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第九十六話 終焉を穿つ一撃

アレンは自らを喰らい、自らの存在を世界に確定させた。

アルデンの霧ですらアレンには干渉できず、戦場の均衡が完全に崩れる。

"喰う"と"喰われる"という概念が崩壊する中、戦いは最終局面へと向かう——。

「俺は……最強の存在になるはずだった……!!」


挿絵(By みてみん)


アルデンが咆哮する。

その声は怒り、焦り、そして……恐怖に満ちていた。


黒い霧が激しく渦を巻く。

それはこれまでの攻撃とは違う。

喰うのでも削るのでもなく、すべてを巻き込みながら"絶対の終焉"を作る力。


「消えろ……!!!」


アルデンの全身が黒く染まり、霧が爆発的に拡散する。

戦場全体が暗闇に包まれ、空間そのものが悲鳴を上げた。


挿絵(By みてみん)


黒い波動が、奔流となって広がっていく。

それはもはや、攻撃と呼べるものではなかった。

世界を飲み込むための力——喰らうことの究極の形。


「……っ!!」


ヴァルガスが拳を握る。


「なんだ……あの力は……!?」


ゼノンの剣が微かに震えた。


「まるで……ここすらも消し去ろうとしている……」


戦場が悲鳴を上げる。

霧が、世界そのものを飲み込むように拡大していく。


「こ、こんなの……」


ユイの声が震える。


挿絵(By みてみん)


黒い霧が戦場を埋め尽くし、すべてが静まり返る。


ヴァルガスたちは、一瞬、息を呑んだ。


そして——


霧の中心に、空白が生まれた。


「……!」


ゼノンが目を凝らす。


「まさか……」


そこには、まったくの無傷で立っているアレンがいた。


挿絵(By みてみん)


「そんな……バカな……」


アルデンの声が震える。


「これほどの力を……すべてを消し去るはずの霧を……」


「なぜ、お前だけが残っている……!?」


アルデンの足元が揺らぐ。


「俺の霧が……喰えないだけではなく、消すことすらできない……?」


---


アレンは、一歩踏み出した。


「お前は喰うことに囚われすぎた」


アルデンの霧が、再びアレンを飲み込もうとする。

だが——


「無駄だ」


霧がアレンに触れることなく霧散する。


「お前は何も理解していない」


アレンが拳を握る。


「俺は……何者でもないんじゃない」


挿絵(By みてみん)


「俺は、確かにここにいる」


アルデンの目が揺れる。


---


「……アレン……」


ヴァルガスは拳を握りしめた。


焦燥や不安ではない。

ただ、信じるしかなかった。


「お前なら……」


ゼノンが剣を胸の前で握る。


「……きっと……」


ミリアが震える唇を噛みしめた。


そして——


「アレン……!」


ユイの小さな声が、静寂を切り裂くように響く。


「お願い……」


"どうか、無事でいて"


彼女の瞳が、霧の向こうを見つめた。


挿絵(By みてみん)


「やめろ!!」


アルデンが叫ぶ。


黒い霧が一斉に渦を巻き、

最後の抵抗を試みる。


「俺は……最強の存在になるはずだった!!!」


アレンの拳が、まばゆい閃光を帯びる。

その光はあまりにも強く、霧さえも消し飛ばすほどの圧倒的な力を秘めていた。


挿絵(By みてみん)


ゴゴゴゴ……!!!


空間が震え、大気が揺れる。


「アレン!!」


ヴァルガスの声が響く。


「……行け……!」


ゼノンが静かに言った。


「……お願い……!」


ミリアは手を握りしめる。


「……勝って……!」


ユイが祈るように呟いた。


アレンは、仲間たちの声を受け——


拳を、振り下ろす。


挿絵(By みてみん)


ドオオオオオオオオン!!!!


衝撃が戦場を覆う。

霧が一瞬で霧散し、

黒い空が、眩い閃光に飲み込まれる。


「ぐ……ぁぁ……!!!」


アルデンの体が大きく吹き飛ぶ。


空中で激しく揺れ、

その身体から"黒い霧"が弾け飛ぶ。


「そんな……俺が……!!?」


---


「俺は……"喰われる"のか……?」


アルデンが、最後の力で呟く。


アレンの拳が、さらに深く突き刺さる。


「違う。お前は消えるんだ」


光がアルデンの体を包み込む。


「俺は……俺のまま、ここにいる」


アルデンの影が、次第に薄れ——


そして、完全に霧となり、世界から消えた。


---

アルデンの全霊を込めた攻撃は、アレンに一切通じなかった。

そして、アレンの拳が、"喰う"でも"喰われる"でもなく、"終焉を穿つ力"としてアルデンを完全に消滅させた。

ヴァルガスたちの祈りを背に、アレンは仲間の想いとともに戦いを締めくくる。

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