第九話 拠点の第一歩
食料の確保には成功したが、いつまでも森をさまよっているわけにはいかない。
そろそろ、ちゃんとした拠点を作るべきだ。
雨風を凌ぎ、食料を保存し、安全を確保できる場所を見つけなければならない。
「さすがに、そろそろ住む場所を決めないとまずいな……」
俺は森の中を歩きながら、拠点に適した場所を探していた。
ここ数日、狩りをしながら彷徨うだけの生活だったが、正直このままでは心身ともに消耗してしまう。
寝るのも地面の上では体が冷えてしまうし、突然の雨にも対応できない。
ましてや、今後もっと強い獲物を狩るなら、安全に食事や休息を取れる場所は必須だ。
「さて、どこがいいか……」
適当に木陰で眠るのは簡単だが、拠点にするならもう少ししっかりした場所がいい。
条件としては
川の近くで水が確保できること
外敵に襲われにくい地形であること
薪や食料の確保がしやすいこと
ある程度のスペースがあること
これらを満たす場所を探すため、慎重に森を歩き続けた。
しばらく歩いていると、少し開けた場所に出た。
近くには川が流れており、周囲には頑丈そうな木々が生えている。
「ここなら、条件に合ってるか?」
試しに地面を踏みしめてみる。
地盤はしっかりしており、水はけもよさそうだ。
しかも、周りには適度に木々が生えていて、隠れやすい。
「よし、ここに決めるか」
とりあえず最低限の作業から始める。
拠点といっても、いきなり立派な家を作るのは難しい。
まずは簡易的なシェルターを作るところからだ。
「まずは、木を切らないとな……」
俺は手持ちの石器を使って、適当な木を切り倒すことにした。
といっても、石器の刃では一気に切るのは難しい。
そこで、細めの木を選び、傷をつけながらじわじわと削っていく。
ゴトンッ……
「……ふぅ、なんとか切れた」
適度な太さの木を何本か用意したところで、次は組み立てる作業だ。
とりあえず三角形の骨組みを作り、葉や枝で覆う簡易シェルターを作ることにする。
木を組み合わせ、ツタや樹皮で固定しながら少しずつ形を作っていく。
「……それなりに形になってきたか?」
倒れないように補強しながら、天井部分には太めの枝を渡し、
その上に大きな葉を何枚も乗せていく。
「よし、これでとりあえず雨は防げそうだな」
見た目はかなり粗末なものだが、
少なくとも雨風を防ぐには十分な簡易拠点になった。
次にやるべきことは火の確保だ。
食料を保存するためにも、温まるためにも、夜の明かりとしても必要不可欠。
前回は火起こしに失敗してしまったが、今度こそ成功させる。
俺は乾燥した木と、木の棒を準備し、再び火起こしに挑む。
棒を手のひらで挟み、ひたすらこすり合わせる。
「……っ!」
手のひらが熱くなる。
だが、ここで諦めるわけにはいかない。
何度も何度も擦り続けると、ついに煙が立ち上った。
慎重に枯れ草をくべ、息を吹きかける。
「……ついた!」
小さな火種が、やがて炎へと成長する。
「これで……ようやく火が使える」
火が使えれば、狩った肉を焼くことができる。
生食よりも安全になり、保存も効くようになるはずだ。
「まずは、狩った鳥の肉を焼いてみるか」
俺は鳥の肉を適度な大きさに切り、火の上で炙る。
ジューッと肉の表面が焼ける音が響き、脂が滴り落ちる。
「……うまそうだな」
十分に火が通ったところで、一口かじる。
「……っ! うまい!」
生で食べた時よりも臭みが消え、噛めば噛むほど旨味が広がる。
やはり、火を通した方が圧倒的に食いやすい。
「これでようやく、人間らしい生活ができるな……」
俺は満足しながら、しばらく焚き火の前で休憩した。
とはいえ、まだ拠点作りは始まったばかり。
今後、もっと住みやすい環境にするため、やるべきことは山積みだ。
「よし、次はもっとちゃんとした寝床を作るか」
そう考えながら、俺は再び立ち上がった。
ようやく拠点作りがスタート。
とりあえずのシェルターと火の確保に成功したが、
まだまだ改良の余地はありそうだ。
次回は、さらに拠点を快適にするための工夫が始まる。
お楽しみに。