第九十七話 決戦の終焉
アレンはアルデンの全霊を込めた攻撃を受け止め、最後の一撃でアルデンを完全に消滅させた。
戦場には、静寂が訪れる——。
戦場に、風が吹いた。
激戦の余韻が、なおも空気を震わせる。
黒い霧がすべて消え去り、視界が開ける。
そして、その中心に——
アレンが立っていた。
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「……終わったのか……?」
ヴァルガスが息を呑む。
ゼノンは剣を握る手の力を緩めた。
「アルデンは……もう、いない……?」
ユイの瞳が揺れる。
戦場に残されたのは、崩れかけた大地、荒れ果てた空。
そして、"確かにそこにいる"アレンの姿だった。
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「アレン!」
ヴァルガスが駆け寄る。
ゼノンも剣を収めながらアレンを見た。
「お前……本当に勝ったんだな」
「……ああ」
アレンは息を吐きながら頷く。
「でも……」
彼は戦場を見渡した。
「まだ、実感がない」
崩壊した大地、深く抉れた地面。
戦場の痕跡は、今もなおその壮絶さを物語っていた。
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「アレン……!!」
ユイが駆け寄る。
「本当に……無事なの?」
彼女は震える手でアレンの袖を掴んだ。
「……ああ」
アレンは彼女の瞳を見つめながら、ゆっくりと頷く。
「俺は、大丈夫だ」
ユイは目を伏せ、しばらく震えたまま何も言えなかった。
だが、やがて顔を上げ、微笑んだ。
「……よかった」
「グルルル……!」
フェンが低く唸りながらアレンのそばに歩み寄る。
「お前も、無事だったか」
アレンがフェンの頭を撫でると、彼は鼻を鳴らした。
「フェン……ありがとう」
ユイがそう言ってフェンの首元を抱きしめる。
フェンは静かに尾を振った。
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「これで……本当に終わったのか?」
ゼノンが呟く。
「アルデンは……もう、戻ってこない」
アレンは確信を込めて言った。
だが、彼の目にはまだ迷いがあった。
「俺は"喰う"ことでここまで来た」
「だけど……"喰う"ことは、本当に俺の戦いだったのか……?」
ヴァルガスとゼノンが、その言葉に目を細める。
「それを……探す必要があるかもしれない」
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風が吹き抜ける。
戦いが終わったことを告げるように、穏やかな風だった。
ユイはアレンの手を握り、微笑んだ。
「私も、一緒に行く」
アレンは、彼女の瞳を見て、
そして、ゆっくりと頷いた。
「……ありがとう、ユイ」
その言葉を最後に、戦場は静寂に包まれた。
そして、月日は流れ——。
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アルデンとの戦いは終わり、戦場には静寂が訪れた。
しかし、アレンの旅は終わらない。
彼は"喰う"という行為の意味を、改めて見つめ直す。
そして、戦いの余韻を残しながら、時間は流れていく——。