第八十一話 迫る反乱の影
ヴァルガスの指導のもと、王国騎士たちは実戦的な戦い方を学び始めた。
ゼノンもヴァルガスの実力を認め、さらなる成長を目指すことを決意する。
一方、バストリア城の奥では、貴族派がゼノンを見限り、クーデターの計画を進めていた——。
バストリア城の夜は、普段と変わらず静かに更けていった。
しかし、城の一角では、不穏な空気が漂っていた。
誰もいないはずの貴族の集会場に、数人の影が集まっていた。
「……ゼノンは完全に王の側についた」
「ヴァルガスも、騎士団を鍛え上げ、王の力をさらに強めている」
「このままでは、我々の立場が危うい」
彼らはバストリア王に反感を持つ貴族たち。
ゼノンを失った今、彼らは次の一手を決めるために集まっていた。
「もはや、王と話し合う余地はない」
「今こそ、我々の手でこの国を正しい形に戻すのだ」
「だが、ゼノンとヴァルガスがいる限り、簡単には事を起こせない」
「ならば、強力な戦力を確保するしかない」
そう言って、一人の男が口元を歪めた。
「すでに傭兵団を手配している。彼らは金次第で動く。王国騎士よりも強く、躊躇なく戦う連中だ」
「……なるほど。ならば、計画を実行するのはいつにする?」
「三日後。王が城の会議室に集まる時間に、傭兵団を城内に潜入させる。そして、一気に王を討ち取る」
貴族たちは静かに頷いた。
反乱の火種は、着実に燃え広がろうとしていた。
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翌朝。
ヴァルガスは訓練場で騎士たちを指導していたが、ふと何か違和感を覚えた。
(……城内が、妙に静かだ)
王城の警備は厳重だが、今日に限って見慣れぬ兵士たちの姿が目立つ。
見たことのない顔が増えているように感じる。
「おい、お前ら」
ヴァルガスは巡回している王国兵に声をかけた。
「最近、城の警備兵に新入りが増えたのか?」
「は? いえ、そんな報告は……」
王国兵が答えようとしたその時——
「ヴァルガス!」
ミリアが慌てた様子で駆け寄ってきた。
「どうした?」
「城の台所の使用人が、妙な話をしていました。貴族の一部が、密かに何かを企んでいるようだと……」
「……やっぱりな」
ヴァルガスは低く唸る。
「ここ数日、貴族派の動きが不穏だった。あいつら、何かを仕掛けるつもりだ」
ゼノンもその話を聞き、険しい表情を浮かべる。
「つまり、クーデターの可能性があるということか」
「そうだな……」
ヴァルガスは城内の様子を改めて見渡す。
(この静けさ……明らかに、何かが起こる前触れだ)
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ミリアはすぐに城内の使用人たちに話を聞き、情報を集め始めた。
「貴族派の人たち、最近よく会議室で話をしていました……」
「王が次の会議を開くのは、三日後です」
「もしかして……」
ミリアは顔を上げ、ヴァルガスとゼノンを見た。
「貴族派が動くのは、三日後の王の会議のときかもしれません」
ヴァルガスは腕を組んで考え込む。
「……もしそうなら、会議の場に傭兵団を潜入させ、王を討つつもりだな」
ゼノンはすぐに王の元へ報告しようとするが、ヴァルガスはそれを制した。
「まだ決定的な証拠がない。下手に動けば、こちらの警戒がバレるだけだ」
「しかし、このままでは……」
「だからこそ、こちらも準備する」
ヴァルガスは剣を握りしめた。
「三日後、奴らが動くなら、こっちも動いてやる」
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貴族派の密会。
「三日後にすべてが決まる」
「傭兵団の準備は?」
「すでに城内に数名を潜入させている。あとは決行の時を待つのみ」
「ゼノンとヴァルガスが邪魔になるかもしれん」
「奴らの動き次第では、先に排除する必要がある」
「それでいい……王を討てば、この国は我々のものだ」
貴族派の男たちは笑みを浮かべた。
しかし、彼らはまだ気づいていなかった。
すでに、ヴァルガスとゼノンが彼らの動きを察知し、迎え撃つ準備を進めていることを——。
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貴族派は、三日後の王の会議の場でクーデターを決行しようと企んでいた。
しかし、ヴァルガスとゼノンは異変を察知し、密かに準備を始める。
一方、ミリアも情報を集め、貴族派の計画を予測する。
静かに迫る戦いの足音——次回、クーデター勃発!




