第二十八話 獣のような生活
森を抜けるため、アレンは旅を始める。
だが、何日経っても森の終わりは見えない。
その生活は、もはや人間とは言えないものになっていた——
「……まだ、森か」
大きな木の根元に腰を下ろし、
ため息をつく。
出発してから、もう何日経っただろう。
進んでいるはずなのに、
森の風景はほとんど変わらない。
「さすがに、ちょっと長すぎるな……」
ここまで広大な森だとは思わなかった。
適当に歩いていれば、
そのうち抜けるだろうと考えていたが、
どうやら甘かったらしい。
だが、不思議と焦りはなかった。
「体力的には、まったく問題ないな」
以前なら、長時間歩くだけで足が棒のようになり、
空腹や疲労で動けなくなっていただろう。
だが、今の俺は違う。
多少歩き続けても、息が上がることもないし、
疲労感すらほとんどない。
適当にその辺の獣を狩って食えば、
一瞬で体力は回復する。
——というか、最近はもはや
狩ることすら雑になってきた。
「……俺、完全に獣じゃないか?」
狩りをするにも、
罠を仕掛けることすらせず、
適当に槍を投げて仕留めるだけ。
食事も、火を起こすのが面倒になり、
肉をそのままかじることが増えた。
寝るときも、わざわざシェルターを作らず、
その辺の地面に寝転がって眠る。
「……ダメだな、これは」
森に適応しすぎて、
もはや文明的な暮らしとはかけ離れている。
「まぁ、誰かに見られるわけでもないし……」
苦笑しながら、
倒したばかりの獣の肉をかじる。
「うん、やっぱり焼いたほうがうまいな……」
そんなことを考えながらも、
結局そのまま食べてしまうあたり、
もう俺は人間として戻れないのかもしれない。
それでも、前へ進むしかない。
俺は再び槍を担ぎ、
歩き出した。
「……早く、森を抜けないとな」
そう呟きながら、
木々の間を進んでいく。
この森の向こうには、
一体何が待っているのか——
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完全に獣のような生活を送るアレン。
果たして、彼は人間らしさを取り戻せるのか!?
次回、ついに森の終わりが見えてくる!?




