第三十話 目覚めた戦士
森を抜けたアレンは、誰もいない廃村にたどり着く。
そこで教会の中に封印された棺を発見。
開けると、中には鎧をまとった男が眠っていた。
——そして、その男のまぶたが開く——
「……ッ!」
棺の中の男が、ゆっくりと目を開いた。
青白い肌。
長く伸びた髪。
そして、鎧の隙間から覗く傷だらけの体。
まるで、ずっと時が止まっていたかのような男が、
静かにこちらを見ていた。
「……お前は……」
乾いた声が漏れる。
それは、長い間誰とも話していなかったことを
物語っていた。
俺は思わず後ずさる。
だが、男はゆっくりと体を起こし、
ぎこちない動作で棺の縁に手をついた。
「……ここは……」
「教会……の中だ」
警戒しつつも、俺は答えた。
男はしばらく沈黙し、
やがて、低く息を吐いた。
「そうか……封印が解けたのか……」
「お前、誰だ?」
俺の問いに、男はゆっくりと顔を上げた。
「……ヴァルガス」
静かに名乗ると、
彼は鎧に手を添え、少し眉を寄せた。
「……俺は……ここで、眠っていたのか……?」
「そうみたいだな。
封印でもされていたのか?」
俺がそう言うと、
ヴァルガスはゆっくりと棺の中を見回した。
「……ああ、確かに……」
そして、札や縄の跡を見て、
どこか懐かしげに呟いた。
「……思い出した。
俺は、村を襲った化け物と戦い……
そして……」
ヴァルガスの視線が遠くを彷徨う。
やがて、口を開いた。
「……俺はかつて、この村を救うために戦った戦士だ」
「戦士……?」
「ああ。
この村には、ある日突然、
強力なモンスターが現れた。
俺は討伐のためにここへ来たが——
相手の力は……あまりにも強かった」
ヴァルガスの拳が震える。
「村は壊滅し、
俺も瀕死になった……」
「……それで?」
「俺を救ったのは……この村の神官だった」
ヴァルガスは教会の祭壇へ視線を向ける。
「神官は、自分の命と引き換えに、
俺を救うための結界を張り、
封印術を施した……」
「……」
「『いつか、また……この村を復興させてくれ』
それが、神官の最後の言葉だった」
ヴァルガスは静かに拳を握る。
俺は、教会の内部を見回した。
「……じゃあ、お前は……
ずっとこの中で眠っていたのか?」
「ああ……そうなるな」
ヴァルガスは肩を回しながら、
ゆっくりと棺の外へ足を下ろした。
長い眠りから目覚めた戦士。
だが、彼が目を覚ましたこの村には——
人はもう、誰もいなかった。
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封印から目覚めた戦士ヴァルガス。
かつて彼が戦ったモンスターとは何だったのか?
そして、彼はこの廃村で何をするのか——!?
次回、新たな展開へ!




