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第二十七話 ふとよぎる思い

ボスゴリラを倒し、さらなる力を得たアレン。

だが、拠点へ戻る道すがら、

ある考えが頭をよぎる——


「……さすがに、もうこの辺りには俺より強い奴はいないだろうな」


ボスゴリラを倒した後、

周囲の空気が変わったような気がする。


森の奥から漂っていた

あの圧倒的な威圧感は、もう感じられない。


「……まぁ、それだけ強いやつを喰らったってことか」


槍を肩に担ぎながら、ゆっくりと歩く。

拠点まではもうすぐだ。


この森での生活にも慣れた。

最初の頃は何もかもが恐ろしく、

必死に生きるだけで精一杯だった。


だが今は、食料も武器もある。

多少のモンスターなら、戦うことすら億劫に思うほどだ。


そんなことを考えているうちに、

俺は自分の拠点にたどり着いた。


「……ふぅ」


焚き火の跡を見つめながら、腰を下ろす。


ふと、手を開いたり閉じたりしてみる。


「本当に……強くなったな」


かつて握ることすら難しかった血抜き槍も、

今では片手で軽々と扱える。


この力があれば、

この世界で生き延びることも簡単だろう。


だが——


「……俺、転生したんだよな」


突然、その事実が頭をよぎった。


これまで必死に生きることに集中していたから、

深く考えることもなかった。


だが、今になって、ようやく冷静に考えられる。


「……元の世界には、もう戻れないのか」


日本での記憶は、はっきりしている。


普通の生活。

普通の仕事。

普通の人間関係。


「……そういえば、俺、どうやってここに来たんだ?」


目を覚ましたら、この世界だった。

何か特別な出来事があったわけでもない。


気がつけば、

この未知の森で、裸同然で生き抜く羽目になっていた。


「……もし戻れる方法があるなら、帰りたいか?」


自分に問いかける。


「……」


だが、すぐには答えが出なかった。


元の世界には、家族も友人もいる。

帰るべき場所もあった。


だが——


「今さら、あの世界に戻って、何をする?」


思い返せば、

元の世界での俺は特に夢もなかった。


ただ仕事をして、

なんとなく日々を過ごしていただけだ。


でも、この世界では違う。


生きることに意味がある。

力をつけ、狩りをし、

喰らうことで強くなる。


それが、俺の生きる証になっている。


「……元の世界には戻れなくてもいいのかもしれないな」


ふっと、そう思った。


「それに——」


俺は槍を手に取り、

夜空を見上げる。


「まだ、知らないことが多すぎる」


この森の外には、

どんな世界が広がっているのか。


俺より強い存在がいるのか。


「確かめないと、気が済まないな」


そう考えたら、

自然と笑みがこぼれた。


俺はまだまだ、

強くなれるはずだ。


そして——


この世界を知るには、

この森を出なければならない。


「……そろそろ、移動の準備をするか」


俺は立ち上がり、

再び槍を握りしめた。


次の目的地は決まった。


今の俺には、

この森は狭すぎる。


---

初めて自分の状況について考えたアレン。

だが、彼は迷うことなく前へ進む決意をする。

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