第二十三話 さらなる強化の道
拠点に戻り、静かに夜が更けていく。
体を癒しながら、次なる戦いに備えるアレン。
だが、課題は山積みだった。
拠点に戻った俺は、焚き火のそばに腰を下ろした。
燃える薪の音が、かすかに耳に届く。
「……なんとか、生き延びたな」
三匹同時の戦闘は、さすがにきつかった。
今までなら、確実に死んでいたかもしれない。
だが、今回は違う。
俺は強くなっている。
獣人の肉を喰らい、身体は回復し、傷口もふさがっていく。
しかし、それだけだった。
すでに知っていることだが、一度食べた獣人の肉をいくら食べても、もう身体能力の向上はない。
回復にはなるが、これ以上の進化は望めない。
「……もっと、強くならないといけないのに」
どうやれば、さらなる力を得られる?
より強い獲物を狩るしかないのか?
それとも、戦い方を変えるべきなのか?
答えが出ないまま、俺は目を閉じた。
このままの戦い方では、次に複数と戦ったとき、同じ苦戦を強いられる。
ならば、戦い方そのものを変えるしかない。
「……槍を増やすか」
いつも装備している血抜き槍は、二本。
だが、拠点にある素材を使えば、さらに四本は作れる。
「血抜き槍を六本……か」
単純に槍の数を増やすだけでは意味がない。
これをどう活かすかが問題だ。
ふと、思い出す。
血抜き槍の本来の目的は、出血死を狙うこと。
槍を刺しこんだまま放置することで、血の抜けるスピードを上げる。
ならば、槍の数が増えれば、同時に複数の敵を弱らせることができる。
「……それなら、いけるかもしれない」
血抜き槍を突き刺したまま放置し、その間に別の槍を使って戦う。
敵が絶命したと確認したら、槍を回収する。
六本の槍があれば、戦闘中に槍が足りなくなることはない。
いちいち回収する時間も節約できる。
俺はすぐに槍の制作に取り掛かった。
獣人の骨を削り、牙を加工し、血抜き用の溝を彫る。
元々、血の抜けやすい形状の牙だ。
適度に細くし、突き刺しやすいように調整する。
作業に没頭するうちに、時間が過ぎていく。
夜明け前には、血抜き槍が四本完成した。
これで合計六本。
槍の感触を確かめる。
手に馴染み、軽すぎず、重すぎず、しっかりとした安定感がある。
「よし……」
俺は六本の槍を背中に括りつけ、手に一本持って構える。
今までとは違う戦い方。
槍をより効果的に使うことで、さらなる強さを手に入れる。
次の戦いで試すしかない。
俺は槍を握りしめ、森の奥へと目を向けた。
夜が明ける。
次の狩りが始まる。
アレンは新たな戦術を考え、血抜き槍を増やすことを決意した。
刺した槍を放置し、より効果的に出血死を狙う戦法へと移行する。
次回、新たな武器を手にし、獣人の巣へと向かう!