小説書きが才能の死を受け入れるまで
小説書きが才能の死を受け入れるまでの工程は、ガン患者のそれに良く似ている。
【否認】
評価がつかない? そんなの、ただのタイミングだ。
今は人が少ないだけ。ジャンルが悪いだけ。
次こそはバズる。次こそは、ちゃんと見てもらえる。
自分の書いたものが、読まれないはずがない。
・・・だって、あれだけ時間をかけて、あれだけ想いを込めたのだから。
【怒り】
なんで? どうしてアイツの方がウケてるんだ?
俺の方が、ずっと真面目に、ずっと丁寧に書いてるのに。
読者は見る目がない。運営のアルゴリズムがクソなんだ。
そもそも今の時代、バズり至上主義でおかしいだろ。
【取引】
よし、次は流行りのタイトルに寄せてみよう。
タグも工夫して、ジャンルも王道にして。
キャラ紹介もテンプレにして、更新時間も狙って。
・・・今度こそ。これで見つけてもらえるはず。
そうすれば、自分の努力も、無駄じゃなかったって思えるはずだから。
【抑うつ】
・・・ダメだった。
どれだけ工夫しても、評価は増えない。
毎日アクセス数を見るのが怖い。ログインすらしたくない。
感想も、ブクマも、なにもない画面を開くたび、胸が冷たくなる。
自分には、向いてなかったのかもしれない。
努力って、報われないんだな。
【受容】
たぶん、俺には才能がなかったんだろう。
でも、それでいい。才能がないなら、努力できるだけだ。
他人と比べるのをやめたら、ちょっとだけ楽になった。
書くこと自体は、やっぱり楽しいから。
評価されなくても、誰かの人生のすみに引っかかるなら、それでいい。
今日もひとつ、物語を紡ごう。
読まれなくても、書けることが、俺の救いだ。
才能の死を、受け入れた日から。
ようやく、書くことが。
好きだと言えた――。
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