三十四話 獣を喰らう者
デュランス・ウルフとの死闘を制したアレン。しかし、彼のさらなる進化をヴァルガスは目の当たりにすることとなる——。
「ま、まさか……」
ヴァルガスは目の前の光景に、思わず息を呑んだ。
地面に横たわるのは、圧倒的な強さを誇っていたはずのデュランス・ウルフの死骸。
その傍らに立つアレンは、息を整えながらも、すでに次の行動へと移っていた。
彼は迷いなく、デュランス・ウルフの肉を掴み取ると、そのまま口へ運んだ。
「っ……!?」
ヴァルガスの顔が引きつる。
「お、おい……本気で食べるのか?」
アレンは淡々と咀嚼し、血の滴る肉を飲み込む。
口の端に滲む赤い筋が、彼の異様さをより際立たせた。
「……やっぱり」
アレンは静かに呟いた。
ヴァルガスが警戒しながら言葉を発する。
「やっぱり……何が?」
「身体の感覚が変わってきています。デュランス・ウルフを喰ったことで、どうやら跳躍力が上がったようです」
「跳躍力……?」
アレンは試すように軽く屈み込むと、次の瞬間、まるで重力を無視するように地面を蹴った。
「っ!? ……嘘だろ……」
ヴァルガスは、驚愕の表情でアレンを見上げることとなった。
アレンの体は、尋常ではない高さまで跳び上がり、軽々と近くの倒木の上に着地していた。
「……これは、すごいですね」
アレン自身も、自分の体の変化に驚いているようだった。
「信じられない……そんな馬鹿な……!」
ヴァルガスは動揺を隠せないまま、アレンの驚異的な身体能力を目の当たりにし、ただ愕然とするしかなかった。
「この能力があれば……次の戦いが、少し楽になりそうです」
アレンはそう言って、デュランス・ウルフの死骸を処理し始めた。
肉は食料に、毛皮は防寒具として使えそうだ。
ヴァルガスは呆然としながらも、アレンの背中を見つめていた。
「お前……本当に何者なんだ……」
アレンは少し微笑みながら、ヴァルガスを振り返った。
「ただの旅人ですよ。少し……この世界に適応しているだけの」
その瞳は、鋭く、そしてどこか楽しげでもあった。
次回へ続く。
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デュランス・ウルフを喰らったことで、跳躍力を大幅に得たアレン!
ヴァルガスは、彼の異常な進化にただ驚愕するばかり……
次なる戦いに、この力はどう活かされるのか!?




