第十六話 獣人の肉の効果
獣人の肉を喰らったことで、俺の身体は新たな変化を迎えた。
これまでの単純な筋力向上とは違い、五感が研ぎ澄まされ、
より獣に近い感覚を手に入れた。
この力がどれほどのものなのか、確かめる必要がある。
「……まずは、どれだけの変化があったのか試すか」
俺は軽く屈伸し、地面を蹴ってみる。
筋肉の強化はもちろんだが、それ以上に驚いたのは動きの感覚だった。
まるで身体が軽くなったような錯覚を覚える。
「跳んでみるか」
強く地面を蹴ると、想像以上に高く跳ね上がった。
森の低木を軽々と飛び越え、着地したときの衝撃もほぼない。
「……すげぇ」
単純な脚力の強化じゃない。
着地の瞬間、地面のわずかな凹凸を敏感に感じ取り、
無意識にバランスを取っている。
「これが、獣人の能力か…」
次に、聴覚と嗅覚を試す。
「…………」
集中すると、森の奥のわずかな葉擦れの音が聞こえてきた。
普段なら聞き逃してしまうような、小動物の動きさえ感じ取れる。
「……気配がわかる」
さらに鼻を利かせると、
獣の匂い、人の匂い、森の湿った土の香りが明確に分かる。
目を閉じていても、どこに何がいるのか、
おぼろげながら掴めるほどだった。
「これは…やばいな」
ここまで感覚が鋭くなれば、
戦闘だけでなく、狩りや索敵にも活かせる。
「試しに、何か獲物を探してみるか」
俺は鼻を利かせながら、森の中を歩き出した。
すると、わずかに血の匂いがする。
「……これは」
慎重に近づくと、地面に小さな血痕が点々と続いていた。
おそらく何かの動物が負傷して、逃げたのだろう。
俺は気配を殺しながら、その痕跡を辿った。
すると、数メートル先の茂みの中に、
傷を負った鹿のような生き物が横たわっていた。
「……今までなら、まず見つけられなかったな」
獣人の肉を喰らったことで、俺は間違いなく進化している。
これなら、より強い獲物にも挑めるかもしれない。
「よし…次の目標を決めるか」
俺は改めて、槍を手に取った。
この能力を試すために、もっと強い獲物を狩る必要がある。
だが、その前に——
「まずは拠点に戻るか」
俺は森を抜け、自分の作った簡易シェルターへと向かった。
獣人の肉を喰らったことで、アレンの身体はさらなる進化を遂げた。
感覚の向上により、狩りや戦闘の戦略も変化していく。
次回、新たな獲物を狩るための準備が始まる——!




