第十四話 獣人との戦い
新たな血抜き槍を手に入れた俺は、
ついに獣人との戦いに挑むことを決意した。
だが、正面から戦うつもりはない。
俺が目指すのは、効率的な戦闘――
つまり、奇襲だ。
「……いた」
森の奥、静寂の中に溶け込むように、獣人の影が見えた。
背丈は俺と同じか、それ以上。
全身を毛皮で覆われ、鋭い爪が光る。
初日に遭遇したときの恐怖は、もうない。
今はただ、どうやって仕留めるかを冷静に考えている。
「……正面から戦うのは、ただのバカだ」
相手は獣。
動きが素早く、力も強い。
人間と違って、痛みに対する耐性も高いだろう。
だからこそ、真正面からぶつかるつもりはない。
狙うのは、一撃で動きを封じること。
獣の最大の武器は、圧倒的な瞬発力だ。
それを奪えば、あとは時間の問題になる。
俺はゆっくりと息を整え、慎重に足を運んだ。
目標の周囲をぐるりと回り込み、背後を取る。
「まずは、動きを止める…」
槍を握りしめる手に力を込めた。
風の音に紛れるように、さらに距離を詰める。
あと数歩…
突然、獣人がピクリと耳を動かした。
「…気付かれたか?」
だが、こちらを見てはいない。
まだバレていない…今がチャンスだ
俺は一気に踏み込み、槍を突き出した
グサッ
鈍い音が響く
獣人の脇腹に、俺の槍が深々と突き刺さっていた
「…よし!」
だが、ここで槍を抜くのは愚策だ。
血抜き槍の本領は、刺したままにすることで発揮される。
槍の溝から、獣人の血が勢いよく噴き出し続ける。
まるでポンプのように、どくどくと血が溢れ出していた。
獣人は咆哮を上げるが、急激な失血で足元がふらつく。
それでも、まだ動ける。
俺はすぐさま、もう一本の槍を構えた。
「もう一本…!」
狙うは膝裏。
ここを刺せば、脚の自由を奪える。
獣人が苦し紛れに振り向く。
だが、俺はすでに槍を突き出していた。
ズブリッ!
牙の槍が、獣人の膝裏に突き刺さる。
「ぐ、があああ!!」
悲鳴を上げる獣人。
そして、崩れるように膝をついた。
血抜き槍が、確実に効果を発揮している。
膝裏の傷からも、血が止めどなく流れ出していた。
「よし…あと少し」
だが、獣人はまだ死んでいない。
爪を振り回し、抵抗しようとする。
俺は慎重に距離を取りながら、様子を見る。
「血が抜けきるまで、あと少しのはずだ…」
獣人の息遣いが荒くなっている。
もう、長くは持たない。
そして数分後、ついに獣人はがくりと崩れ落ちた。
「……終わった」
俺は槍を引き抜き、血で汚れた獣人の死体を見下ろした。
獣人を倒した。
初日に逃げるしかなかった相手を。
「……強くなったな、俺も」
だが、まだ終わりじゃない。
この肉を喰えば、さらに強くなれる。
そう確信しながら、俺は獣人の死体に手をかけた。
ついに獣人との戦いに勝利したアレン。
血抜き槍の効果を存分に発揮し、圧倒的な出血量で獣人を仕留めた。
次回、ついに獣人の肉を喰らう…!