第十三話 牙の槍
猪型モンスターを倒し、素材を手に入れた俺は、
次なる目標、獣人との戦いに向けて準備を始めた。
戦うには、今よりも優れた武器が必要だ。
そこで俺が目をつけたのは、猪の牙だった。
「……使える」
俺は手の中に収めた猪の牙をじっくりと観察した。
長さは約30センチほど。
太さは拳よりも少し細い程度。
何より、この牙には無数の溝が刻まれていた。
「まるで、血抜き槍のためにあるような形状だな……」
これまで使っていた竹のような木で作った槍も悪くなかった。
だが、強度の面でどうしても不安が残る。
刺した瞬間に折れてしまえば、それで終わりだ。
だが、この牙なら――
「獣人の肉に突き刺しても、簡単には折れない」
獣の牙というのは、そもそも捕食するための道具だ。
硬度は木よりも遥かに上で、鋭さもある。
それを槍の先端として利用できれば、より強力な武器になる。
「問題は、どうやって槍に固定するか……」
俺は猪の牙を手に持ち、今ある槍の柄と見比べる。
木の柄に直接牙を差し込むだけでは、衝撃で外れるかもしれない。
「……縛るか」
手元には猪の皮がある。
これを細く裂いて、紐のようにすれば、固定に使えそうだ。
牙を柄に押し当て、皮で強く巻き付ける。
さらに、樹脂を利用して補強すれば……
「よし、悪くない」
俺は槍を持ち上げ、軽く振ってみた。
今までよりも、ずっしりとした手応えがある。
だが、竹槍よりもコンパクトで、扱いやすい。
「試しに……」
俺は、倒した猪の死体に向かって槍を突き立てた。
グサッ!
「……いける!」
牙の鋭さは抜群だ。
皮膚を貫通し、深く刺さる。
しかも、無数の溝のおかげで、血がスムーズに流れ出していく。
「完璧だ」
俺は新たな血抜き槍を握りしめ、満足げに頷いた。
この槍なら、獣人にも通用するかもしれない。
「よし……準備は整った」
新たな武器を手にした今、俺にはもう迷いはない。
次の戦いは、今までとは違う。
これは――俺がこの森で生き抜くための試金石だ。
「次は……獣人だ」
俺は血抜き槍を背負い、静かに森の奥へと足を踏み入れた。
猪の牙を利用し、さらに強力な血抜き槍を完成させたアレン。
次なる目標は、獣人の討伐。
果たして、この武器は通用するのか――
次回、ついに決戦へ!