三十七話 初めての都市と初めてのギルド
アレンとヴァルガスはついに街へと足を踏み入れる。
しかし、アレンには大きな問題があった。
それは——
「うわぁ……」
アレンは街に入った瞬間、目を輝かせた。
道端には商人たちが露店を構え、焼きたてのパンや香ばしい肉の串焼きを売っている。
店の奥からは、スパイスの効いた香りが立ち込め、空腹を誘う。
「……メシ、食いてぇ……」
思わずヨダレを垂らしそうになったが、そこである重大なことに気付く。
「……金がない」
これまで、アレンは森で自給自足の生活をしてきた。
金なんて概念を意識することすらなかったが、街ではそうはいかない。
「ヴァルガスさん……」
「ん?」
「俺、何も買えません……」
ヴァルガスはため息をつきながら苦笑した。
「そうなるだろうな。なら、ギルドへ行くぞ」
「ギルド……!」
アレンは期待に胸を膨らませた。
冒険者ギルドといえば、異世界モノの定番。
登録すれば、クエストを受けて金を稼ぐことができるはずだ。
「ギルドに登録すれば、仕事がもらえる。金が欲しいなら、まずそこからだ」
ヴァルガスに導かれ、アレンは街の中心部へと向かった。
◆◆◆
ギルドは石造りの堂々とした建物だった。
中へ入ると、すでに多くの冒険者たちが集まっていた。
大柄な戦士、ローブを纏った魔術師、細身の盗賊風の男——。
「おお……」
アレンは無意識に口元が緩む。
ゲームや小説でよく見た光景そのままだった。
「おい、あんたたち!」
受付の女性が鋭い声を上げた。
「ギルドの仕事か?」
ヴァルガスは頷きながら、受付へと歩み寄った。
「俺はヴァルガス。昔、ここで登録されていたはずだが……」
女性は眉をひそめた。
「ヴァルガス……?ちょっと待って」
奥へと消え、数分後——。
「ギルドマスターが話がしたいそうよ」
「ギルドマスター?」
「さっき門で会ったろ」
ヴァルガスが軽く笑った。
「ああ、あの人か」
アレンが頷くと、案内され、ギルドマスターの部屋へと通された。
◆◆◆
「ほう、ギルドに戻る気になったか?」
ギルドマスターは腕を組んでヴァルガスを見た。
「まぁな。ただ、まずはこいつの登録を頼みたい」
ヴァルガスがアレンを指差す。
「ほう、お前も冒険者になるのか?」
ギルドマスターの視線がアレンに向けられた。
「はい。お金がないので、仕事をしたいです」
ギルドマスターはアレンをじっと見つめた後、ニヤリと笑った。
「よし、登録しよう。だが、初めての依頼は簡単なものにしろよ?」
「はい、わかりました」
アレンは素直に頷いた。
「それじゃあ、登録手続きをする。身分証はないだろうから、基本情報を聞くぞ」
ギルドマスターの言葉に頷き、アレンは答えていく。
「名前は?」
「アレンです」
「年齢は?」
「……二十六です」
「武器は?」
「槍ですね。あと、まあ……素手も」
「素手?」
ギルドマスターが興味深そうに眉を上げた。
「どんな戦い方をするんだ?」
「……ええと……力で、押し切る感じです」
「ほう……まあ、それは実際に見せてもらうことにしよう」
そう言いながら、ギルドマスターは手続きを進める。
そして——。
「よし、登録完了だ。これでお前もギルドの一員だ」
ギルドマスターが一枚のプレートを渡してきた。
「ギルドカードか……」
異世界モノではおなじみのアイテムだ。
アレンは思わず感動した。
「これで依頼を受けられる。ただし、初めての依頼はランクE以下のものだけだ」
「わかりました!」
アレンは意気揚々と受付へ向かう。
「おい、気負いすぎるなよ」
ヴァルガスが呆れたように後ろから声をかけた。
「とにかく、まずは仕事を見つけないとな」
アレンの新たな生活が始まる。
次回へ続く。
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アレン、ついにギルド登録!
この世界で初めての仕事に挑む!




