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第五十八話 天籟の森の探索

アレンはヴァルガスを救うため、最強の騎士アルデンを倒す力を手に入れる必要があった。

そのため、ギルドの最難関依頼「バロッグ・タイラント討伐」を単独で受け、天籟の森へ向かう。

しかし、時間は限られている——。

アレンはバストリアの街を抜けると、すぐさま天籟の森(てんらいのもり)へ向かって全力で走り出した。


「……時間がない」


ヴァルガスの処刑まで、残された時間は二日。

それまでにバロッグ・タイラントを見つけ、倒し、喰う必要がある。

しかし、バストリアには軽装で来たため、いつも使っている血抜き槍は持っていなかった。


「まあ……やるしかないか」


アレンは息を整え、さらに速度を上げた。

鍛え上げられた身体は、今や異常なまでの持久力と脚力を誇る。

森に到達するまで、歩みを緩めるつもりはなかった。


---


天籟の森に着いたのは、バストリアを出発してからわずか二時間後だった。


「……あっという間に着いたな」


しかし、ここからが本番だ。

バロッグ・タイラントを見つけ出し、戦わなければならない。


アレンは森の中へ足を踏み入れた。


天籟の森は、その名の通り、静寂に包まれていた。

風が木々を揺らし、葉擦れの音が微かに響く。

しかし、そこには人の気配も、魔獣の気配すら感じられない。


「……どこにいる?」


アレンは耳を澄ませた。

獣の息遣い、枝を折る音、足音……何かしらの痕跡があるはずだった。


しかし、森は異常なまでに静かだった。


「まるで……何かに怯えているようだな」


ここは、バロッグ・タイラントの縄張りだ。

他の魔物が消えているのは、奴がすべてを支配しているからかもしれない。


「だが、どうやって見つける……?」


アレンは森を歩きながら、地面を確認した。


獣の足跡、折れた木々、大型生物が通った痕跡……

何かがあれば、それを追うことができる。


しかし、しばらく探しても、バロッグ・タイラントの痕跡は見つからなかった。


「……くそ、どこにいるんだ」


時間だけが過ぎていく。


ヴァルガスの処刑まで、あと二日。

今夜中に見つけられなければ、時間が足りなくなる。


焦りが募る。


「まずは、森を一通り歩いてみるか……」


アレンは慎重に、しかし確実に森を進んでいった。


---


夜になっても、バロッグ・タイラントの気配は掴めなかった。


焚き火をつけるわけにもいかず、アレンは木の陰に身を潜め、じっと夜の森を観察した。


「……いるはずなんだがな」


ここはバロッグ・タイラントの縄張りのはずだ。

しかし、それらしき巨体の影も、足音も、獣の鳴き声すら聞こえない。


「まさか、本当にいない……?」


そんなはずはない。

依頼が出された以上、バロッグ・タイラントは確かにこの森にいるはずだ。


しかし、それらしき痕跡が一切ないというのは、不自然すぎる。


「もしかして、隠れているのか……?」


それとも——


「俺の存在を察知して、動きを止めている……?」


そう考えると、森の静寂が異様なものに感じられた。


この森にいるのは、アレンだけではない。

どこかで、バロッグ・タイラントがこちらを見ているかもしれない。


「……明日になったら、もう少し積極的に探すか」


アレンは一度目を閉じ、短い休息を取ることにした。


明日になれば、残された時間はあと一日。

バロッグ・タイラントを見つけられなければ、すべてが終わる。


---

アレンは天籟の森へ到着したものの、バロッグ・タイラントの姿はどこにもなかった。

この静寂は、何を意味しているのか——。

そして、処刑まで残された時間は、あとわずか。

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