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第五十五話 バストリアへ

アレンたちの生活は安定し、食料にも困らなくなった。

しかし、日々の食事を重ねるうちに、アレンはあるものの不足を感じるようになる。

それを求めて、アレンは久しぶりにバストリアへ向かう決意をする——。

焚き火の上で、肉がじゅうじゅうと焼ける音が響いていた。

アレンは串に刺した獣の肉をひっくり返しながら、静かに考え込む。


「……やっぱり、塩が欲しいな」


この村での生活が軌道に乗ってからしばらく経つ。

フェンが加わったことで狩りの効率も上がり、獣の肉には困らなくなった。

ミリアの知識を活かして、キノコや山菜などの食材も増え、

食事のバリエーションも多少は広がってきた。


しかし——


「味が単調なんだよな」


アレンは串を持ち上げ、焼けた肉をかじる。

もちろん、獲れたての肉は十分に美味い。

だが、それでも長く食べ続けていると、どうしても飽きが来る。


「……なにか欲しいよね」


ユイが焚き火を見つめながら、ぽつりと呟いた。


「せっかくいろんな食材があるのに、調味料がないから、全部同じ味になっちゃう」


「それは分かるわね。塩があれば、味の幅が広がるのに」


ミリアも同意するように頷いた。


アレンは薪をくべながら、ゆっくりと息を吐く。


「そろそろバストリアに行ってみるか」


ユイとミリアが驚いたように顔を上げる。


「えっ? でも、バストリアって……」


「大丈夫なの?」


二人の不安そうな表情を見ながら、アレンは軽く頷いた。


「俺一人なら問題ないだろう。様子を見つつ、必要なものを手に入れてくるだけだ」


「でも……」


ユイは心配そうにアレンの顔を覗き込む。


彼女にとってバストリアは、決して良い思い出のある場所ではない。

それはミリアも同じだった。


「私たちも行く?」


ミリアが提案するが、アレンは首を振る。


「お前たちはここに残れ。フェンがいれば問題ないだろう」


フェンはアレンの言葉を聞くと、堂々とした様子で尻尾を振る。

すでに成獣サイズにまで成長し、戦闘力も申し分ない。

村を守るには十分な存在になっていた。


「でも……アレン、一人で大丈夫?」


ユイが不安そうにフェンの頭を撫でた。


「問題ないさ。街の様子を探るだけだし、必要なものを買うだけだからな」


アレンは腰にナイフを差し、軽装の準備を整える。


「すぐに戻る。何かあったらフェンが守ってくれる」


フェンは静かにユイとミリアのそばに座る。

その堂々とした姿は、まるで村の番犬のようだった。


「……分かった。気をつけてね」


ユイが不安そうに見送る。


「何かあったら、すぐに戻ってきてね」


ミリアも念を押すように言った。


アレンは軽く手を上げ、村を後にした。


---


アレンは森の中を軽やかに駆け抜けた。


以前、ユイとミリアを抱えて走ったときは一日以上かかった道のり。

しかし、今回はアレン一人だ。


「半日もあれば、十分だな」


獣人の肉を喰らい、その能力を取り込んできたアレンは、

筋力だけでなく持久力、跳躍力、敏捷性までも強化されている。

特にデュランス・ウルフを喰らったことで、彼の脚力は格段に向上していた。


以前は荷物の重さと人を運ぶ負荷があったため、一日以上を要したが、

今は全力で駆けることができる。


昼頃には、遠くにバストリアの城壁が見えてきた。


「さて、どうするか」


城門には見張りが立っている。

正面から入るのは、時間がかかるし、無駄に目立つ。


それに、バストリアの警備は以前よりも厳しくなっていた。

ミリア救出の際、貴族の屋敷に侵入し、衛兵を倒し、大きな騒ぎを起こした影響で

街全体の警備が強化されているのだろう。


「ま、普通に越えればいいか」


アレンは軽く息を整え、足に力を込めた。


次の瞬間——


彼の身体は地面を蹴り、一直線に城壁へ向かって跳躍する。


「……っ!」


壁に足をつけたまま、素早く駆け上がる。


城壁の上には数人の警備兵がいたが、

彼らがアレンの気配に気づく前に、彼は静かに壁を越え、

影の中へと消えていった。


「楽勝だな」


アレンは物陰から街の様子をうかがう。


バストリアの街は、以前と大きく変わっていないように見えた。

活気のある市場、行き交う人々——。

しかし、よく見ると、以前よりも警備が厳しくなっている。


「……何かあったのか?」


アレンは警備の動きを観察しながら、

市場へ向かうために人混みへと紛れ込んだ。


「調味料を手に入れたら、すぐに戻るか……」


街に長居するつもりはない。

しかし、この街の変化が何を意味しているのか——

それを確かめずに帰るのは、少し気がかりだった。


---

食料に困らなくなったアレンたちだが、調味料の必要性を感じるようになった。

そこで、アレンは一人でバストリアへ向かうことを決意する。

しかし、街は以前とは違う雰囲気に包まれていた——。

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