第二十九話 廃村と封印された棺
森を抜けるために歩き続けるアレン。
ついに森の終わりが見え、廃村にたどり着いた。
そこには、何年も放置された建物が並び、
何かに荒らされた痕跡も残っていた——
「……村か?」
鬱蒼とした森の木々が途切れ、
突然、開けた場所に出た。
そこには、古びた建物が並ぶ村があった。
だが、人の気配はない。
「……誰も住んでいないのか?」
ゆっくりと歩きながら周囲を見渡す。
家々の扉は半壊し、
屋根も崩れているところが多い。
長い間放置されていたのは明らかだった。
「……廃村ってやつか」
地面には、ところどころ
何かに引っ掻かれたような跡が残っている。
爪痕のようなものもあり、
それは明らかに人間の仕業ではない。
「……嫌な感じだな」
無人の村というだけならまだいい。
だが、この村には明らかに、
“何か”が暴れた形跡があった。
そして——
「教会か」
村の中心に、一つの大きな建物が見えた。
入り口には、まだ朽ち果てていない扉が残り、
他の家よりも頑丈に作られているようだった。
「今夜は、ここで寝るか」
他の建物はどれもボロボロで、
夜風を凌げる場所がなかった。
教会なら、まだ屋根も残っているし、
中も広そうだ。
扉を押し開けると、
予想以上に内部は綺麗だった。
「……ここだけ妙に手入れされてる?」
埃は積もっているものの、
外の荒廃した様子とは違い、
祭壇やベンチはほぼ原形を留めていた。
だが——
「ん?」
中央の祭壇の前に、
異様な物が置かれていた。
「……棺?」
教会の中心に、不自然に置かれたそれは、
まるで何かを封じるように
縄で厳重に縛られ、
札が貼られていた。
「……封印、か?」
周囲には、
まるでこの棺を囲うように、
儀式の跡のようなものが残っている。
「こんな場所に……何が入ってるんだ?」
ゆっくりと近づく。
蓋に手をかけ、
そっと押し開けた——
「……人?」
棺の中には、鎧をまとった男が眠っていた。
青白い顔。
静かに閉じられた瞳。
まるで、生きているかのような姿で。
「……死んでるのか?」
恐る恐る、肩に触れてみる。
——その瞬間。
「……ッ!」
男のまぶたが、
音もなく開かれた。
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森の奥の廃村で見つけた封印された棺。
その中には、一体の鎧をまとった男が眠っていた——
次回、封印が解かれ、男が目を覚ます…




