三十八話 初めての依頼と金
ギルドへ登録したアレンは、さっそくEランクの依頼を受けることに。
初めての報酬を手にして、少しずつこの世界の仕組みを知っていく——。
「なるほど……これがギルドの依頼か」
ギルドの掲示板には、さまざまな依頼が貼られていた。
討伐依頼、採取依頼、護衛依頼——。
しかし、アレンが受けられるのはEランク以下の依頼に限られる。
「ヴァルガスさん、どれがいいと思います?」
「最初は簡単なものにしておけ。あまり張り切りすぎるなよ」
「……じゃあ、これにします」
アレンが選んだのは「ファングウルフの討伐依頼」だった。
森に生息する小型の狼型モンスターを三体倒せば完了だという。
「まあ、妥当なところだな」
ヴァルガスも納得したようで、アレンはギルドの受付へ向かった。
「この依頼を受けたいんですけど」
受付嬢に依頼書を差し出すと、彼女は軽く頷いた。
「はい、登録しました。気をつけて行ってくださいね」
「ありがとうございます!」
こうしてアレンの初仕事が始まった。
◆◆◆
依頼はあっさり終わった。
ファングウルフはバロッグ・ナイトやデュランス・ウルフに比べれば、驚くほど弱かった。
血抜き槍を一本刺せば、すぐに絶命するほどだった。
「……これは楽勝すぎるな」
アレンは三体のファングウルフを討伐し、その素材を持ち帰った。
◆◆◆
「討伐完了しました!」
ギルドに戻ると、アレンは受付へ報告した。
「確認しました。では、報酬はこちらになります」
渡されたのは小袋に入った銀貨数枚。
「おおっ……!これが、この世界の金か……」
アレンは感動しながら小袋を受け取る。
「それと、討伐したモンスターの素材ですが、換金所で売ることもできますよ」
「えっ、そうなんですか?」
受付嬢の言葉に、ヴァルガスが笑った。
「何も知らないんだな。モンスターの毛皮や牙、爪なんかは素材として売れるんだ」
「なるほど……それは助かります!」
アレンはさっそくギルド内にある換金所へ向かった。
◆◆◆
換金所には、ギルドの職員らしき女性がいた。
「換金をお願いしたいんですが」
アレンがファングウルフの毛皮と牙を差し出すと、女性は手際よく計算を始めた。
「では、こちらの金額になります」
渡されたのは、先ほどの報酬と合わせてさらに銀貨数枚。
「おおっ……!」
アレンは、銀貨を手のひらで転がしながら、感動を噛みしめた。
「これでようやく飯が食えます!」
ヴァルガスは肩をすくめながら笑った。
「まるで子供みたいなやつだな」
「だって、この世界に来てから、まともな料理を食べたことがないんですよ!」
アレンは満面の笑みで銀貨を握りしめた。
すると——。
「他にも換金したいものがあるんですが」
アレンはリュックの中を探りながら言った。
「これ、売れますか?」
そう言って取り出したのは——。
バロッグ・ナイトの牙と骨、デュランス・ウルフの爪だった。
それを見た瞬間、換金所の女性は目を見開いた。
「こ、これは……」
彼女は慌てて奥へと消えた。
数分後——。
「ギルドマスターが、お話ししたいそうです」
「……え?」
アレンは思わず首を傾げた。
何か、マズいことをしてしまったのだろうか?
アレン、ついに初めての報酬を手に入れる!
しかし、彼が換金所へ持ち込んだ素材は、とんでもないものだった……!




