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べからずさま  作者: 長月 ざらめ
1章 口紅編
8/23

4話の5 ばいばい

 比較的楽しい昼休みを過ごした(うつほ)は、人気のない屋上前の階段の前でスマホを耳に当てていた。

 祖父から電話がきていたのである。


『DVDの中の魂は全て成仏させた』

「そう。ありがとう」


 DVDの男の霊は、暁美(あけみ)以外にも今まで多くの人々の“魂”を奪っていた。

 映画に出てきていた主演からエキストラ、はたまた犬猫などの動物まで、全てが霊が集めた魂達が演じていたのだ。

 霊が思うがままに、強制的に。

 まさしく生き地獄。死ぬこともできず、かといって体に戻り普通の営みもできず。ただ霊が満足するまで永遠に役者として映画に閉じ込められ続ける地獄。


 電話先の祖父が言うには、DVDの悪霊は除霊師界隈では“逃げ足が速くて捕まらない”で有名な悪霊だったらしい。

 人の“魂”を奪ったら、除霊師が来る前に逃走する。色んなレンタルビデオ店を転々として獲物を物色し、己を手に取る人間に暗示をかけて借りさせるのだとか。

 最近はビデオ店に行かずともアプリやテレビで映画を見ることができるため、昔と比べると被害者は減少している。

 しかし、それ故に1度隠れられると見つけ出すことが難しいのだ。DVDのパッケージは変わらないのは不幸中の幸いといったところだが、何万もあるDVDから1つの呪いのDVDを見つけるのはかなりの苦行。木を隠すなら森の中とはよく言ったものである。


 暁美は運が良かったとしか言いようがない。

 もし先に“肉体”が死んでいたら、DVDがまだ暁美の部屋に残っていなかったら。

 “魂”を取り返したとしても、彼女は2度と人として生きることはできなかっただろう。霊の決めた配役通りに動くエキストラか、成仏させることしかできない不幸な霊にしかならなかった。


 電話先の祖父はため息を吐いた。


『だがな、空。こういうことがあるなら事前に伝えろと言っているだろう』

「緊急の依頼だったから」

『依頼があったら一言寄越せ。でないといざという時、お前を助けに行けねぇだろうが』


 空は祖父の言葉に数秒黙った後、「はい」と言った。

 どんな霊でも人間でも、ある程度は自身のペースに巻き込むことができる空であるが、電話先の祖父にはどうしても頭が上がらないのだった。

 次の投稿は、7月27日、日曜日、0:00です。

 よろしくお願いします。

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