守られるのだ。








ミリアムは15歳。去年、神殿に来た。

母であるミリアム(ユダヤではミリアムという名前は多い)も自分と同じ年頃のとき、ここに来て、自分を身籠った。

やがて、自分も身籠るのだろう。上の人が決めた相手と。

ミリアムには不思議だった。

(人間はどうして子供を産むのか?

ただ、ただ、自分の遺伝子を残したいだけ。そんなに自分の遺伝子に自信があるのだろうか?凡才しか持たない人間を増やして何の意味がある?)

ミリアムのこの、卑屈とも言うべき考え方は幼少のころに始まった。

ミリアムの母はラビの血筋を引く。だから、ラビの子供を身籠ることができた。

しかし、神殿は神聖な場所。そこで血を伴う出産をすることは許されなかった。となれば、外で産むしかない。だが、父親であるラビは祭司なのだから、外には出れない。それで、ラビの子供を宿した女性はお腹の子供と血の繋がっていない男性と結婚することが習わしとなっていた。何故、この、無駄とも言うべき習わしが始まったのか。誰も納得する答えを持たない。えてして、習わしとはそういうもの。それはさておき、神殿の力を背景に結婚した男女が普通の夫婦のように仲良くなれるはずがない。ましてや、お腹に自分とは違う遺伝子を持った子供を入れている女など、誰が結婚しようと想おうか。

それが、独占欲の強い男性の本音であろう。ミリアムは尊い血筋を持ちながら、父親に愛されることはなかった。

罵声を自分に浴びせる一方で父親は弟妹には優しかった。

自分の遺伝子が入った入れ物を男は望むのだ、とそうミリアムは思った。


けど、本当にそう思っているのは、男だけだろうか。周りの女性を見回す。








ミリアムには、自分と自分が愛する(と思い込んでいるだけかもしれない)男性との間に産まれたエゴをかわいがっているようにしか、見えなかった。

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