四十五話 夜明け前の潜入
ミリア救出のため、アレンとユイはバストリアへと向かう。
しかし、正面から堂々と入るわけにはいかない。
アレンは驚くべき手段で、城壁を越えようとする――。
朝靄のかかるバストリアが見えてきた。
巨大な城壁に囲まれた都市。
「……どうやって入るの?」
ユイが不安そうに囁く。
「正面から入るのは無理だな」
アレンはそう言うと、城壁を見上げた。
「じゃあ、どうするの……?」
「登る」
「は?」
ユイが目を丸くする間もなく、アレンは地面を強く蹴った。
「えっ!? うそっ!」
ユイを背負ったまま、アレンの身体は一気に宙を舞う。
跳躍力が異常なまでに高い。
まるで鳥のように、高く、高く――。
「ひゃああああっ!!」
ユイが悲鳴を上げる。
「まだだ」
壁に手をかけると、今度は超人的な握力で城壁を掴んだ。
ゴリリッと音を立てて石壁に指が食い込む。
「な、な、なに……!?」
ユイが信じられないとばかりに震える。
アレンはそのまま、腕力だけでよじ登り始めた。
「ちょ、ちょっと!? これ、普通じゃない……!!」
「……落ちるなよ」
「落ちたら死ぬぅぅ!!」
ユイの叫びを無視しながら、アレンは冷静に城壁を登り切る。
頂上に到達すると、周囲を確認し、慎重に地面へと降り立った。
「……お、おかしい……」
ユイの目はぐるぐると回っていた。
どうやら気を失いかけている。
「おい、大丈夫か」
「……無理……」
「しっかりしろ。ミリアを助けに来たんだろ」
「そ、そう……だ、よね……」
ユイはなんとか意識を取り戻し、必死に呼吸を整える。
「案内しろ。ミリアのいる屋敷へ」
「う、うん……」
ユイはまだ足が震えていたが、それでもしっかりと屋敷の方向を指し示した。
アレンは静かに頷き、その方向へと進む。
ーーー
バストリアの貴族街に入る。
屋敷の前で足を止めたユイが、小刻みに震え始める。
「……ここだよ……」
夜の静寂の中、屋敷の黒い鉄門が鈍い光を放つ。
アレンはそんなユイの肩にそっと手を置いた。
「大丈夫だ。もうお前は捕まらない」
「……でも……」
「俺がついてる。信じろ」
ユイは不安そうな顔をしながらも、アレンの言葉に少しだけ力を得たようだった。
「うん……」
アレンは屋敷を見上げ、静かに言った。
「じゃあ、入るぞ」
屋敷の中へ――。
ついにバストリアへの潜入が成功!
そして、いよいよミリアの救出が始まる。
果たして、無事に助け出せるのか――!?




