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思春期トライアングル

「ヒロ、今日の試合のホームラン、凄かったわ!」


「いやぁ、それ程でもないよ」


「ヒロの、滑り込みスライディングで、点が入って、逆転できたし。


 はい、このタオル、使って!」


「ありがとう、レンちゃん」


野球部・エースで、4番の、ヒロ。


彼は、さわやかなルックスと、気取らない人柄で、多くの生徒から慕われている。


今日も、試合後、グラウンドで、女子マネージャーのレンと、フラグを立てる。


学園・野球モノの、定番である。


その様子を、校舎の陰から見つめる、眼鏡っ()の、ユキ。


彼女は、葛藤していた。


(いつもは、教室の窓際の席で、本ばかり読んでる、内気な私。


でも、今日は、ヒロ君に、勇気を出して、どうしても、伝えないといけない事があるの。


それは……。


ヒロ君の、ズボンの尻が、破けている。


はみパンしてる。


黄緑色の、ボクサーパンツ、見えちゃってる。


満塁逆転スライディングで、滑り込んだ時、ビリッと破けたっぽい。


てか、あの女子マネ、何で、突っ込まないの?


貴様の目は、節穴なの?


私が、伝えないと……!


それ以上、亀裂が広がって、中身が出て、


ヒロ君が、下校中に、公然猥褻(わいせつ)罪で、お縄になる前に。


ファイトよ、ユキ!)


レンが、今度はサッカー部キャプテンとのフラグを立てに、ヒロから離れた隙に、


ユキは、()(ふく)前進で、彼に近付いた。


「ヒロ君……!」


「何だい?」


「……はっ!」


(くるりと振り返ったヒロ君の、キラキラした笑顔を見て、


私は、ズボンの尻の破れよりも、もっと言わなきゃいけない、大事な事に思い至った。)


「ヒロ君……!


 私、私……!


 どうしても、あなたに、伝えたい事があるの」


「どうしたんだい、ユキちゃん。


 何でも、言ってごらんよ」


(何も知らないヒロ君は、イケボ&スマイルだ。


でも、言わなきゃ。


真実が、たとえ、彼を傷付ける事になっても。


私は、意を決して、口を開いた。)


「ヒロ君……。


 鼻毛が……、出てる……!」

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