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Side Episode:白川紗月の視点 —「仮面の下の私」
“完璧”であること。
それが、私に求められる役割だった。
成績は常に学年一位。
清楚な見た目。
正論を言い、失言をしない。
品行方正であること。
でも、本当の私は——そんな理想像の器に、自分を無理やり詰め込んでいるだけだった。
「……高森くん」
彼の存在は、静かに私の中に入り込んできた。
最初はただの“興味”だった。
誰も気づかない違和感に気づける観察力。
けれど、そのまなざしに、私はいつしか惹かれていた。
“私を見てくれる人”なんて、誰もいなかった。
私は、期待される「理想の優等生」でしかなかったから。
でも彼は違った。
仮面の下を、見ようとしてくれた。
そんな彼に甘えたかった。頼りたかった。
けれど、それが“彼を傷つけること”になるとしたら?
——私はまた、「正しい仮面」をかぶり直すしかないのだろうかな?




