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【スピンオフ】紗月の心の揺らぎ編 ―「知られたくない願い」―
放課後の生徒会室。紗月はひとり、資料を見つめていた。
「……“協調性の欠如”。また、私のせいにされてる」
口に出すと、少しだけ心が軽くなった気がした。
彼女は完璧だった。成績も、言動も、外見も。でも、完璧であることは、同時に孤独でもあった。
(私は、選んできた。嫌われても、正しいと思うことを)
でも——
(高森くんの前では、少しだけ……普通でいたいと思ってしまう)
その願いは、弱さだろうか。
ただの“個人”として見られることを望んでしまう自分が、恥ずかしかった。
(それでも……願ってしまう)
「……もし、私が間違ったら。あなたは、叱ってくれる?」
問いかけた相手は、今この部屋にはいない。
けれど、その返事を、紗月はすでに心の中で知っていた。




