表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/100

第二十二話 追い詰められた夜

夜の闇に紛れ、俺は今日も獣人狩りを始める。

一匹ずつ、確実に仕留める。

だが、今回の狩りは思わぬ方向へ転がることになった。

夜風が静かに吹き抜ける。

獣人たちの巣では焚き火がゆらめき、影を作り出していた。

昨日減らした数は四匹。

それでも、まだ巣には十分すぎるほどの獣人がいる。


巣の外れ、木陰に隠れながら、俺は視線を巡らせた。

今日の狙いは、見張りの個体。

寝ている奴らを減らすのもいいが、まずは動ける奴らから削ぐべきだ。


俺はゆっくりと動き出した。

枯葉を踏まぬよう、慎重に足を運ぶ。


獣人の巣の端、一匹の個体が夜空を見上げながら立っている。

槍を構え、さらに静かに距離を詰める。


槍の先を喉元に突き立てた。

獣人が短く唸り声を上げる。

血が勢いよく溝を伝い、槍の先端から滴り落ちる。


そのまま、俺はゆっくりと槍を引き抜いた。

獣人はもがく間もなく、崩れ落ちる。

すぐに死体を引きずり、影の中へ隠した。


まず、一匹。


息を整えながら、再び巣の外周を巡る。

焚き火の明かりが届かない場所に、一匹の獣人が座っている。

背中を見せている。


俺は静かに近づき、狙いを定めた。

槍を低く構え、一気に突き出す。


しかし——


「グルル……?」


獣人が僅かに動いた。

直撃はしたものの、致命傷にはならなかった。


「まずい」


獣人の目が鋭く光る。

喉を搔きむしりながら、低い唸り声を上げる。

仲間を呼ぼうとしている。


俺は咄嗟にもう一度槍を突き出す。


が、遅かった。


巣の奥から、二匹の獣人が走り出てくる。

そして、目の前の獣人も立ち上がり、俺を睨みつけてきた。


三匹同時。


「……やるしかないか」


逃げるという選択肢もあるが、今逃げても追われるだけだ。

ならば、ここで全員仕留める。


俺は槍を構えた。


一匹目が先陣を切って突っ込んでくる。

その巨体をかわしながら、槍を横薙ぎに振る。


槍が脇腹に刺さるが、勢いが殺しきれず、獣人の爪が俺の腕を掠めた。

服が裂け、鈍い痛みが走る。


だが、動きを止めるわけにはいかない。


二匹目がすぐ後ろから迫っていた。


俺は槍を引き抜き、すぐさま振り向きざまに突き出す。


「グアッ!」


獣人の腹に深々と槍が突き刺さる。

溝を通じて血が溢れ、獣人の膝が崩れた。


だが、まだ死んではいない。


三匹目が低い姿勢で俺の足元に飛び込んできた。


「しまっ——」


ドンッ


俺の体が吹き飛ぶ。


背中を強く打ちつけ、視界が揺れた。

すぐに起き上がろうとするが、獣人たちは容赦なく迫ってくる。


「チッ……」


槍を手に立ち上がる。


一匹目は脇腹から血を流しながらも、まだ動けるようだった。

二匹目は槍を引き抜いたが、すでに瀕死。

三匹目は、まったくの無傷。


「……さて、どうする」


瞬時に状況を整理し、判断を下す。

まずは、今動きの鈍い二匹目を確実に仕留める。


俺はすばやく距離を詰め、槍を突き立てた。

一突き、二突き——三突き目でようやく倒れる。


残り二匹。


俺は呼吸を整えながら、じりじりと距離を取った。


残った二匹の獣人も、警戒しながら俺を睨みつけている。


「くるぞ……!」


二匹が同時に飛びかかってきた。


俺は地面を蹴り、横に跳ぶ。


一匹目の攻撃を避け、反撃の槍を突き出す。

槍は腹部に刺さるが、貫通はしなかった。


獣人が苦しげに身をよじる。


しかし、もう一匹が俺の背後に迫っている。


「……!」


ぎりぎりで体をひねり、槍の柄で獣人の顎を打ち上げる。

バランスを崩したところを、一気に喉元を突いた。


最後の獣人が、短い唸りを上げて崩れ落ちた。


「……終わったか」


荒い息を吐きながら、槍を引き抜く。


が、体のあちこちに痛みが走る。


腕に引っかき傷、腹に浅い切り傷。

今は動けるが、長引けば危険だ。


俺は一旦、巣を離れ、拠点に引き返すことにした。


「……今日はやりすぎたな」


夜の闇に紛れながら、俺は静かに森へ戻った。

一匹ずつ確実に仕留めていたはずが、ついに獣人に気づかれてしまった。

三匹を同時に相手にするという苦戦を強いられることに。

なんとか生き延びたアレンだが、傷は深い。

次回、傷を癒やし、再び獣人の巣へと向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ