第二十話 混ざり合う力
俺は夜の闇の中、焚き火の前で静かに時を待っていた。
新たに作り上げた血抜き槍を握りしめ、
獣人のリーダーを狩るために心を研ぎ澄ませる。
しかし、ふと考えた。
これまでの戦いで、俺はモンスターを喰らうことで強くなってきた。
だが、単に同じ力を得ているわけではない。
それぞれの能力が、俺自身の何かと混ざり合い、
別の何かへと変わっているように感じる——
「……俺は、一体何になろうとしているんだ?」
焚き火の炎を見つめながら、俺は考え込んでいた。
これまで、俺は獲物を喰らうたびに身体が強化されてきた。
最初はうさぎのような小動物、次に鳥型モンスター、
そして猪、獣人と食い続けることで俺の力は確実に上がっている。
だが、振り返ってみれば、それぞれの特徴を
完全にコピーしているわけではなかった。
「もしそうなら、俺はもう獣人と変わらないはずだろう?」
だが、俺の身体は獣人のように毛が生えることはないし、
獣のような嗅覚や牙も生えてきてはいない。
俺が得ているのは、単なるコピー能力じゃない。
それぞれのモンスターの特徴が、
俺の元々持っている何かと融合し、
少し違った形になっている。
「……じゃあ、俺の元の能力ってなんだ?」
俺は、元の世界ではごく普通の人間だった。
特に優れた才能があったわけでもない。
身体能力だって、平均的なレベルだったはずだ。
なのに、今の俺はどうだ?
モンスターを喰らえば喰らうほど、
戦闘のセンスが研ぎ澄まされ、
肉体は限界を超えて進化していく。
これは、何かの能力なのか?
「もし、獣人が俺と同じ能力を持っていたら…
俺の襲撃にもっと早く気づいていたはずだ」
そうだ。
俺が今、こうして獣人の巣に近づいても、
やつらは俺の気配に気づいていない。
つまり、少なくとも獣人は俺と同じ力を持っていない。
それどころか、単なる個体差ではなく、
明らかに俺の能力は、モンスターとは異なる性質を持っている。
「……俺は、ただの人間じゃないのか?」
今まで、俺は異世界に転生しただけの普通の人間だと思っていた。
しかし、この世界で喰らい続けるうちに、
俺は異質な存在になりつつあるのかもしれない。
それが何を意味するのかは、まだわからない。
けれど、今は——
「……まずは、あのリーダー獣人を仕留める」
俺は槍を握りしめ、
静かに夜の闇へと身を溶かした。
アレンは自身の力に違和感を覚え始める。
喰らうことで力を得るが、それは単なるコピーではない。
元々の自分の何かが、獲物の能力と混ざり合い、異なる形で発現している。
自分は一体何なのか——
それを知るために、アレンは獣人のリーダーとの戦いに挑む。
次回、決戦の刻!




