四十話 森で出会った少女
アレンは日銭を稼ぐため、討伐依頼を受けた。
だが、その道中で、思わぬ人物と遭遇することに——
「さて……どうしたものか」
ギルドの片隅、アレンは椅子に腰掛け、考え込んでいた。
バロッグ・ナイトとデュランス・ウルフの素材はギルドに預けた。
貴族経由での取引となるため、すぐには換金できない。
「つまり、手元に金がない、と……」
ヴァルガスはギルドマスターと話し込んでいる。
よほど重要な話なのだろうが、アレンが口を挟むようなものではない。
「仕方ない、少し稼ぎに行くか」
掲示板に目を向けると、ちょうど良さそうな依頼があった。
「ファングウルフの討伐……Cランクか」
特に危険な相手ではない。
素材も手に入るし、軽く体を動かすにはちょうどいい。
アレンは依頼書を受付嬢に渡した。
「この依頼を受けます」
「登録しました。お気をつけて」
「ありがとうございます」
こうして、アレンは森へ向かった。
***
夜の森は静かだった。
以前なら、この暗闇に怯えただろう。
けれど今は違う。
「むしろ、視界が効かないほうが気配を感じやすい」
ファングウルフは群れで行動することが多い。
どこかに巣があるはずだが——
「……ん?」
遠くで枝が折れる音がした。
耳を澄ませると、小さな足音がこちらへ向かってくる。
次の瞬間、木々の間から、一人の少女が飛び出してきた。
「た、助けて……!」
その背後には、数匹のファングウルフが迫っていた。
「なんでこんなところに!?」
アレンは驚きながらも、すぐに槍を構えた。
「下がっててください」
少女を庇い、獣たちを迎え撃つ。
ファングウルフが鋭い牙をむき出しにしながら飛びかかってきた。
アレンは冷静に見極める。
攻撃のタイミング——
「……遅い」
瞬時に槍を突き出し、狼の喉元を貫く。
「一匹」
槍の無数の穴から血が流れ出し、狼はもがきながら絶命した。
残る二匹が警戒しつつも、挟み込むように左右から襲いかかる。
「そう来るか」
アレンは地面を蹴り、一気に跳躍!
敵の攻撃をかわし、空中から急降下する。
「そこだ!」
ドンッ!!
二匹目の頭頂部に槍を突き刺す。
「二匹」
最後の一匹は動揺し、足を引きずるように後退した。
「……さて、どうする?」
アレンが一歩踏み出すと、ファングウルフは怯えたように唸り——
次の瞬間、逃げ出した。
「……賢いな」
アレンは槍を振り払い、少女のほうを振り返る。
「大丈夫ですか?」
「あ……あ……」
少女は地面に座り込んだまま、アレンを見上げていた。
「どこか怪我は?」
「あ、いえ……」
「なら良かった」
アレンは微笑み、手を差し出す。
少女は戸惑いながらも、その手を取った。
「……助けてくださって、本当にありがとうございます!」
深々と頭を下げる彼女に、アレンは首を傾げる。
「いえ、それはいいんですが……」
真剣な表情になり、少女を見つめた。
「どうして、こんな危険な森に?」
「それは……」
少女は俯き、何かを言い淀んだ。
アレンは首を傾げる。
「ですが、ここは危険です。まずは安全な場所へ移動しましょう」
「……はい」
少女は小さく頷いた。
アレンは彼女を連れて、森を後にした。
突然出会った少女。彼女の正体とは——?
次回、お楽しみに!




