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第八十話 騎士の覚醒

アレンはヴォイド・リーヴァーの力を制御するため、リューディスでの瞑想に入った。

ユイが彼を支えながら、アレンは苦悶の中で力と向き合う。

一方、バストリア城では、ヴァルガスが王国騎士たちの修行を指導していた。

王国の戦力強化のため、ヴァルガスは騎士たちに"実戦で使える力"を教えていく——。

バストリア城の訓練場には、朝から鋭い剣戟が響いていた。


陽の光が照りつける中、王国騎士たちは額に汗を浮かべながら、ヴァルガスの指導のもと、剣を振るい続けていた。


「もっと重心を低くしろ! 敵の攻撃を受けたとき、力任せに耐えるんじゃねぇ、流せ!」


挿絵(By みてみん)


ヴァルガスの声が響く。


騎士たちは、普段の訓練とは違う、より実戦的な動きを求められ、必死についていこうとする。


「ヴァルガス殿、しかし……私たちは正統な剣技を——」


「それが通じる相手ならいいが、通じねぇ敵もいるんだよ!」


ヴァルガスは腕を組み、騎士たちを見回した。


「お前ら、貴族派の傭兵どもが、型通りの戦いをすると思うか?」


その言葉に、騎士たちは息をのんだ。


「剣技だけじゃねぇ、蹴りでも、頭突きでも、なんでも使え。戦場で生き残るために必要なもんを、今から覚えろ」


---


訓練場の隅では、ゼノンが腕を組みながらヴァルガスの指導を見つめていた。


「……なかなか面白い指導だな」


彼は、騎士たちの動きが変わっていくのを感じていた。


今までは、剣技に固執しすぎていた騎士たち。

だが、ヴァルガスの訓練を受けることで、柔軟な戦い方を覚え始めている。


「俺たちは、騎士としての誇りを持つが……生き残れなければ意味がない」


ゼノンは静かに呟いた。


「ヴァルガス、お前はすでに"戦場の戦士"だな」


---


ヴァルガスの訓練は過酷だった。


動きが鈍くなった者には、遠慮なく容赦ない攻撃を仕掛ける。

疲労が蓄積する中、騎士たちは次第に動きが鈍くなっていった。


そんな中、ミリアは騎士たちの体調を細かく見ていた。


「無理をしすぎないで。ちゃんと水分を取って」


ミリアの的確なサポートにより、騎士たちは限界を超えず、集中力を維持することができた。


「ヴァルガスの指導もいいけど、あんたもいい補佐役になってるな」


ゼノンがミリアにそう言うと、彼女は少し微笑んだ。


挿絵(By みてみん)


「私は戦えないけど、少しでも助けになれば」


「十分だよ。戦場では、後方支援がどれだけ大切か、俺はよく知ってる」


ゼノンは静かに呟いた。


---


夕暮れが近づくころ、騎士たちはぐったりと地面に座り込んでいた。


「……す、すごい……こんな訓練、初めてです……」


「ヴァルガス殿……これが、実戦の力……」


彼らの眼には、確かな変化があった。


ヴァルガスは、騎士たちを見渡しながら言った。


「お前ら、今日の動きを忘れるな。型に縛られず、状況に応じて戦え」


「はい……!」


騎士たちの返事は、最初の頃とは違っていた。


そして、ゼノンもまた、ヴァルガスに向かって一歩進み出た。


「ヴァルガス、お前の指導は素晴らしい。俺も、教えを受けたい」


「へぇ……お前ほどの奴がか?」


ヴァルガスは少し驚いたように目を細めた。


ゼノンは真剣な表情で頷く。


「お前から学ぶべきことは多い。俺も、まだ成長しなければならない」


ヴァルガスは口元を少し上げ、剣を肩に担いだ。


「いいぜ。お前が本気ならな」


---


訓練が終わり、城の中庭で騎士たちが休息をとる中——


「……そろそろ、動くぞ」


城の奥深くで、貴族派の密談が行われていた。


「あの男を消し、城を我々のものにする」


彼らの計画が、静かに進行していた——。


---

ヴァルガスの訓練によって、騎士たちは実戦向きの戦い方を学び始めた。

ゼノンもまた、ヴァルガスを認め、さらなる成長を目指す。

一方、貴族派はゼノンを見限り、クーデターの準備を進める。

王城に迫る不穏な空気が、ついに動き出す——。

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