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第五十一話 廃村の暮らし、整う

アレンたちは身を隠すために廃村に拠点を構えた。

少しずつ環境を整えながら、新たな生活を始める。

安全な場所を確保したことで、彼らの暮らしにも変化が訪れる。

教会の外には、穏やかな風が吹いていた。


アレンたちがこの村に身を寄せてから、数日が経過していた。

住み始めた頃はまだ不便が多かったが、少しずつ環境を整えていくことで、快適に暮らせるようになってきた。


「水を引いたおかげで、随分便利になったわね」


ミリアが満足そうに言いながら、木桶に汲んだ水を見つめる。

アレンが近くの小川から水を引き、教会の裏に簡易の貯水場を作ったことで、日々の生活が格段に楽になった。


「井戸も使えるようになったし、もう水の心配はしなくていいな」


アレンは井戸の中を覗き込みながら頷いた。

しばらく放置されていたせいで傷んでいたが、修理することで再び水を汲み上げられるようになった。


「本当に助かるね。これがなかったら、毎回川まで行かないといけなかったし……」


ユイが嬉しそうに笑い、冷たい水を手ですくって顔を洗う。


「あと一つ、重要なものができたぞ」


アレンがそう言うと、ユイとミリアは顔を上げた。


「もしかして……?」


「風呂だ」


---


「うそ……本当に?」


ミリアが驚いた顔で目の前の湯船を見つめる。

アレンが廃材を集めて作った簡易の浴槽が、岩場の一角に設置されていた。

火を焚いて湯を温めることで、しっかりとした風呂として機能するようになっていた。


「すごい……お湯がちゃんとある……」


ユイは興奮気味に手を伸ばし、そっと湯に触れた。

指先から伝わる温もりに、思わず頬が緩む。


「ずっと冷たい水で体を拭くだけだったから、こんなに温かいのは久しぶり……」


ミリアもそっと手を湯に浸し、感動したように微笑む。


「長く入りすぎるなよ」


アレンが背を向けながら言うと、ミリアがくすりと笑った。


「覗かないでね?」


「当たり前だろ」


---


「はぁぁ……」


湯船に浸かると、ユイは体の力を抜いて、心地よさそうにため息を漏らした。


「すごく温かい……」


ミリアも肩まで湯に浸かり、目を閉じる。


「ずっと冷たい水で体を拭くだけだったから……こうして温かいお湯に浸かれるなんて、本当にありがたいわね」


ユイはぼんやりと湯の表面を見つめながら、静かに呟いた。


「これだけで、すごく幸せ」


「本当ね……」


ミリアは微笑みながら、ゆっくりと湯の中で指を動かした。

旅をしていた時は、体を拭くだけの簡易な清潔維持しかできなかった。

それが今では、こうしてお湯に浸かることができる。


戦いばかりの日々から解放され、"普通の暮らし"をしている実感が湧いてくる。


---


風呂から上がった後、アレンたちは夕食の準備に取り掛かる。


「これ、食べられるの?」


ユイが手にしたのは、小ぶりなキノコだった。


「ええ、大丈夫よ。ちゃんと見分ければ、安全に食べられるわ」


ミリアがそう言いながら、山菜やキノコを並べる。

森を探索して食べられるものを集めたことで、食料の幅が広がった。


アレンが獲った獣の肉や魚と合わせて、夕食の準備が整っていく。


「こんなにいろんなものが食べられるなんて……」


ユイは目を輝かせながら、火にかけた魚をじっと見つめる。

じゅうっと脂が焼ける音と香ばしい匂いが漂い、胃が鳴る音が聞こえた。


「ふふ、私もお腹すいたわ」


ミリアが笑いながら串をひっくり返す。


やがて、焼き上がった魚を手に取り、一口かじると、ユイの顔がぱっと明るくなった。


「んっ……おいしい!」


ミリアも口に運び、満足そうに頷く。


アレンも黙って食べながら、二人の様子を眺める。

この村での生活は、少しずつ形になりつつあった。


「なんか……本当に"暮らしてる"って感じがする」


ユイがふと呟く。


「そうね。やっと、落ち着ける場所ができたのかもしれないわ」


アレンは焚き火を見つめながら、静かに息を吐いた。

戦いの日々を抜け、今は"自由に暮らす"という感覚がそこにある。


この村での生活は、少しずつ快適になってきていた。


---

アレンたちは、より快適な暮らしを手に入れつつあります。

水の確保、風呂の設置、保存食の作成……日々の生活が安定した。

戦いから離れた穏やかな時間が、どれほど大切なものなのか——。

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